(この記事は、当研究会代表が
「レイバーネット日本」に投稿した内容をそのまま掲載しています。)
全国の知事選では唯一、与野党が激突する天王山・北海道知事選(4月7日投開票)も残りわずか。今日(4月3日)、大きな動きがあった。廃止の危機に瀕しているJR日高本線を存続させるため、政治的立場の違いを超えて共闘してきた私の「同志」が一大決意をしたのだ。
その「同志」とは、北海道日高管内・新ひだか町の酒井芳秀前町長。生粋の自民党員だ。北海道議会議員を5期20年務めた後、今回引退する高橋はるみ知事が初挑戦した16年前の道知事選にも立候補している。惜しくも落選後は地元の旧静内町で町長となり、静内町とお隣の旧三石町が合併によって新ひだか町になってからもずっと町政を預かってきた。
私との出会いは3年前だ。「ローカル線を廃止しながら、すぐ隣に道民が望んでもいない北海道新幹線を作るのはおかしい」と、安全問題研究会代表として北海道新聞にコメントを寄せた私を紙面で見た酒井町長から「路線存続のためアドバイザーになってほしい」と請われた私は、日高本線存続のため非公認ながら酒井町政のアドバイザーとして、この間、JR日高本線を廃止から守るために活動しながら苦楽をともにしてきた。酒井前町長は私の父と同い年で、ご夫人も私の母と同い年。そんなこともあって、酒井前町長は、実家(九州)から遠く離れた私にとって第2の親のようなものだ。
ところが、日高本線を廃止に追い込みたいJR北海道と道は、酒井町長を路線廃止の最大の障害と見て、昨年の町長選で道庁職員を「刺客」として送り込む。このため落選に追い込まれた酒井前町長。自民党員でありながら、今日の「赤旗」紙面に臆することなく堂々と登場。石川候補への支援を訴えた。
2019年4月3日付け「しんぶん赤旗」
自民党関係者が赤旗に出るのは別に酒井前町長が初めてではない。政権中枢に異を唱えたいとき、引退した議員OBなど自民党関係者が赤旗紙面に出ることは過去にもあった。だが、自民党に政治家人生を捧げてきた人ほど、「赤旗」への登場はみずからの政治的退路を断つまさに一大決意だろう。
私は今度の知事選ではネガティブ・キャンペーンはしないつもりでいた。あれだけモリカケ問題で頑張ったのに安倍政権は結局倒れなかったからだ。もはやネガキャンでは安倍は倒れない。沖縄の若者たちがしたように、支持する候補の人柄を宣伝し押し上げる戦術のほうが有効であることが玉城デニー知事の当選で証明された以上、若者に謙虚に学び、戦法を変えるべきだと考えたからである。前回、石川候補の人柄を宣伝する記事を書いたのも「戦術変更」の一環のつもりだった。
だが、酒井前町長の並々ならぬ決意を見て気が変わった。「同志」であると同時に自分自身にとっての「第2の親」である酒井前町長が重大な決意をするなら、私もしなければならない。そこで、この間、誰にも語らなかった「知られざる真実」をここに書くことにする。選挙で有権者が正しい選択ができるためには、候補者に関する正しい情報が提供されていることが必要だと思い直したからでもある。
ご紹介した「赤旗」の記事。酒井前町長はあえて名前を伏せているが、酒井前町長の口封じのために道庁と一体となって刺客を立てた自民党道議とは、日高選出の藤沢澄雄議員である。日本会議のコアメンバーであり、改憲派の極右だ。過去には「アベ政治を許さない」クリアファイルを使用している学校教員に難癖を付け、道教委を動かして全道の学校で「クリアファイル調査」をさせるという重大な教育の自由への介入もした。その藤沢議員が「誰も乗っていない日高本線は要らない」として廃止運動の先頭に立っている。実際には、代行バスでの移動が難しい地元・新ひだか町の障がい者が「2015年1月の高波災害でもう4年以上不通のままの日高本線を復旧させてほしい」と再三訴えているのに、藤沢議員はまったく聞く耳を持たない。なんとしても放逐せねばならない安全問題研究会にとって不倶戴天の敵だ。
