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(声明)日本航空の「整理解雇決定」に強く抗議する

2010-11-16 21:40:52 | 鉄道・公共交通/交通政策
 会社更生手続き中の日本航空と管財人・企業再生支援機構は、11月15日、各労働組合の強い反対を押し切り、整理解雇の実施を決定した。安全問題研究会は、空の安全と労働者の生活を破壊するこの暴挙に強く抗議する。

 250人に上る整理対象者には、10月から白紙のフライトスケジュールと退職に向けた面談の通知書が渡されるなどの嫌がらせが始まっている。「会社から自分の机がなくなった」という訴えも相次いでいる。客室乗務員に対しては、高年齢者を中心に「残っても仕事はない」「整理解雇になったら、高齢のあなたは一番」などと、年齢を理由とした露骨な人権侵害まで行われている。

 日本航空の中でも戦闘的な労働組合のひとつである「日本航空キャビンクルーユニオン」は、わずか856人の小さな組織だが、50歳以上の組合員140人が退職強要を受けている。一方、多数派の「御用組合」では、50歳以上の多くが管理職になり、整理対象者がほとんど選定されないなど、明らかな組合差別も見られる。労働者への「乗務外し」や退職強要、闘う労働組合への差別がまかり通る日本航空の現状は、21世紀の国鉄清算事業団であり、人活センターそのものである。

 会社・管財人からは、全員解雇、選別採用方式の実施を求める声もある。23年前、「国鉄改革法23条」の下、はじめてこの方式が強行された国鉄では、大量の労働者が自殺に追い込まれた。JR6社のすべてで列車運行に当たる現場要員が3割以上削減された結果、信楽事故、尼崎事故、羽越線事故が引き起こされた。当局が強行した組合差別は、18年の時を経て不当労働行為として断罪された。日本航空経営陣・管財人が整理解雇を強行するなら、その罪は事故による悲劇とともに、いずれ断罪されるだろう。

 日本航空破たんの原因が労働者ではなく、会社を食い物にした航空行政と自民党政権、経営陣にあることを、改めて強調しておかなければならない。1991年、日本航空は和歌山市内の社宅用地を想定の3倍もの価格で購入させられたが、この土地の所有者は二階俊博元運輸相(自民党)の後援会幹部と報道された。日本航空経営陣は、一部の旅行社に対し、採算を度外視した常識外れの運賃キックバックを実施した。政・官・財を巻き込んだこのような救いがたい腐敗こそが、日本航空を破たんに追い込んだのである。

 今回の整理解雇決定に先立つ10月26日、最高裁は、管制ミスに伴う業務上過失致傷罪によって下級審で有罪とされた航空管制官の上告を棄却する決定を行ったが、国土交通省の安全軽視は管制官の現場に最も象徴的に現れている。国内の年間の管制取扱い件数は、1999年の396万機から2009年は491万機となり、10年間で24%増加したのに対し、管制官の数は1763人から1996人と13%増えたに過ぎない。「個々の管制の内容を別の管制官が100%チェックするのは現状では困難」とみずから認める状況にありながら、管制官の十分な増員を行わず、過重労働を放置してきた国土交通省の怠慢と不作為が日本の空の危険を高める結果につながった。航空業界の拡大のみに偏り、必要な人員確保を怠ってきた航空行政を直ちに転換する必要がある。

 退職強要を受けているある労働者は、1985年のジャンボ機墜落事故後、現場の御巣鷹山に登り、墓標に手を合わせる遺族の背を見て安全を誓ったという。このような安全意識の高い社員を大量に退職に追い込めば空の安全は崩壊する。求められているのは大量首切りではなく、増大する航空機に見合った航空労働者の増員である。

 利用者・国民に、当研究会は今こそ訴える。羽田空港新ターミナルの華やかな拡張の陰で何が起きているか見てほしい。日本航空破たんの原因を作った者たちが、何食わぬ顔で、何の責任もない労働者を差別・首切りしている。それは、自分の選挙区に鉄道を引くよう要求することによって破たんの原因を作り出した者たちが、何食わぬ顔で国鉄を解体し、労働者を首切りと差別の果てに死に追いやった悲劇と全く同じものである!

 当研究会は、日本航空を食い物にした関係者の責任を引き続き追及するとともに、航空労働者の首切り・差別に怒りを込めて抗議する。また、職種を超えて過重労働にあえぐ現場のためにも、航空労働者の増員を求めて行動する決意である。

 2010年11月16日
 安全問題研究会

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