(1)大飯原発の危険度は「ストレステスト意見聴取会」でずいぶん分かってきた。
大飯原発3、4号機は比較的新しい1990年代のものなので、たぶん事業者はわりと自信があるものだろう。しかし、いろいろ訊いてみると、だんだん変な話が出てきた。
技術的に一番問題なのは、制御棒が大地震のときにきちんと入るか、疑問な点だ。2.2秒以内に入らなければならない、という規定なのだが、小さい地震の場合はよいとして、基準地震を超えた場合でも大丈夫なのか。大飯原発は想定される揺れの1.8倍の地震まで大丈夫だとストレステストでは結論づけているが、実は1.8倍の地震が起きたときは、制御棒が挿入されるのに2.2秒を超えそうなことがわかった。
すると、計算の方法を変えて、基準地震では1.8秒以内でいく、という話を後から出してくる。
稼働させる、という結論に合うデータだけ出してくる。
ストレステストをする電力会社も、チェックする側も「原子力ムラ」なのだ。
大飯原発は加圧水型原子炉(PWR)なので、三菱重工が設計して作った。で、原子力安全基盤機構(JNES)にいる三菱重工のOBが審査している。
予想の地震の1.8倍でも余裕がある、と言うが、2倍4倍の地震が来る可能性もある。上限はわからないのだ。
(2)免震棟のないうちに再稼働しているのも、大飯原発3号機の大きな問題だ。
福島第一原発の場合、免震棟があって、保護されて壊れていなかったから、非常時でも一応司令が発せられていた。何人か技術者が詰めて、いろんな作業ができた。4年前の中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発の教訓で、3・11の半年前に作った。柏崎刈羽原発の教訓が活かされた唯一の例だ。免震棟がなかったら、全員が退去してしまって、もっとひどいことになっていた。
その免震棟が大飯原発にはない。3年後あたりに作るという計画を出したから、それでいことにして、再稼働させた。
ほかに、水密扉の問題、防潮堤の高さが足りない問題がある。
(3)聴取会で問題視される原発は、ほかに例えば志賀原発2号機。破砕帯があって、活断層ではないか、と渡辺満久・東洋大学教授が指摘している。また、ここは津波が来たら水密扉で対応することになっている。それが全部手動なのだ。人の訓練がどこまでできているか、という労務管理の問題がある。
(4)保安院や推進派は、口癖のように言う。安全というものは、ここまでやったから安全ということにはならない、安全は常に限りがない、と。
そして、だから完全でなくてもやる、ということにすり替える。分からないことがあっても、それは将来の問題だ、と引き延ばしてしまう。
ここまでやらねばならない、と分かっている最低ラインのこともやらないで再稼働している。
(5)2次テストは2011年12月までにやることになっていたが、各電力会社は全然やってない。運転再開に関係ないからだ。保安院も催促しなかった。
2次評価は、シビア・アクシデントの問題で、大きく壊れたときにどれぐらいの被害が及ぶのか、その時の対策がどうなのか・・・・非常に確率は小さくて滅多に起こらないが、起きたときにどういう対策をとっていくのか、を考える大切な場だった。これがほとんど進んでいない。先送りになっている。
(6)原発は原理的に危険だ。特に地震国の日本ではそうだ。一挙に止められなくても、非常に危険な原発から止めていくべきだ。
非常に危険な原発の基準として考えられるのは、地震・津波に弱い位置にあるとか、立地の問題だ。それと、老朽化した原発。1970年代に建てた原発は危ない。材料が悪いし、製造方法もよくない。圧力容器は板を薄くして、それを張り合わせる作り方だが、これがよくない。1980年代に入ると、最初から輪っかを作って、それを重ねる作り方で、その方法だと溶接の箇所が少ない。
設計的に欠陥のあるマークⅠ型も危険だ。だから、まずそういうものを止めることを決める、という方法はあると思う。
(7)危機感は意見聴取会でほとんど取り上げられない。原発は止めない、という前提で進行する。やる人間を替えないとオープンな議論にならない。だから、原発を続けるかどうかという話も、技術的に決まるわけではない。
地域ごとに危険を受けるかもしれない人たちがちゃんと判断する市民参加の体制を作らないかぎり、原発は動かすべきでない。
以上、井野博満(東京大学名誉教授)「1970年代に作られた原発はすべて廃炉にすべき」(「SIGHT」2012年秋号)に拠る。
【参考】
「【原発】玄海1号機の危険性 ~高い脆性遷移温度~」
「【原発】意見聴取会における結論誘導の手口~保安院~」
「【原発】再稼働の安全は誰が判断するのか ~専門家の偏向~」
「【震災】原発編集 - goo ブログ http://blog.goo.ne.jp/admin/newentry/
>ストレステストを再稼働に結びつけるな ~その理由~」
