人生チャレンジ20000km~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

お正月こぼれ話~ブログ仲間と「闘うオフ会」①大阪・釜ヶ崎越冬闘争の現場で

2023-01-02 23:07:45 | 日記
さて、今年の正月は3年ぶりに行動制限がなかったため、私も12月29日から久しぶりに実家に帰省した。数年前に後期高齢者入りした父に続き、今年は母も後期高齢者入りする。この年齢で五体満足ということはないが、幸い、見た限りではもう少し余生を送れそうな雰囲気で、良かったと思っている。

九州の自分の実家に帰った後、元日に出発し、妻の実家のある大阪に向かう。今回は諸事情で元日から1月2日までしか大阪に滞在できない。その上、元日の夕方から2日にかけて時間が空いてしまったため、関西方面でかねてからお会いしてみたいと思っていた方に連続してお会いすることができた。今回はその話をしておきたいと思う。

1人目は、ブログ「アフガン・イラク・北朝鮮と日本」管理人のプレカリアートさんという方である。JR福知山線脱線事故(2005年)当時に当ブログを知って以来、もう20年近くも当ブログの記事を読んでいただいている。私も、イラク戦争と前後して「アフガン・イラク・北朝鮮と日本」を時折閲覧するようになり、それは今なお続いている。政治的立場もきわめて近い方だと思って以前から親近感を抱いていた。書き込みからは、流通業に従事する非正規労働者の男性で、私と同じく鉄道ファンという人物像が見えていたが、それ以外のことはまったくわからない。正直なところ、会ってもらえるかどうかも含め、手探り状態だった。

12月に入って連絡を取ってみたところ、元日なら公休日なのでお会いできるとの返事があり、さすがに嬉しくなった。ネット上だけだった人と実際にお会いする体験をするのは、今はもう閉鎖されてしまったネットの掲示板で初めてのオフ会が開催された1999年以来のことだ。なんと20年以上ぶりである。

プレカリアートという言葉にはちゃんと意味がある。「不安定」を意味する英語のprecarious、またはイタリア語の precarioと労働者階級を意味するプロレタリアートを掛け合わせた造語で、非正規雇用が一般化した2000年代頃から使われるようになった。ただし、用語のニュアンスとしては階級意識を持ち、きちんと働いて生計を立てている非正規労働者が、誇りを持って自称するための用語である。プレカリアートユニオンという労働組合もあるくらいだ。

(まったくの余談だが、団塊世代の元学生運動家の間では、革命に役立たない落ちこぼれ労働者をルンペンプロレタリアート、略してルンプロと呼んでいた。マルクス自身がそう呼んでいたことに由来する。学生運動家が「ご通行中の労働者、学生、ルンプロ諸君! 我々は○○派です」などと街頭演説していた時代があった。ルンプロは蔑称であり、労働者が自分自身をそう呼ぶことは決してなかった。これに対し、プレカリアートは労働者が自称するのに恥ずかしくない用語であり、かつてのルンプロとはまったく違っている。)

待ち合わせ場所に現れたプレカリアートさんは、私より小柄な方で、かつて西成で日雇い労働をしていたイメージからはかけ離れていた。物腰も柔らかく、人格者であることはすぐにわかった。

しばらく、西成区の日雇い労働者の町、あいりん地区を案内していただいた。今では言われないと、ここがあいりん地区とはわからないくらいに街並みはきれいになっているが、プレカリアートさんによれば、かつては女性、いや男性でも夜間、ひとりで歩くのは危険なほど治安は悪かったという。時折、阪堺電車が走っていくのが見えた。今でこそ新型車両に置き換わったが、かつては「半壊」電軌と呼ばれていた時代もある。

<写真>あいりん労働センター争議団事務所前。建物の取り壊しの計画があり、労働者が阻止のため寝泊まりしている


<写真>あいりん地区から見える白い瀟洒なホテルは星野リゾートが建設。外国人富裕層が主に利用するという。
日雇労働者との間に「階級社会」が到来していることを見せつけられる


その後は釜ヶ崎で行われている越冬祭りの現場に2人で行く。日雇い労働者は、仕事がなくなる年末年始に生活が困窮することが多く、炊き出し支援が行われてきた。東京・山谷、名古屋・笹島、そしてこの大阪・釜ヶ崎が日本3大越冬闘争として知られている。会場で配られたパンフレットを見ると、この越冬祭りも53回目と長い歴史を持つ。

実はこの釜ヶ崎越冬闘争、過去2年は新型コロナのためステージ企画などの祭りは中止され、弁当配布だけの異例の形となっていた。行動制限が解除され、この年末はステージ企画、温かい食べ物の炊き出しが3年ぶりの復活。この支援を心待ちにしている労働者がいかに多かったかは、私にまで「炊き出しはどこでやっていますか」と尋ねてくる人がいたことからもわかる。3年ぶりに炊き出しが復活するとあってか、会場にいる労働者にどこか安堵の表情が見えたような気がしたのだ(もっとも、今回が初めての私には、過去との比較はできないものの、少なくとも悲壮感は見えなかった)。

