学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

山東京伝『心学早染草』

2010-10-07 20:14:17 | 読書感想
快晴にて、気持ちの良い一日でした。

江戸時代の戯作者山東京伝の『心学早染草』を読みました。人の魂には善玉、悪玉がある。善玉が人の心に入ると良い行いをする。一方、悪玉が入るとその逆になる。主人公の目前屋理太郎には生まれてすぐに善玉が入り、とても品行良い若者に成長します。ところがある日、ふとしたことから善玉が体から離れてしまう。そのすきに悪玉が入ってしまうのです。悪に染まった理太郎は吉原に入り浸り、あげくの果てに両親から勘当され、盗賊になってしまいます。理太郎の体に戻ろうとする善玉は、なんと悪玉に切り殺され、絶対絶命。しかし…殺された善玉には妻と子どもが2人おり、3人は敵討ちを心に秘めて…。

当時のブームだった心学を風刺した内容とされていますが、そうした時代背景を知らずとも面白く読める本です。特に人の心のなかを善玉、悪玉が行き来するという発想。私も心のなかに悪玉を入れないように用心しないといけないな、と思いました(笑)


●『黄表紙 洒落本集』日本古典文学大系59 水野稔 校注 岩波書店 1958年