(1)8月29日、大阪府市エネルギー戦略会議の終わり近く、古賀茂明・座長代理/特別顧問が切り出した。「夏の節電期間は間もなく終わります。改めて戦略会議としての基本的立場を明確にしておく必要がある」「われわれは大飯原発には安全性に問題がある、再稼働させるべきではない、と主張してきた。再稼働はあくまで暫定措置で、節電は9月7日まで、となっている。皆さんの賛同がいただければ、節電期間が終わったら止めるということを明確にしておいたほうがいいと思います」
異論はなく、9月4日に戦略会議としての意見をまとめて発表することを申し合わせた【注1】。
(2)橋下市長も運転停止を主張する、と目される根拠は、8月29日の会議前に飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長が委員に復帰したことだ。
8月29日の会議で、飯田が用意した23ページの資料【注】は、今後の原発政策を次の2つの選択とした。
(a)再稼働をなし崩しに強行する「強行突破シナリオ」
(b)「国・電力・経済界・国民の四方良しシナリオ」・・・・すべての原発を2年ほど止める「モラトリアム期間」を設け、国民投票を含む熟議を重ね、安全性を見直し、合意に沿った脱原発政策を進める。
(3)飯田は、委員に復帰するに当たり、「橋下さんが本気で脱原発に取り組まなかったら、途中で委員を辞任する」と周囲に伝えた。
戦略会議で決めたことを市長がまた覆すようなことが起きたら、委員の何人かが辞表を出す、という申し合わせがひそかにあった、と聞く。【会議関係者】
戦略会議の顔ぶれを見れば、「原子力ムラ」から距離を置くのは独り飯田のみではない。
植田和宏・座長/京大教授は環境経済学者。中立性が評価され、再生エネルギーで発電した電気の買い取り価格を決める調達価格等算定委員会委員長も務める。
古賀茂明は、官僚支配で動く国政では変えようのない原発政策に、橋下と組んで「対案」を示そうとしている。
佐藤暁・原子力コンサルタント、河合弘之・弁護士、長尾年恭・地震学者なども自らの信念で「脱原発」に取り組んできた専門家だ。
そんな面々が辞表を出す事態になったら、橋下人気は揺らぎかねない。
(4)9月4日の戦略会議で、「大飯原発の運転停止、原発ゼロをめざす脱原発」が決議されると、ボールは橋下に渡る。
橋下市長は、停電になったら死者が出る恐れがある、と関電や関経連に言われ、ビビッたけど、騙された、反省している、と言っていた。【河合委員】
関西経済連合会(会長:森詳介・関電会長)が再稼働では「橋下説得」に成功したが、最近は橋下や松井知事との間に溝ができているらしい。
戦略会議は、9月4日の会議に関経連の代表を呼んで意見を聞くことになっていたが、関経連は出席を見合わせた。
大阪府が来年1月に予定していた大阪新エネルギーフォーラムも中止になった。大阪府が、基調講演を植田・戦略会議座長に頼んだことに、関経連や近畿経済産業局が反発して共催を降りたためだ。「脱原発色が出るのでは当初の話とちがう、と折り合えなかった」(関経連広報)
だが、植田はここう語る。
「私たちは政策を論議しているのではありません。原発の安全性を確認するにはどうしたらいいのか、専門家として考えているだけです。電気が足りるか足りないかで原発を動かすかどうかを決めるのはおかしい。事故が起これば東電という巨大産業が倒産するほどの事態になる。どうすれば安全か、頭を冷やして考えるのが福島の教訓ではないでしょうか」
【注1】9月4日、大阪府市エネルギー戦略会議は、大飯原発3、4号機の停止を政府と関電に求める緊急声明をまとめた。声明は、「明確な長期的方針や十分な安全基準もなく原発を動かすのは、国民の意思をくんだものではない」と、大飯原発再稼働に踏み切った野田政権を批判している。4月に橋下徹市長が首相官邸で藤村修官房長官に申し入れた「原発百キロ圏内の都道府県との安全協定締結」などを柱とする原発再稼働八条件に関しては「全く満たされていない」と非難した。【記事「大飯原発 大阪府市が停止要求 緊急声明」(東京新聞2012年9月4日 夕刊)】
【注2】「リアルな脱原発の実現シナリオ」
