人生チャレンジ20000km~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
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昨年から続く鉄道トラブル「異常事態」 ついに運輸安全委員会も指摘 JR北海道ローカル線問題と同じ背景?

2018-02-05 23:00:32 | 鉄道・公共交通/安全問題
すでに報道から半月近く経過しているが、当ブログ・安全問題研究会にとってはきわめて重要な内容だと思うので取り上げることにする。なお、リンクはすでに切れており、NHKのニュースには飛べないのでご了承いただきたい。当ブログの知る限りでは、全国ニュースで取り上げたのはNHKだけのようだ。

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運輸安全委 地方鉄道の脱線事故の背景について異例の指摘(NHK)

1月25日 17時47分

去年、和歌山県の紀州鉄道と熊本県の熊本電鉄の列車が相次いで脱線したことを受け、国の運輸安全委員会は調査報告書で、地方鉄道に共通する課題として、事業が小規模なため技術力の維持、向上が困難になっていると、事故の背景について異例の指摘を行いました。

去年1月に和歌山県の紀州鉄道で、2月には熊本県の熊本電鉄で、相次いで列車が脱線し、国の運輸安全委員会は25⽇、それぞれの調査報告書を公表しました。それによりますと、いずれもレールの幅が広がったことが原因と考えられ、枕木の腐食やレールと枕木の固定が不十分だったことなどで広がった可能性があるとしています。

紀州鉄道と熊本電鉄は、いずれも社内規定に基づいて線路の点検を行っていましたが、脱線の危険性などを十分に把握できていなかった可能性があると指摘しています。

これについて、運輸安全委員会は、地方鉄道に共通する課題として、事業が小規模なため技術力の維持、向上が困難になっていると、事故の背景について異例の指摘を行いました。そのうえで、運輸安全委員会は、社員教育の充実や木製の枕木をメンテナンスが簡単なコンクリート製のものに交換することなど、対策の実施を求めました。
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2017年1月に紀州鉄道で起きた脱線事故、2月に熊本電鉄で起きた脱線事故について、去る1月25日に運輸安全委員会から事故調査報告書が公表された。報告書は紀州鉄道熊本電鉄それぞれをご覧いただきたいが、とりわけNHKが注目したのは紀州鉄道の事故報告書だ。PDF版の事故報告書の31ページ(PDFファイルのページでは48ページ中39ページ)に「軌道の整備(保線)体制」として、確かに以下のように記述されている。

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 地方鉄道に共通する課題として、鉄道事業が小規模であるために、組織として軌道整備に関する技術力の維持、向上させることが困難な状況であることが考えられ、同社〔紀州鉄道〕においてはそのような状況が継続していた可能性があると考えられる。

 このため、……(中略)……脱線事故につながる危険性を同社が十分に把握しておらず、安全上問題ないものと判断した可能性があり、それに応じた軌道整備が速やかに行われなかったことが本事故の発生に関与した可能性があると考えられる。

 技術力を維持、向上させる又はその不足を補うためには、保線業務に従事する社員に対し、社内及び社外の研修等の社員教育を実施することや、外部から適任者を増員することが有効であると考えられる。

 また、即効性、確実性を考えると、木まくらぎに比べ耐久性に優れ、容易な保守が可能であるコンクリート製まくらぎに交換(数本に1本程度の割合で置き換える部分交換を含む。)していくこと等ハード対策も検討することが望ましい。
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事故調査報告の中でこのような意見を表明すること自体はもちろん好ましいが、一方で運輸安全委員会には国や自治体の地方私鉄支援に道を開くような政策や財源についての提言も併せて行ってほしかった。地方私鉄にただ体制整備のための自助努力を求めるだけでは、かつて多くの地方私鉄がたどったような「安全が維持できない→廃止」という流れがいっそう強まることになりかねない。何しろ今やJR北海道ですら「石勝線列車火災事故(2011年5月)をきっかけに安全投資が滞り今日の事態を招いた。安全を維持しながら全路線を維持することは困難だ」として維持困難線区の廃線や地元負担に向けた協議を呼びかけているくらいなのだ。

鉄道以外の公共交通にはある程度(全額とまでは行かなくても、航空会社や海運会社がそれなら何とか運行を維持していこうかと思える程度)には安全維持のための補助制度が設けられている。この面でも鉄道だけそうした財源措置が乏しい状況にある。地方中小私鉄に限った話ではない。東急田園都市線の渋谷地下線区間で昨年から相次ぐ電気系統トラブルは、大都市鉄道でも安全投資が事業者任せのまま放置されていることの表れである(同じNHKが昨年12月にも「鉄道トラブルが相次ぐ3つの理由」としてこの問題を取り上げている)。大手私鉄、地方中小私鉄問わず続いている安全トラブルと、ローカル線廃止問題はどちらも「鉄道だけ国や自治体の関与、支援が少なすぎる」という点で根本的に同じなのだ。

当ブログと安全問題研究会は、先日公表した「こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策」リーフレットで示したように、他の公共交通と比べて鉄道にだけ国の支援が手薄であることに根本的な疑問を持っている。鉄道への国の支援がせめて他の公共交通並みになるよう、引き続き求めていきたいと考えている。

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