語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】「脱原発基本法」案が国会に

2012年09月14日 | 震災・原発事故
(1)いま、なぜ脱原発法なのか
 8月22日、「脱原発法制定全国ネットワーク設立」(代表世話人:河合弘之・弁護士/脱原発弁護団全国連絡会、ほか)が設立された【注1】。
 原発推進は原子力基本法の中に謳われ、日本の国策(エネルギー政策の中心)になっているからこそ、国策として脱原発を宣言する必要がある。
 国民の8割が、原発をやめてほしい、と思っている【注2】。
 1976、1983、2000年などの人権擁護大会で原子力政策の転換、原発の段階的廃止を決議してきたが、具体的な政策にしていく取り組みをしてこなかった。決議を現実化する運動が必要だ。【宇都宮健児・前日弁連会長、8月22日の記者会見】
 福島原発事故被害者の最大の願いは原状回復という意味での賠償だが、元の生活は戻らない。ならば、せめてこのような被害は自分たちで終わりにしてほしい、と被害者は切に願っている。【小野寺利孝・弁護士】

(2)高木仁三郎の悲願
 1986年のチェルノブイリ原発事故後にも、日本の原発反対運動が大きく高揚した。1988年4月の「原発とめよう! 1万人行動」には2万人が集まり、集会で高木仁三郎らが「脱原発法制定運動」が提案し、請願署名と超党派の議員立法によって脱原発法をめざすことになった。350万筆の署名が国会に提出されたが、法案は国会提出に至らなかった。
 今回の取り組みは、高木仁三郎が果たせなかった夢への再チャレンジだ。

(3)原発は倫理的なエネルギーではない
 原発は、「倫理的」なエネルギーではない。いったん事故が起これば、無限大の被害が発生する可能性がある。一度に大量の電源が失われ、エネルギー安全保障上も極めて脆弱なシステムだ。未だに放射性廃棄物の最終処理が確立されていない。仮に確立されても10万年以上の長い管理が必要とされる。原発による被害は、原発の利益を享受している現世代にとどまらない。今意思決定することのできない「未来の世代」も、事故のリスクに晒され、放射性廃棄物を大量に抱えこむことになる。

(4)提案の概要
 9月7日、脱原発基本法案が国会に提出された【注3】。
 (a)基本・・・・脱原発は遅くとも2020年度ないし2025年度までのできる限り早い時期に実現されなければならない。
 (b)具体的な政策
   ①脱原発基本計画の中で定める。
   ②新増設は認めない。 ⇒ 上関、東通、大間の各原発の許可は失効。島根3号機は運転開始を認めない。
   ③40年の寿命は例外を認めない。 ⇒ 敦賀1号機、美浜1号機、美浜2号機は運転開始を認めない。
   ④再稼働は、最新の科学的知見に基づいて定められる原子炉等による災害防止のための基準への適合性が確認されない限り、発電用原子炉の運転(運転再開を含む)をしてはならないことを条件とする。 ⇒ 福島第一5、6号機、福島第二1~4号機、柏崎刈羽1~7号機、浜岡3~5号機、女川1~3号機、東海第二、東通、玄海1号機は運転再開を認めない。美浜1~3号機、敦賀1、2号機、志賀1、2号機、大飯1~4号機、東通1号機等についても早期の廃炉決定が必要になる可能性がある。
   ⑤プルトニウムの商業利用は、即時停止を求め、再処理は停止して直接処分を進める。 ⇒ もんじゅは即時廃止。
   ⑥発送電分離・電力系統強化等の電力システムの改革や再生可能エネリグーの拡大・エネルギー効率の向上なども基本計画に取り入れる。
   ⑦寿命前の廃炉に対して電力会社に補償する。   

 【注1】頓所直人「脱原発法制定全国ネット設立で会見――「脱原発」を衆院選の争点に」(「週刊金曜日ニュース」)
 【注2】朝日紙の世論調査によれば、「原子力発電を全面的にやめるとしたら、いつごろが適当か」と7択で尋ねると、「すぐにやめる」16%、「5年以内」「10年以内」が各21%で、10年以内に脱原発を望む人が計58%となった。他の選択肢は「20年以内」16%、「40年以内」6%、「40年より先」2%、「将来もやめない」8%だった。【記事「脱原発「10年以内に」6割 朝日新聞世論調査」、朝日新聞2012年8月25日00時39分】
 【注3】「脱原発法が国会提出されました!」(ブログ「脱原発法制定全国ネットワーク」)。

 以上、河合弘之/海渡雄一「脱原発法で原発推進の国策にとどめを」(「世界」2012年10月号)に拠る。
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