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こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
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2024衆院総選挙の結果について:日本で70年ぶりに出現した「ハングパーラメント」(宙吊り議会)

2024-10-31 22:36:09 | その他社会・時事

(管理人注:この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」に送信したメールの内容を、ブログ記事向けに編集したものです。)

今回の衆院総選挙は、自公が政権復帰以来、初めて過半数割れする結果となりました。この結果についてのコメントです。

1.組織型政党の後退

自民党の議席数は、291議席(2014年)→284議席(2017年)→261議席(2021年)→188議席(今回)と着実に減らしています。今回の減り方はいささか極端ですが、それについては後で述べるとして、組織としては着実に弱体化しています。

加えて、今回の選挙では、公明党、共産党、維新も後退しました。

これら「後退した政党」には一見すると共通点がないように見えますが、「上からの締め付け」「上意下達」のイメージが強いという意味で、共通点があります(実際にどうかではなく、組織外部の一般市民からどのように見えるか、というイメージ上の問題です)。この意味では、党首公選制を求めた党員に対する共産党の除名処分は、明らかにマイナスになっています。「下級は上級に従う」という従来型組織論は、市民の明らかな拒絶に遭い、曲がり角に来ています。

自民党の議席数の減り方を見ると、2021年以降、加速しています(2014年→2017年は7議席、2017年→2021年は23議席、そして今回は53議席!)。ちょうど、コロナで人と人との接触が制限され、対面型選挙運動が困難だった時期と重なっています。ネット選挙運動に長けた勢力が台頭するようになったのも、この時期からです。コロナ禍は、従来型選挙運動のあり方にも変化をもたらしたといえるのではないでしょうか。

2.国民民主党「大躍進」の背景

今回、最も驚きをもって受け止められているのは、改選前の4倍という国民民主党の大躍進でしょう。軍拡賛成、自民党以上の原発推進を掲げ、私たちからすれば好ましからざる勢力ですが、その大躍進の要因は分析しておく必要があります。

「対決より解決」の姿勢や「提案型」政治スタイルに対する(特に若年層の)支持、ネット選挙運動の巧みさなどが言われていますが、これらは決定的要因とは思えません。

あえて要因を挙げれば、いまや日本最大勢力に成長した旧同盟系「UAゼンセン」(旧ゼンセン同盟)の組織拡大です。連合総研「労働組合の未来」研究会報告(2024.6)によると、多くの労働組合が組織率も人員も減らす中で、UAゼンセンだけが右肩上がりで拡大を続けています。その拡大規模は、2003年に対する2023年の比率が2.01と、20年間で組合員が2倍に増えています。

UAゼンセンが地道に組織拡大に取り組んできたことに加え、サービス業労働者を苦しめているカスタマーハラスメントに関する大規模なアンケート調査の実施など、労働者がいま、最も求めていることに対しても、機敏に取り組んでいます。

「カスタマーハラスメント対策アンケート調査結果」記者レクチャー資料(UAゼンセン、2024年6月5日公表)

UAゼンセンの組合員が働くサービス業の職場の多くがユニオン・ショップ制を採っていることなど、他の業種と単純比較できない部分もありますが、このような地道な組織拡大の取り組みが、自民1強体制の崩壊という局面で、思わぬ形で実ったともいえそうです。

ただ、これが労働組合の活動として「あるべき姿」かどうかは賛否両論あるでしょう。労働者が苦しんでいる実態があるならば、それに最優先で取り組むのが労働運動だという評価もできる一方、資本・会社と闘ってこそ労働運動、労使一体になって、同じ労働者階級であるはずの顧客と闘うとは何事か、とお怒りの方もいるかもしれません。

3.自民1強体制の終わり 

今回の選挙は、10年後、振り返ったときに「いま思えば、あれが自民1強体制の終わりの始まりだった」と総括されるかもしれません。小選挙区制の下でも、自民党が右肩下がりで弱体化しており、選挙のたびに議席数を減らしていることは1で指摘したとおりです。