当研究会は今年1月、道議会に対し、藤沢議員の政務活動費に関する情報公開請求を行った。その結果、出てきたのが以下の領収書だ。
「LGBTには生産性がない」発言で「新潮45」が廃刊に追い込まれる原因を作った自民党の差別主義議員・杉田水脈。その札幌での講演会に参加した際の領収書である。日付は2018年3月17日。まだ杉田議員が「例の発言」を行うよりも前である。藤沢議員は、インターネットでも一切、政務活動費の使途を公開していない。まさか日高から札幌くんだりまで来て、道議会で自分の政務活動費の調査をする者などいないと高を括っているのだろう。だからこそこの領収書からは藤沢議員の「本心」が透けて見える。
私はこれを見た瞬間、藤沢議員が車いすの障がい者の訴えに一切耳を傾けず、無視し続けている理由がわかった気がした。障がい者などの「生産性がない者」は生きる価値がない。だから、そんな連中しか利用しない鉄道も無駄であり、要らないーーそれが藤沢議員の本音なのだ。
知事選に立候補している鈴木直道候補は、この藤沢議員の改憲セミナーに参加した。藤沢議員は、当初、吉川貴盛農水相(自民党北海道連会長)が官邸直結で鈴木候補を押しつけてくる動きにあれほど反対し、和泉晶裕・国交省北海道局長を擁立しようとする仕掛け人だったくせに、官邸が力尽くで鈴木候補への一本化を決めるとあっさり「投降」して鈴木候補の応援を始めた。官邸などの強者には媚びへつらい、教員労働者や障がい者などの弱者は居丈高に威圧する。「強い者には弱く、弱い者には強く」の権威主義丸出しで、信念も矜持もなくひらひらと態度を翻す最低最悪の変節漢。その上極右の差別主義者。私がこの世で最も嫌いなタイプの男、それが藤沢澄雄だ。
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<参考記事>知事選告示まであと3日 最後の討論会(HTBニュース)
鈴木氏は週末、日本会議に所属する自民党道議が開いた憲法改正セミナーに参加しました。
藤沢澄雄道議「私たちの手で、今の時代に合った憲法改正に向けて、突き進んでいきたいという気持ちであります」
憲法改正を推進するこのセミナー。鈴木氏も壇上に上がりました(以下略)
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鈴木候補に私は問う。こんな男の支援を受けて恥ずかしくないのか。その答えは、鈴木候補が市長として夕張でやってきたことを見れば明らかだ。日本唯一の財政再建団体に転落した夕張市で「借金返済」を口実に公共サービスはほぼすべて解体。ゴミ処理場も造れず、野ざらしになったゴミにカラスがたかるほど街は荒廃した。行政サービスに頼らなければならない弱者はとっくに街を出て行った。JR北海道から頼まれもしないのに、自分から石勝線夕張支線の「攻めの廃線」を申し出たのは夕張解体の最後の総仕上げだった。弱者が自分から街を捨てざるを得ないように、公共サービスを解体していくーーそれが鈴木市政の「確かな実績」だ。
夕張に今なお残る「強者」たちの間で、鈴木候補はジャニーズ並みの人気だという。イケメンにキャーキャー言ってはしゃいでいる人たちは、本当にそれでいいのか。私の言うことが信じられないなら、もう一度鈴木候補が誰の支援を受けているか見てみるがいい。甘いマスクで今日は笑顔を振りまいていても、みなさんの人間としての「生産性」が少しでも低下したと見れば、明日、みなさんを北海道から追い出すだろう。
もう15年近く前だろうか。国鉄闘争華やかなりしころ、鉄建公団訴訟原告団の集会で、ゲストに招かれた評論家の佐高信さんは私たちにこう警告した。「本当の悪人は悪人面をしていない。真の悪人ほど笑顔を振りまきながらやってくる。畳の上で死ねないのは末端のチンピラで、真の悪人は安らかに畳の上で死ぬ」。投票日まであと4日。道民・有権者は鈴木候補の甘いマスクと笑顔の下に隠された、新自由主義者としてのどす黒い本性をきちんと見なければならない。北海道が焼け野原になる前に。
(文責:黒鉄好)