経済産業省総合資源エネルギー調査会の基本計画部会および需給部会は「異様な世界」だ。
(1)その審議の進め方を一言で言えば、「エネルギー一家」の家族会議だ。家族会議のアナロジーがよく当てはまる様式が採用されている。すなわち、家長(資源エネルギー庁)が、家族構成員(エネリグー関連諸業界、ガス業界など)が納得してくれるような裁定を下すのだ。
この様式の根底にある認識は、国家政策は国民や人類の公共利益のためではなく、「エネルギー一家」のためにある、という認識にほかならない。
(2)その認識によれば、何が公共利益にもっとも適う政策上の選択肢であるかについて、必要な情報をすべて揃えた上で徹底的な論争によって結論を出す場・・・・ではない。事務局を務める官庁が、業界関係各委員(その多くは職指定で指名される)の主張を聴取した上で、そのすべてに配慮した報告書をまとめ、各委員の同意を得るための場・・・・なのだ。
業界との結びつきが希薄な第三者委員の意見は、官庁が「落とし所」【注1】として予定している結論に背反しないものは採択し、背反するものは棄却する・・・・これが事務局の使命だ。
エネルギー政策は、私的な案件(<例>遺産相続)とは異なり、公共政策だ。そこにおいてかかる仕組みがとられているのは問題だ。
(3)(2)のような仕組みにおいては、事務局が核委員の意見を採否する権限を掌握している。
各委員は、意見を聞き届けてもらうための「陳情」を行う立場に置かれる。その立場は、公聴会の意見発表者と何ら変わりがない。委員に事実上の決定権はない。
(a)委員は2つの階層に分かれる。
①上位階層・・・・意見を聞いてもらいやすい業界関係委員。
②下位階層・・・・それ以外の第三者委員(事務局の意向を汲んで議事の効率的な進行に貢献する一部の調整役的な委員を除く)。
(b)公聴会の意見発表者は、さらにその下のランクだ。
(c)パブリック・コメント提案者は、あらゆる発言者の中で最下位に位置する。
(4)かかる仕組みは、あらゆる官庁の所属する政府審議会に、程度の差はあれ当てはまるもの【注2】だが、経産省わけても資源エネルギー庁においては、「紙芝居」のような単純明快な運営が行われてきた。
そこでは、中抜きの長方形に机が並べられ、入り口側の長い一辺にずらりと座長と幹部役人が並ぶ。座長の横には、それぞれ資源エネルギー庁長官と総合政策課長が陣取る。残りの三辺には委員がアイウエオ順に並ぶ(回を重ねるごとに2席ずつ移動し、最終回までにほぼ一周する)。座長と役人は、形の上では下座に陣取ってはいるが、実質権限では「上座」に並んでいる。その「上座」に向かって各委員は意見陳述を行う。委員同士が議論することはめったにない。「上座」と「下座」の間のやりとりが大部分を占める。
核の六面体構造における意思決定は、以上のような様式で行われる。
そこで決定された計画は、直ちに閣議にかけられ、法律制定・改正に向けた動きと連動する。経産省は、こうしたスピーディな法律制定・改正を得意とする。
【注1】いかに論理的・実証的に説得力のある議論を展開しても、事務局の望んでいる「落とし所」に適合しなければ、棄却されるだけだ。
【注2】「【官僚】政策立案の成功が続く最大のからくり ~審議会システム~」
以上、吉岡斉『脱原子力国家への道』(岩波書店、2012)の第4章「日本の原子力開発利用の構造」に拠る。
【参考】
「【原発】『脱原子力国家への道』」
「【原発】日本政府はなぜ脱原発に舵を切れないか ~日米原子力同盟~」
「【原発】福島原発事故による被害の概要」
「【原発】福島原発事故の教訓」
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(1)その審議の進め方を一言で言えば、「エネルギー一家」の家族会議だ。家族会議のアナロジーがよく当てはまる様式が採用されている。すなわち、家長(資源エネルギー庁)が、家族構成員(エネリグー関連諸業界、ガス業界など)が納得してくれるような裁定を下すのだ。
この様式の根底にある認識は、国家政策は国民や人類の公共利益のためではなく、「エネルギー一家」のためにある、という認識にほかならない。
(2)その認識によれば、何が公共利益にもっとも適う政策上の選択肢であるかについて、必要な情報をすべて揃えた上で徹底的な論争によって結論を出す場・・・・ではない。事務局を務める官庁が、業界関係各委員(その多くは職指定で指名される)の主張を聴取した上で、そのすべてに配慮した報告書をまとめ、各委員の同意を得るための場・・・・なのだ。
業界との結びつきが希薄な第三者委員の意見は、官庁が「落とし所」【注1】として予定している結論に背反しないものは採択し、背反するものは棄却する・・・・これが事務局の使命だ。
エネルギー政策は、私的な案件(<例>遺産相続)とは異なり、公共政策だ。そこにおいてかかる仕組みがとられているのは問題だ。
(3)(2)のような仕組みにおいては、事務局が核委員の意見を採否する権限を掌握している。
各委員は、意見を聞き届けてもらうための「陳情」を行う立場に置かれる。その立場は、公聴会の意見発表者と何ら変わりがない。委員に事実上の決定権はない。
(a)委員は2つの階層に分かれる。
①上位階層・・・・意見を聞いてもらいやすい業界関係委員。
②下位階層・・・・それ以外の第三者委員(事務局の意向を汲んで議事の効率的な進行に貢献する一部の調整役的な委員を除く)。
(b)公聴会の意見発表者は、さらにその下のランクだ。
(c)パブリック・コメント提案者は、あらゆる発言者の中で最下位に位置する。
(4)かかる仕組みは、あらゆる官庁の所属する政府審議会に、程度の差はあれ当てはまるもの【注2】だが、経産省わけても資源エネルギー庁においては、「紙芝居」のような単純明快な運営が行われてきた。
そこでは、中抜きの長方形に机が並べられ、入り口側の長い一辺にずらりと座長と幹部役人が並ぶ。座長の横には、それぞれ資源エネルギー庁長官と総合政策課長が陣取る。残りの三辺には委員がアイウエオ順に並ぶ(回を重ねるごとに2席ずつ移動し、最終回までにほぼ一周する)。座長と役人は、形の上では下座に陣取ってはいるが、実質権限では「上座」に並んでいる。その「上座」に向かって各委員は意見陳述を行う。委員同士が議論することはめったにない。「上座」と「下座」の間のやりとりが大部分を占める。
核の六面体構造における意思決定は、以上のような様式で行われる。
そこで決定された計画は、直ちに閣議にかけられ、法律制定・改正に向けた動きと連動する。経産省は、こうしたスピーディな法律制定・改正を得意とする。
【注1】いかに論理的・実証的に説得力のある議論を展開しても、事務局の望んでいる「落とし所」に適合しなければ、棄却されるだけだ。
【注2】「【官僚】政策立案の成功が続く最大のからくり ~審議会システム~」
以上、吉岡斉『脱原子力国家への道』(岩波書店、2012)の第4章「日本の原子力開発利用の構造」に拠る。
【参考】
「【原発】『脱原子力国家への道』」
「【原発】日本政府はなぜ脱原発に舵を切れないか ~日米原子力同盟~」
「【原発】福島原発事故による被害の概要」
「【原発】福島原発事故の教訓」
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