昨夜、しばらくぶりにLIVEに行ってきた。渋谷毅 (p)& 平田王子(g,vo) のデュオだ。たった2000円の入場料だったのだが、しばらくぶりに本格的なボサノヴァの生演奏を聴いた気がした。演奏曲は、平田のオリジナル(これが結構良かった)から「コルコヴァード」「波」「おいしい水」「イパネマの娘」などの有名曲にまで及び、平田が客のリクエストに答える一幕もあった。
それにしても、渋谷毅は特異な存在感を放っていた。ジーンズによれよれのシャツとジャンパーを着た渋谷は、地元のさえないおじさんと区別するのが困難な風貌だった。実際、開演前に狭い会場の客席をうろうろしていた渋谷は、よく注意しなければおよそ音楽家であるとは誰も気づかなかっただろう。しかも、開演直前にマスターから日本酒(コップ酒だ)をもらって、それを飲みながら寡黙にピアノに向い、一曲終わるたびに、ピアノの上にぐちゃぐちゃに散乱した楽譜から次の曲目を探す姿は、何というか、デカダンスの香りのする独特の何ものかを感じないわけにはいかにかった。
しかし、そんな渋谷の指先が奏でるピアノからは、流麗で端正な音色が響くのだから不思議なものである。平田が演奏しはじめても、渋谷はピアノの前に立ったままで、髪の毛をかきあげながらじっと楽譜を見つめている。これから展開する構想を考えているのだろうか。そのうち彼はおもむろに椅子に座り、平田の演奏に合わせていくのだが、これが抜群なのだ。端正で美しいオブリガードだ。ボサノヴァのピアノはかくあるべしみたいな演奏だった。目をつぶって聴いていると、もしかしたらスタン・ゲッツのサックスがアドリブを吹くのではないかと錯覚するほどだった。
平田王子というミュージシャンは今まで知らなかったのだが、有名な人なのだろうか。「王子」はキミコと読むらしい。中々いい演奏をする人である。もう一度聴いてみたいと思わせる人だった。
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