語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【保健】2兆円市場の「真実」 ~健康食品・サプリ~

2012年11月20日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)「週刊ダイヤモンド」今週号の特集は、「健康食品サプリのウソ・ホント」。
   Prologue 2兆円市場の「真実」
   Part1 健康食品・サプリの誤解
   Part2 消費者だましのテクニック
   Epilogue 健康食品と正しく付き合う
 ここでは「Prologue」を見る。

 (2)「食事制限嫌い、運動嫌いな方のダイエットをサポート」・・・・こういうTVのCMで有名になったサプリがある。あっという間に人気に火が付き、サプリ売上げランキングでは常に上位に入るヒット商品となった。
 しかし、このサプリ、発売当初から相次いで健康被害の訴が出ている。妙な動悸と熱っぽさ、激しい嘔吐と下痢、めまいと立ちくらみ。蕁麻疹が出た人も。症状の程度に違いはあれ、多くの人が通常の色ではない便が出たり、下痢症状を訴えたりしている。
 すべての利用者が発症したわけではなく、生活環境や食生活によっても異なるため、このサプリが原因だとは言い切れない。ただ、いずれのケースも飲むのをやめた途端、症状は改善した。
 
 (3)じつは、このサプリを販売している健康食品メーカーは、2003年にも、やはりダイエット系のサプリで同様の事態を引き起こした。
 このときは、メリロート(マメ科のハーブ)を原料としたサプリで、それが原因と疑われる肝機能障害の事例が2件、厚生労働省に報告されている。その際、社名まで公表されたが、因果関係が明らかではないとして、いまだに販売を継続している。
 今回のサプリもやはりハーブで、コレウス・フォルスコレリ(インド、タイ、ミャンマーなどに自生するシソ科の多年草)を原料としている。これから抽出されるフォルスコリンが脂肪の分解を促進する、という論文は存在する。ただ、コレウス・フォルスコレリの中のわずか10%にすぎず、それ以外の成分に関する分析は行われていないままだ。
 このメーカーは、臨床実験の結果を米国生薬学界で発表している。しかし、この学界は厳しい審査はなく、誰でも発表できる。発表したからといって、安全だとは言い切れないのだ。

 (4)サプリなどを含む健康食品市場は、今や2兆円規模に拡大している。1991年から特定保健用食品(トクホ制度)が始まり、市場は一気に拡大した。2008年からメタボ健診の義務化が始まったことも追い風になって成長してきた。
 6割近くの消費者が現在利用し、半数近くが2種類以上を併用、健康食品に年間12,000円以上支出している人は実に4割に上っている。インターネットの普及により、より身近な存在になったことが大きい。団塊世代が年齢を重ね、健康をより意識し始めたことも後押ししている。
 市場の拡大に伴って、カネの匂いを敏感に嗅ぎつけて参入する企業や業者は後を絶たない。医療などに比べて参入障壁が格段に低いこともあって、中小を含めれば把握できないほどの数だ。
 最近では、食品メーカーや飲料メーカー大手も相次いで健康食品事業に乗り足、富士フィルムホールディングスなどの異業種、小林製薬などの医薬品メーカーも殴り込みをかけている。
 とはいえ、「期待したほどの効果がなかった」とアンケートに答える消費者が8割以上にのぼっている。当然だ。健康食品は薬ではなく、あくまでも食品だからだ。

 (5)気休めで買っている人が多いにせよ、気休めとして利用するには余りにも高い代償を払わなければならなくなった健康食品も少なくない。
 健康食品が原因と見られる健康被害の事例を厚生労働省が発表している。
 「雪茶(同一名称4商品)」「メリロート」「ウェイト・ダウン、アミノミックス」「脂散流糖・痩健」「花紅柳緑茶」「細麗美身」「繊之素膠丸」・・・・いずれも肝機能障害を引き起こした健康食品だ。「あまめしば」は、呼吸機能障害・肺機能障害を引き起こした。
 これらは、すべてダイエット系の食品で、ほとんどが原材料はほとんどがハーブだ。肝機能障害のほか、蕁麻疹、下痢、腹痛、嘔吐を伴っているものがほとんど。中には「繊之素膠丸」のように劇症肝炎で死亡した事例もある。
 これらには医薬品成分が入っていない。しかし、いわゆる「健康食品」の中には、個人輸入の普及により国内に大量に流入している「無承認無許可医薬品」もあり、これも含めると被害はさらに拡大する。被害者が3桁に上ったものがいくつもある。食品として流通していながら、医薬品成分が検出されている(薬事法違反)。

 (6)薬局やドラッグストアなどで当たり前のように販売しているメジャーな商品の中にも危ない商品はある。
 <例>「痩せにくい人への燃焼成分を補給」などとうたっているα-リポ酸は、人によっては低血糖状態に陥らせ、冷や汗や手足の震えといった症状を惹起させることもある(厚生労働省が警鐘を鳴らしている)。

 以上、田島靖久/津本朋子/松本裕樹/脇田まや(本誌)「健康食品サプリのウソ・ホント」(「週刊ダイヤモンド」2012年11月24日号)に拠る。
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