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羽田衝突事故は羽田空港の強引な過密化による人災だ

2024-01-05 11:37:19 | 鉄道・公共交通/安全問題
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」に寄稿した内容をそのまま転載したものです。)

2024年は新年早々、元日の能登半島地震に続き、2日は羽田空港でJAL機と海上保安庁機の衝突事故が起きた。今年も激動の年になることは決まったようなものだ。

私は、海上保安庁の機体と衝突したという事故の一報を聞いたとき、北陸震災絡みだとすぐにピンと来た。海上事故や災害などの緊急時に備えた要員以外の海上保安庁職員は正月休みであり、この時期に海保の飛行機が大規模な運航をすることが珍しいからだ。

これまでの報道では、海保側が航空管制官の指示を聞き間違えたのではないかということが報道されているが、マスコミが報じない本当の背景に「羽田の再国際化、過密化」があることは指摘しておきたい。

1978年の成田空港開港以降、基本的には羽田は国内線、成田が国際線を受け持つという役割分担が長く続いてきた。それが大きく変わったのは2010年代に入ってからで、2020年東京五輪(新型コロナにより2021年に延期)の招致が決まってからは「再国際化」が本格化した。選手団や役員など、大会関係者を入国させるのに成田では遠すぎるとして、午前6時から22時55分までの「昼間時間帯」を中心に、最大で従来の1.7倍もの増便となった。これだけの増便を行い、空港の運用にひずみが出ないわけがない。事故は起きるべくして起きた人災だったのだ。

もう1つ指摘しておきたいのは、帰省Uターンラッシュで1年で最も空港が過密となる1月2日に、全国で最も過密な空港である羽田から救援機を被災地に向かわせようとした海保の判断が適切だったかどうかである。「海上保安レポート」2021年版(海上保安庁)によれば、海保はこの中型機と同クラスのものを仙台空港、関西空港、新潟空港などにも配備している。新潟空港は今回、救援を受ける側なので除外されるのはやむを得ないとしても、仙台空港や関西空港から救援に向かわせる方法もあったのではないかということだ。この点は焦点になるべきだろう。

衝突した海保の飛行機(MA722「みずなぎ」)はボンバルディア製小型旅客機(DHC-8-300型)で、50~100人乗りクラスの小型機として旅客機に使われているのと同じである。民間航空会社も輸入しているものを「固定翼機」などと、あえて軍事用語で呼ぶこと自体、マスコミが自民党政権の戦争政策のお先棒を担ぐもので、その罪も問うべきである。

ところで、50~100人乗りクラスの小型機のメーカーは世界に3社しかない寡占市場で、具体的にはすでに述べたボンバルディア(カナダ)の他、エンブラエル(ブラジル)、スホーイ(ロシア)である。このうちスホーイは、旧ソ連国営航空機メーカーをソ連解体でロシアが引き継いだ。日本政府の立場としては「敵陣営」の航空会社であるスホーイから買うわけにいかないという事情もあり、日本国内ではボンバルディア製がほとんどを占める。

三菱航空機が10年以上、「リージョナルジェット」の名称でこの分野への進出を目指し飛行試験まで成功させながら、米国で形式証明が取れず開発断念に追い込まれたことは報道などでご存じの方もいると思う。三菱航空機がそこまでして参入したかったのも、3社寡占状態の市場に割り込めれば儲かるという経営判断があったからだ。確証はないが、日本政府としても、三菱航空機がリージョナルジェット開発に成功すれば、MA722のような海保機を国産化できるという期待もあったのではないだろうか。

<参考記事>
進む羽田空港の国際線化 いつ・なぜ始まったのか 以前は「羽田は国内 成田は国際」(「乗りものニュース」2020.3.25付け記事)

(文責:黒鉄好)

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