語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】放射能汚染に警鐘を鳴らした市議が失職

2012年09月28日 | 震災・原発事故
 (1)群馬県桐生市議会(定数22)は、今年6月20日、1人の市議に対する「除名を求める懲罰動議」を反対2、棄権1の大差で可決した。
 その理由・・・・庭山由紀・市議(当時)が、前月、献血に関して「放射能汚染地域に住む人の血って、ほしいですか」とツイッターで発信したことが、「議会の品位を著しく汚」し、「公職の立場にふさわしくない」。

 (2)桐生市が「放射能汚染地域」かどうかについて言及した報道は皆無に近い。
 だが、市が公表した数値では、下水処理施設から出る焼却灰から、この6月に、2,910Bq/kgのセシウムが検出されている。
 さらに、土壌についても、8月に、市内の公園から25,000Bq超の高い数値が出た。
 一番強調したかったのは、桐生が放射能汚染地域なのだ、ということ。しかし、市や多数派議員は「汚染状況重点調査地域」などとして汚染の事実を認めず、市民に注意も呼びかけない。そのためか、市全体としても意図的に現実から目をそらそう、考えないようにしよう、という雰囲気が強い。放射能問題を指摘すると、逆に嫌がられる傾向がある。学校給食も、昨年度まで月に2回、1回につき3品目程度しか食材検査をしていなかった。昨秋には、群馬県産の白菜から18Bq/kgという数値が出たのに、市は公表していない。議会で追及したら、「地元農家の風評被害を懸念したから」という回答だった。【庭山前市議】
 桐生市は、「風評被害」を懸念し、消費者の実害を懸念しない、という構図だ。
 昨年6月から、月2回定点モニタリングを実施し、分布マップを作成して公開している。市民から申込みがあれば、自宅や事業所を訪問して線量を測定し、高い場合は除染も行っている。給食についても、現在すべての食材の測定結果をホームページで公開している。【桐生市市民生活部放射線対策室】

 (3)庭山前市議がツイートした内容は、除名に値するか。
 庭山前市議は、これまで「行政視察」と称した物見遊山など、「議員の怠慢と腐敗が蔓延化している実態」を市民に明らかにし、議会でも追及してきた。他方、問責決議などが6回可決されている。
 だが、地方自治法で定められる懲罰の理由は、議会内での言動に限られる。
 庭山前市議が、多数派の横暴や議員の不勉強など問題だらけの議会でそれを指摘してきた存在だったのは事実。議会外の行為を議会に持ち込んで除名するなど、ルール違反で、絶対やってはいけない。こんなことがまかり通ったら、民主主義が破壊される。【西牧秀乗・議員(自民党)/懲罰動議に反対した一人】

 (4)庭山前市議は、PTAなどでも子どもに対する放射能汚染の危険性を訴えてきた。しかし、
 大半の親たちが無関心なのに驚いた。そのため、市役所前の献血車を見て、危機意識のなさに警告を発したのがツイートのきっかけだった。【庭山前市議】 
 それが過剰反応を惹起し、議員失職まで至った。これら一連の経緯は、「暴言市議」とレッテルを貼ってすませるほど軽くはない問題を社会に示す。

 以上、本誌編集部「なぜ、ツイッター発言が理由にされたのか」(「週刊金曜日」2012年9月21日号)に拠る。
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