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大飯原発3、4号機は比較的新しい1990年代のものなので、たぶん事業者はわりと自信があるものだろう。しかし、いろいろ訊いてみると、だんだん変な話が出てきた。
技術的に一番問題なのは、制御棒が大地震のときにきちんと入るか、疑問な点だ。2.2秒以内に入らなければならない、という規定なのだが、小さい地震の場合はよいとして、基準地震を超えた場合でも大丈夫なのか。大飯原発は想定される揺れの1.8倍の地震まで大丈夫だとストレステストでは結論づけているが、実は1.8倍の地震が起きたときは、制御棒が挿入されるのに2.2秒を超えそうなことがわかった。
すると、計算の方法を変えて、基準地震では1.8秒以内でいく、という話を後から出してくる。
稼働させる、という結論に合うデータだけ出してくる。
ストレステストをする電力会社も、チェックする側も「原子力ムラ」なのだ。
大飯原発は加圧水型原子炉(PWR)なので、三菱重工が設計して作った。で、原子力安全基盤機構(JNES)にいる三菱重工のOBが審査している。
予想の地震の1.8倍でも余裕がある、と言うが、2倍4倍の地震が来る可能性もある。上限はわからないのだ。
(2)免震棟のないうちに再稼働しているのも、大飯原発3号機の大きな問題だ。
福島第一原発の場合、免震棟があって、保護されて壊れていなかったから、非常時でも一応司令が発せられていた。何人か技術者が詰めて、いろんな作業ができた。4年前の中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発の教訓で、3・11の半年前に作った。柏崎刈羽原発の教訓が活かされた唯一の例だ。免震棟がなかったら、全員が退去してしまって、もっとひどいことになっていた。
その免震棟が大飯原発にはない。3年後あたりに作るという計画を出したから、それでいことにして、再稼働させた。
ほかに、水密扉の問題、防潮堤の高さが足りない問題がある。
(3)聴取会で問題視される原発は、ほかに例えば志賀原発2号機。破砕帯があって、活断層ではないか、と渡辺満久・東洋大学教授が指摘している。また、ここは津波が来たら水密扉で対応することになっている。それが全部手動なのだ。人の訓練がどこまでできているか、という労務管理の問題がある。
(4)保安院や推進派は、口癖のように言う。安全というものは、ここまでやったから安全ということにはならない、安全は常に限りがない、と。
そして、だから完全でなくてもやる、ということにすり替える。分からないことがあっても、それは将来の問題だ、と引き延ばしてしまう。
ここまでやらねばならない、と分かっている最低ラインのこともやらないで再稼働している。
(5)2次テストは2011年12月までにやることになっていたが、各電力会社は全然やってない。運転再開に関係ないからだ。保安院も催促しなかった。
2次評価は、シビア・アクシデントの問題で、大きく壊れたときにどれぐらいの被害が及ぶのか、その時の対策がどうなのか・・・・非常に確率は小さくて滅多に起こらないが、起きたときにどういう対策をとっていくのか、を考える大切な場だった。これがほとんど進んでいない。先送りになっている。
(6)原発は原理的に危険だ。特に地震国の日本ではそうだ。一挙に止められなくても、非常に危険な原発から止めていくべきだ。
非常に危険な原発の基準として考えられるのは、地震・津波に弱い位置にあるとか、立地の問題だ。それと、老朽化した原発。1970年代に建てた原発は危ない。材料が悪いし、製造方法もよくない。圧力容器は板を薄くして、それを張り合わせる作り方だが、これがよくない。1980年代に入ると、最初から輪っかを作って、それを重ねる作り方で、その方法だと溶接の箇所が少ない。
設計的に欠陥のあるマークⅠ型も危険だ。だから、まずそういうものを止めることを決める、という方法はあると思う。
(7)危機感は意見聴取会でほとんど取り上げられない。原発は止めない、という前提で進行する。やる人間を替えないとオープンな議論にならない。だから、原発を続けるかどうかという話も、技術的に決まるわけではない。
地域ごとに危険を受けるかもしれない人たちがちゃんと判断する市民参加の体制を作らないかぎり、原発は動かすべきでない。
以上、井野博満(東京大学名誉教授)「1970年代に作られた原発はすべて廃炉にすべき」(「SIGHT」2012年秋号)に拠る。
【参考】
「【原発】玄海1号機の危険性 ~高い脆性遷移温度~」
「【原発】意見聴取会における結論誘導の手口~保安院~」
「【原発】再稼働の安全は誰が判断するのか ~専門家の偏向~」
「【震災】原発編集 - goo ブログ http://blog.goo.ne.jp/admin/newentry/
>ストレステストを再稼働に結びつけるな ~その理由~」
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