プレカリアートさんから「炊き出しのカレーを食べませんか」とお誘いを受けた。私には正直、2つの意味でためらいがあった。1つは、日雇い労働者でもなく、安定した正規雇用を保障されている自分に炊き出しの列に並ぶ資格があるのか、というある種の「後ろめたさ」。もう1つは、自分が並ぶことで本来、食べられるはずだった誰かが食べられなくなるのではないかという「恐れ」だった。

だが、そのどちらも杞憂だった。日雇い労働者は無料で食べられるが、それ以外の人も100円を払えば炊き出しを利用できるという。しかも、大量に振る舞われ、既に1杯目を食べ終わった人たちがおかわりに長蛇の列をなしている。誰かがあぶれる心配もしなくて良さそうな雰囲気だった。

胃の摘出手術をして以来、極端にスパイスの効いた辛いものを食べると下痢をしてしまうことが多く、食べるかどうかに迷いもあった。だが、私のような立場の人間にとって、普通なら接点を持てないはずのプレカリアートさんとせっかくこのような形で労働者同士の連帯が芽生えようとしているのだ。一晩くらいなら影響があってもかまわない。それより労働者同士の連帯のほうが大事だ。食っちまえ! とばかりに口に運んだ。幸いなことに、カレーを食べたことによる体調悪化は見られなかった。術後6年経過し、少々の刺激物なら受け入れられるようになってきていることを、改めて確認できた。

<写真>釜ヶ崎越冬祭りにて、踊っているスタッフ。公園内では「参加者の顔が見える形での撮影・配信は禁止」となっていたが、今どき漢字で「夜露四苦」なんて……昔の暴走族みたいなノリで、面白くてつい撮影してしまいました。後ろ姿だし、お許しを……(ちなみにヤンキーや暴走族の場合は「夜露四苦」ではなく「夜露死苦」と書く場合が多いです……って、何を言ってんだか)


<写真>炊き出しで出されたカレー。おかわりで並ぶ労働者も多く、越冬闘争の重要さを思い知らされる。
もっとも、本当に重要なのは「休暇を取っても賃金の減ることのない」安定雇用だと思うが……


大阪という土地柄もあるのかもしれないが、労働者が煙草を吸っては、吸い殻をポイポイと公園内に捨てている。それを1本1本、拾って歩くスタッフもいるなど、越冬祭りには「秩序」と「カオス」が同居して不思議な魅力がある。祭り全体としては地域に迷惑をかけない形できちんと自己完結できていることも、この越冬闘争が長く続いている秘訣だと感じた。

夜のとばりが降り、カレーが配られ始める頃、自称「いおり」さんという年齢不詳の女性シンガーがステージに立つ。ここで歌い始めて10年ほど経つと自己紹介。「誰でも知っている曲を歌いま~す!」と宣言。THE BLUE HEARTSの「青空」、山本リンダの「こまっちゃうナ」「どうにもとまらない」をノリノリの熱唱。なるほど、私たちの年代でこれらの曲を知らない人はいないだろう。

ちなみに「青空」はTHE BLUE HEARTSのなかでも気に入っている1曲である。「生まれたところや皮膚や目の色で いったいこの僕の何がわかるというのだろう」という部分が、特に好きだ。つまらない差別や、ヘイトや、弱者へのバッシングを繰り返す愚か者への怒りがわいたときに聴くことにしている。

プレカリアートさんは、年末年始といっても公休日以外は出勤で、普段と変わらない。明日も仕事があるため、カレーを食べ終わった午後6時半頃、再会を期して別れた。

ブログを見ている限りでは、もっと尖ったキャラクターを想像していた。繊細な妻を会わせるのはちょっとどうかな、と思い、妻に同行を求めなかった理由もそこにある。だが、プレカリアートさんに事前に抱いていたイメージはいい意味で裏切られた。オフ会の楽しさ、醍醐味だ。次回、関西方面に来るときに、彼の負担にならない範囲でまた会えたら、と思う。

この国を動かしている「エリート」と呼ばれる人にこそ、ここで働いている人たちの姿を見てもらいたいと私は思っている。この国と社会の「もうひとつの姿」など、興味も知る気もないかもしれないが、不安定な雇用形態であっても、労働者としての自分自身に誇りを持って働いている人が日本経済を支えている。社長や総理大臣が1ヶ月くらい不在でも日本経済は動くが、この労働者たちが1日でもいなくなったら日本経済は決して動かないのだ。

プレカリアートさんとの出会いが心地よく、すがすがしかったため長文になってしまった。本当は、この翌日(1月2日)の京都での「オフ会パート2」についても書きたかったが、稿を改める。

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