以上、山田厚史(ジャーナリスト)「大飯原発停止を求める事情」(「AERA」2012年9月10日号)に拠る。
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異論はなく、9月4日に戦略会議としての意見をまとめて発表することを申し合わせた【注1】。
(2)橋下市長も運転停止を主張する、と目される根拠は、8月29日の会議前に飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長が委員に復帰したことだ。
8月29日の会議で、飯田が用意した23ページの資料【注】は、今後の原発政策を次の2つの選択とした。
(a)再稼働をなし崩しに強行する「強行突破シナリオ」
(b)「国・電力・経済界・国民の四方良しシナリオ」・・・・すべての原発を2年ほど止める「モラトリアム期間」を設け、国民投票を含む熟議を重ね、安全性を見直し、合意に沿った脱原発政策を進める。
(3)飯田は、委員に復帰するに当たり、「橋下さんが本気で脱原発に取り組まなかったら、途中で委員を辞任する」と周囲に伝えた。
戦略会議で決めたことを市長がまた覆すようなことが起きたら、委員の何人かが辞表を出す、という申し合わせがひそかにあった、と聞く。【会議関係者】
戦略会議の顔ぶれを見れば、「原子力ムラ」から距離を置くのは独り飯田のみではない。
植田和宏・座長/京大教授は環境経済学者。中立性が評価され、再生エネルギーで発電した電気の買い取り価格を決める調達価格等算定委員会委員長も務める。
古賀茂明は、官僚支配で動く国政では変えようのない原発政策に、橋下と組んで「対案」を示そうとしている。
佐藤暁・原子力コンサルタント、河合弘之・弁護士、長尾年恭・地震学者なども自らの信念で「脱原発」に取り組んできた専門家だ。
そんな面々が辞表を出す事態になったら、橋下人気は揺らぎかねない。
(4)9月4日の戦略会議で、「大飯原発の運転停止、原発ゼロをめざす脱原発」が決議されると、ボールは橋下に渡る。
橋下市長は、停電になったら死者が出る恐れがある、と関電や関経連に言われ、ビビッたけど、騙された、反省している、と言っていた。【河合委員】
関西経済連合会(会長:森詳介・関電会長)が再稼働では「橋下説得」に成功したが、最近は橋下や松井知事との間に溝ができているらしい。
戦略会議は、9月4日の会議に関経連の代表を呼んで意見を聞くことになっていたが、関経連は出席を見合わせた。
大阪府が来年1月に予定していた大阪新エネルギーフォーラムも中止になった。大阪府が、基調講演を植田・戦略会議座長に頼んだことに、関経連や近畿経済産業局が反発して共催を降りたためだ。「脱原発色が出るのでは当初の話とちがう、と折り合えなかった」(関経連広報)
だが、植田はここう語る。
「私たちは政策を論議しているのではありません。原発の安全性を確認するにはどうしたらいいのか、専門家として考えているだけです。電気が足りるか足りないかで原発を動かすかどうかを決めるのはおかしい。事故が起これば東電という巨大産業が倒産するほどの事態になる。どうすれば安全か、頭を冷やして考えるのが福島の教訓ではないでしょうか」
【注1】9月4日、大阪府市エネルギー戦略会議は、大飯原発3、4号機の停止を政府と関電に求める緊急声明をまとめた。声明は、「明確な長期的方針や十分な安全基準もなく原発を動かすのは、国民の意思をくんだものではない」と、大飯原発再稼働に踏み切った野田政権を批判している。4月に橋下徹市長が首相官邸で藤村修官房長官に申し入れた「原発百キロ圏内の都道府県との安全協定締結」などを柱とする原発再稼働八条件に関しては「全く満たされていない」と非難した。【記事「大飯原発 大阪府市が停止要求 緊急声明」(東京新聞2012年9月4日 夕刊)】
【注2】「リアルな脱原発の実現シナリオ」
以上、山田厚史(ジャーナリスト)「大飯原発停止を求める事情」(「AERA」2012年9月10日号)に拠る。
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