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東電旧経営陣の強制起訴をめぐるNHKの報道について

2016-02-26 21:38:25 | 原発問題/一般
今日正午のNHKニュースで、突然、「東電旧経営陣3人 強制起訴へ」と題する報道が行われた。その報道の仕方が、あまりに誘導的・恣意的で、腹に据えかねたので、関係者のひとりとして、事実関係を明らかにしておきたい。

まず、正午のNHKニュースの報道は、東京第5検察審査会による強制起訴の議決が確定した東電の勝俣恒久元会長ら旧経営陣の起訴が本日にも行われるというもので、内容は以下の通りだった。

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東電旧経営陣3人 強制起訴へ(02月26日 12時01分)



福島第一原子力発電所の事故をめぐって、検察審査会に「起訴すべき」と議決された東京電力の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人について、検察官役の指定弁護士が26日にも業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴する方針を固めたことが、関係者への取材で分かりました。

3人は無罪を主張するとみられ、原発事故を防げなかったことが罪にあたるかどうかが、初めて法廷で争われることになります。

福島第一原子力発電所の事故をめぐって、検察は東京電力の勝俣恒久元会長(75)、武黒一郎元副社長(69)、武藤栄元副社長(65)の3人を不起訴にしましたが、去年7月、検察審査会が「起訴すべき」と議決しました。

これを受けて裁判所から選任された指定弁護士が起訴に向けた手続きを進めていましたが、26日にも勝俣元会長ら3人を業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴する方針を固めたことが関係者への取材で分かりました。

関係者によりますと、指定弁護士は3人が福島第一原発が津波で浸水する可能性について報告を受けていたのに必要な対策をとらず、事故で避難を余儀なくされた福島県大熊町の双葉病院の入院患者などを死傷させたとして、強制的に起訴するものとみられます。

3人は今後の裁判で「巨大な津波は予測できなかった」などと無罪を主張するとみられ、原発事故を防げなかったことが罪にあたるかどうかが初めて法廷で争われることになります。
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結論から言えば、このNHKの報道は完全に「寝耳に水」だった。多くのメディアが3月起訴、初公判は4月以降と見込んでおり、福島原発告訴団事務局の中にも「起訴が近い」との感触はあったものの、2月中に行われるとは予想もしていなかったからである。もちろん、告訴人に対し事実関係を告知する義務は指定弁護士にはないから、告訴団側が起訴の行われる日を事前に聞いていなかったとしても、そのこと自体は不思議ではない。

上記の記事では、強制起訴が26日中にも行われる見込みであることが「関係者への取材」で分かったとしているが、福島原発告訴団事務局の中に、最近NHKの事前取材を受けた人はおらず、仮にいたとしても「26日中」などと答えるはずがない。「関係者」とは福島原発告訴団ではない「誰か」としか考えられない。実際、NHKがニュースで報道した正午以降、告訴団事務局の電話は鳴りっぱなしの状態となったが、告訴団自体が「寝耳に水」でたいした情報提供はできなかった。連絡してきたメディアには、強制起訴となった場合の福島原発告訴団の会見予定を伝える程度だった。

今回の原発事故のように、検察審査会の「起訴相当」議決を受けた強制起訴事件の場合、あくまでも、起訴を行うのは検察官役の指定弁護士である(検察庁は、自分の手で不起訴にしたのだから原則的にはノータッチである)。NHKは、ずいぶん前から強制起訴の日時を探っていたようだが、いつまで経っても判然としないため、ついに「強硬手段」に出たようだ。自分たちが大々的に報道すれば、それが「既成事実」になり、指定弁護士が本当に今日中に起訴手続きを取らざるを得なくなる。結果的に自分たちの報道した通りになる――彼らはそう踏んだのだろう。

当ブログ管理人は、反原発デモが行われてもまともに報道せず、再稼働の報道ばかり大々的に行うNHKの偏向や「安倍さまの犬HK」化に強い不満を抱いていることもあり、今日正午過ぎ、告訴団事務局関係者に連絡。「今日の起訴は避けるようにすべきだ」と進言した。今日中の強制起訴が見送られれば、「26日にも強制起訴」としたNHKの報道は結果的に「誤報」となり、「安倍広報機関」化したNHKのメンツを潰すことができると考えたからである。告訴団事務局関係者からは「私たちが起訴するわけではないからどうしようもできない」との回答が返ってきたが、一方で、今日中の起訴は見送られそうだとの観測も伝わってきた。

そして、指定弁護士から午後4時過ぎ、各メディアに「本日の起訴はなし、週明けに持ち越し」の事実が伝えられると、NHKはこっそりと報道内容を「修正」した。その内容は以下の通りだ。

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東電旧経営陣29日強制起訴へ(02月26日 17時12分)



福島第一原子力発電所の事故をめぐる、東京電力の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人の強制起訴について、検察官役の指定弁護士が記者会見を行い、26日は手続きを取らず、週明けの月曜日、2月29日に業務上過失致死傷の罪で強制起訴することを明らかにしました。

裁判で3人は無罪を主張するとみられ、原発事故を防げなかったことが罪にあたるかどうかが初めて法廷で争われることになります。

福島第一原子力発電所の事故をめぐって検察は東京電力の勝俣恒久元会長(75)、武黒一郎元副社長(69)、武藤栄元副社長(65)の3人を不起訴にしましたが、去年7月、検察審査会が「起訴すべき」と議決しました。

これを受けて裁判所から選任された検察官役の指定弁護士が26日午後、強制起訴について記者会見を行いました。

この中で指定弁護士は26日は手続きを取らず、週明けの月曜日、2月29日に業務上過失致死傷の罪で在宅のまま強制起訴することを明らかにしました。

3人は今後の裁判で「巨大な津波は予測できなかった」などと無罪を主張するとみられ、原発事故を防げなかったことが罪にあたるかどうかが初めて法廷で争われることになります。
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NHKが「本日強制起訴」の報道を行うのになぜ今日の昼を選んだのかについてはあくまで推測の域を出ないが、金曜日の午後であれば「東電強制起訴ショック」による株価への影響を最小限にとどめられるとの思惑が働いたのだろう。上場企業が不祥事を起こしたとき、自社の株価への影響を最小限にとどめるため、記者会見はいつも金曜日の株式市場が閉まる午後3時以降に開くのが通例となっているからだ。どのみち東電の強制起訴が避けられないなら、株価が生命線である安倍政権への打撃を最小限にとどめたいとの「忖度」だったのだろう。

だが、結果的にはNHKの思い通りにはさせなかった。当ブログ読者の皆さまには、NHKがこのような組織――報道機関でも言論機関でもなく、特定の政治的意図をもって社会を「ある方向」に動かすため、時には政権の意を受けた誤報をも平然と垂れ流す組織であるということ、そして、時の政権や巨大企業と闘う市民団体にとって、メディア取材もまた闘いであるということを、知っておいてほしい。メディア取材とはただ単に「自分たちの主張をメディアに載せる」だけではない。最も効果的にメディアを使い、自分たちの望む方向へ社会を向けて行くには、取材を受ける側にもまた戦略的な姿勢・思考が求められるということを、忘れてはならないのである。

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