WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

モンクの鼻歌

2007年05月06日 | 今日の一枚(S-T)

●今日の一枚 162●

Thelonious Monk

Solo Monk

Watercolors_13  GWも今日でおしまいなのですね、といっても、私は昨日だけがオフであとは仕事、今日もこれから仕事です。それでも、普段よりはずっと時間的にも精神的にも余裕があったわけで、それなりにリラックスはしたわけです。

 リラックスということで、1964-65年録音のセロニアス・モンク『ソロ・モンク』。モンク晩年の作品で、最後のソロ・アルバムらしい。とてもリラックスした、親しみ易く、聴きやすい一枚である。平均律の呪縛から脱出しようとした孤高のピアニストなどという難しいことを想起する必要はまったくなし。「ズンチャ、ズンチャ」というラグタイム風の左手のスライド奏法にあわせて、右手からは素朴でほほえましく、どかこか懐かしいメロディーが聴こえてくる。これはモンクの鼻歌だ。我々はその鼻歌にあわせて、これまた鼻歌をハミングすればよし。

 しかし、考えてみれば平均律の呪縛からの脱出などといったって多くのファンには大きな問題ではなく、モンクの音楽の背後にはいつも鼻歌が流れていたのではなかろうか。それが一見小難しい音楽に見えながら、多くの人がモンクに魅せられる理由なのではなかったか。むしろそのオリジナルな鼻歌に「平均律からの脱出」が必要だったからモンクはそれをやろうとしたのだろう。私がモンクを聴いていていつも共感するのは、演奏の背後に通低音のように流れる鼻歌の部分なのだ。