今回の選挙で、野党共闘がほとんど成立しなかったにもかかわらず、自民党がこれだけ大敗したのは、保守層の受け皿となる政党が、自民以外という具体的な姿を取って現れてきたからです。

従来は「保守派たるもの、自民党支持であるべきだ」と思われてきましたが、それが大都市住民には見えない形で、地方から崩れてきていることは、私にはすでに見えていました。それは、地方選挙(特に、地方の自治体首長選挙)の多くが近年、保守分裂選挙となっているからです。自民党が、弱体化によって地方の保守層をまとめきれなくなっており、地方選挙が次々保守分裂に陥っていた流れが、今回、ついに中央に波及してきたことは明らかです。これは、自民1強体制の終わりを意味します。同時に、1993年の細川非自民連立政権で「55年体制の片側だけ」崩れたのが、今回、ついに残ったもう片方(自民党側)も崩れたといえます。

4.今後の「政局」と闘い

安倍政権成立後、12年間続いた「自民1強」は、インフレ→物価高→生活苦→裏金問題への怒り→保守票の「自民以外への流出」という意外な形で今回、終わりを告げました。

どの勢力も過半数を取れない議会構成は、英国ではしばしば出現しており「ハング・パーラメント」(宙吊り議会)と呼ばれます。1955年の「保守合同」で自民党が結党して以降、自民党政権下では初めて出現した事態です。政府提出法案を成立させる立場にある与党が半数を割ったまま国会が召集されると、実に70年ぶりの事態です。

石破政権は、歴代自民党政権の中で最も困難な「茨の道」を歩むことになります。2000年代終盤、福田康夫~麻生太郎政権当時にも、衆参で多数派が異なる「ねじれ国会」が出現したことがありましたが、このとき与党少数となったのは内閣不信任権を持たない参院でした。内閣不信任権を持つ衆院で与党が少数になったことが持つインパクトは当時の比ではありません。国会開会中は常に内閣不信任案可決の危機にさらされ、「自分の内閣は今日で終わりかもしれない」と思いながら、政府与党が薄氷の思いで政権運営を続けなければならない事態が、70年ぶりに出現したのです。

11月10日召集予定の特別国会では、野党がまとまらないため、石破茂・自民党総裁が再び首相指名され、第2次石破政権成立となるでしょう。しかし、政権交代が実現しなかったからといって悲観する必要はありません。

少数与党のため、予算案、法律案、条約承認案をはじめ、衆参両院で可決されることが必要な「国会同意人事」(日銀総裁、会計検査院検査官など)など、あらゆる議案が与党だけでは成立させられません。福田、麻生政権当時は参院が与党少数、衆院は与党多数(しかも3分の2以上)だったため、首相指名、予算、条約は「衆院の優越」により衆院で可決すれば自然成立が可能でした。参院が否決した法案を、3分の2以上による衆院での再可決で成立させることもできました。

しかし、今回は「優越的地位」にある衆院が少数与党となったため、首相指名、予算案、条約案もすべて野党の協力を得る必要があります。参院先議で可決し、衆院に送られた後、否決された法案は、そのまま廃案となり再可決もできません。

与党が少数となった衆院で、実現すると面白いのは「統一教会幹部や裏金議員の証人喚問」です。与党が激しく抵抗しても、全野党が一致して「認めないなら内閣不信任案を出す」といえば実現する可能性があります。これを特別国会か、年明けの通常国会で徹底的にやり、自民党を叩いて打撃を与えれば、来年7月の参院選でも自公が後退する可能性があります。衆院に続き、参院でも自公が半数を大きく割れば、「部分連合」で協力していた国民民主党が自公から離れ、政権交代も視野に入ります。

その先にはこれまで自民党の妨害で進まなかった政策(「選択的」夫婦別姓や同性婚の法制化など)も可能になります。私としては、自公の反対で諦めていたこれら政策の実現のため、来年の参院選までに①小選挙区制廃止法案、②企業犯罪処罰法案、③「選択的」夫婦別姓や同性婚の法制化のための民法、戸籍法改正案、④JR再国有化法案、⑤脱原発法案――の準備を進めます。


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