WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

フランソワ・ラバト

2006年10月20日 | 今日の一枚(E-F)

●今日の一枚 71●

Francois Rabbath     

In A Sentimental Mood

Scan10003_3  「ヨーロッパ・ベース界のカリスマ、フランソワ・ラバトがひたすらスタンダード・メロディーを愛しんだ名盤」だそうである。帯の宣伝文句だ。こういう言い方はやめてもらいたい。何度も「再版」されたものならいざしらず、「初版」なのである。名盤かどうかは、長い年月をかけて世間が評価するものだ。発表されるや否や、自分で「名盤」というとはどうしたことだろう。近年、こういうあまりに度を超えた宣伝文句が目立つ。節度がなさすぎる。恥を知れといいたい。こういうことをやっていると、一時はCDが売れても、ジャズ界は衰退していくだろう。

 さて、内容である。全編コントラバスとピアノのデュオだが、ピアノはバッキングに徹している。「名盤」かどうかはわからないが、なかなかいい作品だと思う。重厚なサウンドだが、決して権威主義的なものではなく、しなやかな歌心にあふれている。思わず一緒に鼻歌を歌いたくなってしまうほどだ。録音もいいのか、アコースティックな雰囲気が際立っている。一曲一曲が短いのもいい。アドリブによる自己主張を極力排し、歌の心を響きによって表現しようという意図が読み取れる。

 ただ、実質的にコントラバスのソロのような演奏を延々と聴き続けるのは正直いってつらい。いくらよい曲、よいサウンド、よい演奏であっても、同じような傾向の演奏が53分41秒も続くのではさすがに辟易だ。

 ある程度のレベルのオーディオ・セットをもっている人には特に重宝な一枚である。