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ALPS処理汚染水差し止め訴訟、第1回口頭弁論~平気で約束を破る東電に漁業者、市民は怒り 国側「反論」は支離滅裂

2024-03-12 20:54:09 | 原発問題/一般
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」に寄稿した内容をそのまま転載したものです。)

 福島第1原発事故から13年を迎えようとする中、福島県内を中心に漁業者・市民363人が汚染水の海洋投棄の差し止めを求める「ALPS処理汚染水差止訴訟」は3月4日、福島地裁(小川理佳裁判長)で第1回口頭弁論が行われ、漁業者2人、市民2人の計4人が意見陳述した。この裁判を支えようと、福島地裁前には200人が集結。並行集会・報告集会が行われた福島市市民会館4階会場はもちろん、サテライト会場として設置した5階まで参加者で埋まった。





 裁判は、14時開廷予定のところ、進行協議が大幅にずれ込み14時35分にようやく開廷。福島県新地町の漁師・小野春雄さんが陳述。「私たちがめぐみを得る『宝の海』は未来へひきつがれるべきもの。海洋投棄に大義はなく、相馬双葉漁業組合員の全員が反対した。私たちが求めているのは、海を汚さず、放射能汚染に悩まされず、子々孫々漁業を続けることだ」と福島の漁業者全体の思いを代弁した。



 茨城県北茨城市で水産加工業を営む男性は「福島原発事故前の2010年、私の会社の商品は兵庫県淡路の業者に評判となったが2011年以降、取引がなくなった。豊洲市場でも取引価格は3~4割も下落した」と『風評被害』(実態は実害)を訴えた。「東京電力から水産加工業者に対する説明は一切なかった。(国・東電は)漁業者との理解のないまま放出はしないと約束したが、私たちは説明も受けていないのだから理解などしようもない」と、対話もないまま汚染水海洋投棄に踏み切った国・東電への怒りを述べた。「ALPS処理汚染水の放出が続けば自分たちの先行きも見通せず、子どもにも仕事を継がせられない」。言葉のあちこちに怒り、悔しさ、苦悩がにじんでいた。

 「これ以上海を汚すな!市民会議」共同代表の織田千代さんは「海洋投棄は意図的に放射能拡散を続けること。今すぐやめてほしい。そもそも国・東電は漁業者との理解のないまま放出はしないと約束したはず。漁業者との約束はどうなったのでしょうか」。声を荒げ、被告席をにらみつける小田さんに小川裁判長が「裁判所の方を向いて陳述して下さい」と求める一幕があったが、私も事故当時の県民としてこの怒りはよく理解できる。私が陳述に立ったとしても小田さんと同じように行動しただろう。



 いわき市在住の千葉由美さんは、子どもを海で遊ばせる楽しみを奪われた怒りを語った。

 4人の原告全員が口にしたのが、東電による「約束違反」への怒りだった。海を汚されたことへの怒りはもちろんこの裁判の原告になった363人に共通のものだ。だがそれ以上に激しい怒りを呼び起こしたのが「地元漁業者の理解がないまま放出はしない」と文書で約束までしておきながら、東電が平然とこれを破り捨てたことである。こんなことを平気でしでかす連中がいくら「志賀原発は能登地震でも壊れていませんので信じてください」などと言ったところで誰が信じるか!

 被告側からは、国が棄却を求める陳述。「処理水放出は着実な廃炉を実現するための措置として許可した」との主張だが、そもそも国・東電は海洋放出以外の代替案(モルタル固化など)をまったく検討もせず「安上がりな解決策」である放出ありきで事を進めてきた。代替策を検討していれば今日の事態はなかったはずで、汚染水を海洋投棄せざるを得なくなったこと自体、廃炉の失敗を意味するものだ。それを「着実な廃炉」のために許可とは黒を白と言いくるめるものだ。

 「汚染水放出の審査は廃炉措置の完了や環境保護などの『一般的公益』を守るためであり、原告の個人的利益を守るためではない」という主張も詭弁に過ぎない。一般市民の健康を守ることが一般的公益に含まれないというなら、国が主張する一般的公益のひとつとしての「環境保護」とはそもそも何なのか。私たちの健康を守ることを抜きにして実現する「環境保護」に環境保護たる意味があるのか。疑問しかない。

 国側は、陳述の冒頭で「原告代理人のプレゼン資料の中に、意見陳述に書いていない内容が含まれている」とどうでもいい揚げ足を取ってきた。閉廷後の報告集会で、海渡雄一弁護士は「内容で勝負ができないから、そんなことしか言えないんでしょう……ま、これから気をつけますよ」と笑っていた。

 驚いたことに、東電はこの第1回公判で反論書面すら準備していなかった。原告側は半年も前に訴状を提出しているのにまさか読んでいないわけでもなかろう。何があっても国が守ってくれると甘えているのか。それとも反論も書けないほど企業体質が劣化しているのか。その両方ではないかというのが、法廷で双方の陳述を聞いた私の率直な感想である。

 判決後の報告集会では、避難先の群馬からいわき市に戻ってきた原告団事務局長の丹治杉江さんが「私がいわき市に戻ってきたのは闘うため。死に場所を求めて戻ってきたわけではありません」と元気よくあいさつ。意見陳述した4人の原告がそれぞれの思い、決意を報告した。次回公判は6月13日(木)、福島地裁で行われる。

(取材・文責:黒鉄好/ALPS処理汚染水差止訴訟原告)

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