安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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独裁者のいない朝~安倍首相辞任表明を聞いて

2020-08-29 23:39:55 | その他(国内)
 圧政の長いトンネルを抜けると、そこは曇り空であった。
 長く暗く重い、7年8ヶ月。終わりの見えないトンネルに、突然の終わりが訪れた。

 「どんなに長い夜でも明けない夜はない」

 この7年8ヶ月、ただこの思いだけを胸に、歯を食いしばって耐えてきた。

 7年8ヶ月ぶりに訪れた独裁者のいない朝が、こんなにすがすがしいと思わなかった。空気がおいしい。水がおいしい。茶色の朝が、7年8ヶ月ぶりにカラー映像になって見える。28日夜は連れ合いとお祝いをした。

 1986年、マルコス独裁政権を倒したフィリピン市民の気持ちがわかる気がする。まさか、こんな途上国並みの気持ちを、仮にも10年前まで世界第2の経済大国と言われてきた日本で味わうことになるとは思っていなかった。

 「安倍長期独裁政権がついに倒れた日本では、政権側が出した外出自粛、集会禁止の命令を無視して市民が街頭に繰り出し、独裁から解放された喜びを表現しています」

 こんな風に報道しているメディアが世界のどこかにあるのではないかという気がする。かつて、遠く離れた自分たちと関係のない国で、ドラマのように独裁者が倒れ、追放される歴史的事件を日本のメディアが伝えてきたように。

 「あの嫌な夫婦のいないクリスマスはすばらしい」

 1989年、ルーマニアでチャウシェスク独裁体制が崩壊したとき、街に繰り出したブカレスト市民のひとりがこう言ったのを今も私は忘れない。今、私も全く同じ思いだ。「あの嫌な私物化夫婦のいない8月はすばらしい」と心から叫びたいと思う。確かに安倍首相は病気再発で辞任表明した。だが、黒川検事長の定年延長阻止以降、嵐のように燃え広がった市民の闘いがなければ、安倍首相が病気を再発させることもなかっただろう。その意味で、これは確かに市民による安倍打倒なのだ。そのことが持つ大きな政治的意味は、いくら強調してもしすぎることはない。

 最後の記者会見で、安倍首相は在任中の改憲ができなかった悔しさからか、目にうっすらと涙を浮かべていた。それを見た瞬間、「日本の市民はついに勝ったのだ」という実感がこみ上げてきた。この7年8ヶ月、右翼・改憲勢力の総力を挙げた波状攻撃に次ぐ波状攻撃の嵐を耐え抜き、二度と自分たちの政府に侵略戦争をさせないと誓ったこの宝物を守り抜いたのだ! 本当に日本の市民はよく頑張ったと思う。今はただ、その長きにわたる不屈の意志と闘いを私はたたえたい。

 安倍「信者」たちは、改憲が実現しなかったことがよほど悔しいのか、「病気で辞める人間に鞭打つな」と騒いでいるが、寝言は寝て言えと言いたい。そう言う「信者」たちこそ外国人や障がい者や女性には、情け容赦なく鞭打ち、徹底的にいじめ抜いてきたではないか。彼らのような品性下劣な「信者」が内部から安倍政権を食い倒したのだ。

 日本の市民の多くが、後ろからついてきていると思っていた韓国、台湾がとうの昔に日本を追い抜き、今、日本からはその背中も見えなくなりつつある。コロナ禍を通じて浮かび上がったのはそんな厳しい現実だ。中国も今や日本を大きく上回る経済力を持つに至った。東アジアの中で、後ろを振り向けば、そこにいるのは朝鮮民主主義人民共和国だけーー安倍独裁政権7年8ヶ月が残した確かな「成果」である。

 「私たちが手にしたいのは本当の民主主義です。共産党の“衣”だけを変えても何にもなりません」「汚れのない人たちで指導部を作るには時間が必要です。しかしこういう人たちが真の民主主義を作るのです」。1989年、別のブカレスト市民はこう話している。市民、弱者の話に耳を貸さず、一般党員を投票から閉め出して密室で後継総裁を決めようと策動している「不自由非民主党」の“衣”だけを変えても何にもならない。汚れのない人たちで、今までとは全く違う新しい勢力を作らなければ、また別の長いトンネルが私たちを待つだろう。

 今の日本を見ていると、このまま曇り空が晴れるかどうかははなはだ心許ないと思う。だが私の今の気持ちは晴れ晴れとしている。1~2日くらいは勝利の美酒に酔ってもいいし、疲れているなら休んでもいいと思う。疲れが取れたらまた歩き出そう。7年8ヶ月ぶりに取り戻したこの解放感を、権力者に渡してしまわないように。

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