安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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ローカル線衰退史としての「全線完乗」

2021-09-07 20:31:53 | 鉄道・公共交通/交通政策
(この記事は、当ブログ管理人が長野県大鹿村のリニア建設反対住民団体「大鹿の十年先を変える会」会報「越路」に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 筆者は鉄道全線完全乗車に取り組んでいる。多くの鉄道ファンも取り組んでおり、国鉄時代には「いい旅チャレンジ20000km」という国鉄公認のファン向けキャンペーンが行われたこともあった。筆者はJRが発足した1987年に初めて全線完乗を意識したが、当時はまだ高校生で本格的活動にはならなかった。就職後の1997年11月、鉄道雑誌の付録だった完全乗車地図で乗車済路線を塗りつぶすと半分以上が埋まっていた。「よし、やるか」と決心したのはこのときである。国鉄分割民営化のあおりを受け凍結されていた整備新幹線第1号、高崎~長野間の開業を控え、鉄道ファンには有名な「碓氷峠」を超える信越本線・横川~軽井沢間が廃止されると聞き、出かけたときのことだった。

 本線を名乗る路線が廃止されるのは、特定地方交通線となった名寄本線を除けば初めてだった。鉄道はたとえ1センチでもレールが途切れればネットワークとして機能しなくなる。1区間とはいえレールを途切れさせる前例を作った横川~軽井沢間の廃止は今思い返しても日本鉄道史に残る汚点であり、愚策だったと思っている。

 全線完乗といっても統一的ルールがあるわけではなく、ルールは自分なりに決めればよいが、ポイントレールがある駅ではすべてのポイントレールを通過しなければならないという厳しいルールをみずからに課している人もいる。あまり厳しいルールでは自分の心が折れてしまう一方、8割方のファンから「それなら完乗達成と認めてもいい」と納得感をもって迎えられる程度には厳しいルールである必要がある。最低限、乗車しない区間(中抜け区間)があってはならないことは完乗を標榜する以上当然だろう。筆者が自分に課しているルールは以下のとおりである。

1.JR線のうち、旧国鉄から継承した路線の名称は「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法施行令別表第一」の例によることとし、JR化以降に開通した路線は国土交通省が認可した路線名による。ミニ新幹線区間は在来線とみなして記録し、私鉄の路線名は時刻表掲載の路線名とする。

2.独自の営業キロを持たない新幹線区間(東海道・山陽、上越、東北(盛岡以南))も完乗の対象とする。

3.二重線籍区間を乗車した場合、線籍を共有する関係路線すべてに乗車したものとする。

4.夜行列車で就寝中に通過した場合も乗車に含める。

5.ポイントレール、側線等は考慮しない。

6.貨物線など、通常旅客列車が走行しない区間を走行する列車に乗車した場合は、当該区間がJR旅客会社の第1種免許区間(旅客会社が第一種鉄道事業を行う区間)である場合に限り参考記録として整理する。

7.すでに乗車を終えた区間で、(1)路線延長があった場合は、延長開業初日をもって新たな未乗車区間が発生したため完乗の記録喪失となり、延長区間の全部に乗車した場合に再度完乗達成とする。(2)JR→第三セクター、JR→私鉄のように経営形態が変わった場合、乗り直しはしなくてよいが、「過去○○線時代に乗車済み」のように記録の補正を行う。(3)大規模な線路付け替えが行われた場合は、通常、乗り直ししないが、営業キロが変更となった場合、または建築限界測定車による建築限界の再測定が行われた場合に限り、新たな未乗車区間が発生したものとみなして、該当区間の乗り直しを行う。

 2011年の東日本大震災以降、今日まで10年以上にわたって、JRグループ全線に不通区間がなく、全線で列車が通常運行されたのは1日もない。常にどこかの路線が災害運休中であり、日本の「災害列島化」にますます拍車がかかっている。ここ数年は、被災路線が復旧する前に次の災害で新たな不通路線が生まれてしまう状況で、災害不通と復旧のいたちごっこは今日まで果てしなく続いている。大規模災害が経営基盤の弱いローカル鉄道を襲うケースも増え、災害になったら道路は復旧するのに鉄道はむしろ廃線になるのが当然というムードさえ出てきている。どちらも公共交通なのにこの差は一体何なのだろう。『各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと』とした国鉄改革法成立時の国会における附帯決議が守られなかったことが根底にある。鉄道が民間企業の経営で、鉄道自身を守るという名目で政府が自由に使える予算もないに等しい。鉄道事業法では事業収支見積書を提出し、黒字化の見通しが立たなければ新規路線開設を認めないと定めている。こんなばかげた法律はあり得ないと、この8月、ついに全国23道県知事が鉄道事業法改正を求めて国土交通省に直訴した。鉄道会社が廃止届を出したら1年後に勝手に路線廃止できる法律はおかしいという当たり前すぎる問題提起だ。

 毎年、少しずつ形を変えて襲いかかる大規模災害で、当初、40歳までに達成する予定でいた私の全線完乗計画は、今年50歳になっても達成できなかった。災害不通区間の中に未乗車区間が多く含まれており、存命中に達成できるかも怪しくなっている。その上、自分で自分に課した7の(2)のルール(線路付け替えで営業キロが変更されたら乗り直し)のせいで、東北には乗り直しが必要な区間が多く生まれている。それでも災害原因ならまだ諦めもつくが、群馬県・吾妻線に至っては、税金垂れ流し公共事業の典型として反対し続けてきた八ッ場ダム工事が強行された上、ダムのせいで線路が付け替えられ、営業キロが変わったため乗り直しまで必要になったのだから踏んだり蹴ったりだ。

 国土が細長い日本は本来なら最も鉄道に向いているはずだが、道路偏重の自民党的利権政治が鉄道をダメにしてしまった。グレタ・トゥンベリさんから「炭素を減らせ」といわれているのに、排気ガスを吐きながら走る車を国民1人に1台「配車」し、炭素を吸収する森林を壊してまで、誰も通らない道路を作る工事でまた炭素を出す。炭素も血税も垂れ流しの無駄遣いニッポンに、いつになったら終止符が打てるのだろうか。

 全線完乗に取り組み初めて20年。ゴールはまだはるか彼方にあるように感じる。地方では駅前にコンビニもなく、食事のできる店も大手チェーン系列の居酒屋だけという個性のない町だらけになった。見せつけられたのは地方衰退史そのものだ。声高に叫ばれ続けた「地方創生」とは何だったのか、そろそろ検証すべき時だろう。

(2021年9月1日)

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