(1)将来の不安を感じている人は少ない。
日本のように「長生きが心配」で高齢者が貯蓄を抱えているようなことはまずない。社会保障が手厚いため、貯蓄は死ぬまでに使い切って楽しまなければ意味がないそうだ。税率は高いが、その分見返りがあるため「国に対して貯蓄している感覚」だという。
最近の難民受け入れ急増が社会保障システムに影を落としている面もあるが、十分な年金をもらえなくなると心配する人は現時点では少ない。
スウェーデンの中央銀行、リスバンクはマイナス金利政策を実施している。しかし、日本のようにそれによる預金率低下が不安を招き、消費マインドが大幅に悪化する・・・・といった現象は起きていない。
(2)フィンテック(金融と技術をを掛け合わせた造語)の普及を背景としたキャッシュレス化が世界最速といわれるほど進んでいる。
少額の支払いでもクレジットカードが嫌がられることはない。逆に、カードかスマートフォンの決済アプリを持っていないと困るケースが出てくる。小売店は法律上、顧客の現金での支払いを拒むことができるようになっているからだ。地下鉄の駅では乗車券を現金で買うことはできない。
スウェーデンの国民的ポップスター、ABBAの博物館には、入場券売り場や土産物売り場に「支払いはカードしか受け付けません」との表示がある。ビョルン・ウルヴァース氏(ABBAのメンバー)は、息子が強盗にあったことをきっかけに現金は犯罪を生むと考えるようになった。
「われわれは紙幣やコインは取り扱いません。なぜなら、訪問者にとってもスタッフにとっても、キャッシュレスはより安全で、より効率的だと信じているからです」【ウルヴァース氏】
金融機関もキャッシュレス化を積極的に進めている。ある大手銀行では300以上の国内店舗のうち、窓口で現金を取り扱っているのは今や数店舗しかない。ATMは稼働しているが、設置数は急減。紙幣が在庫切れになっていることもよくある。
(3)ただし、急速なキャッシュレス化には、フィンテックを使いこなせないお年寄りから激しい批判が湧き起こっている。また、リスクバンクが進めている偽札防止のための新紙幣への切り替えにおいてもトラブルが発生している。
6月末で従来の20、50、1,000クローナ札は無効となった(8月末までは銀行で預金できる)。旧紙幣を持つ市民は銀行に行く必要があったが、(2)のとおり現金を取り扱う店舗は少ない。長蛇の列が発生し、旧20クローナ札の6割は交換されないまま市中流通が停止されてしまった。
(4)スウェーデンの金融機関がキャッシュレス化を進める最大の動機はコスト削減にある。現金管理の費用は無視できない額で、店舗に現金がなくなれば銀行強盗も来ない。警備費も劇的に減らせる。
スウェーデンの銀行はマイナス金利政策で打撃を受けつつも、比較的収益を確保している。それは顧客サービスを大胆に切り捨てることで成り立っている部分がある。
黒田東彦・日本銀行総裁は「日本は欧州に比べてマイナス金利の引き下げ余地がある」とたびたび言及しているが、状況に大きな違いがある。
□加藤出(東短リサーチ代表取締役社長)「「現金お断り」のスウェーデン/背景にマイナス金利の余波も」(「週刊ダイヤモンド」2016年9月3日号)
↓クリック、プリーズ。↓
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日本のように「長生きが心配」で高齢者が貯蓄を抱えているようなことはまずない。社会保障が手厚いため、貯蓄は死ぬまでに使い切って楽しまなければ意味がないそうだ。税率は高いが、その分見返りがあるため「国に対して貯蓄している感覚」だという。
最近の難民受け入れ急増が社会保障システムに影を落としている面もあるが、十分な年金をもらえなくなると心配する人は現時点では少ない。
スウェーデンの中央銀行、リスバンクはマイナス金利政策を実施している。しかし、日本のようにそれによる預金率低下が不安を招き、消費マインドが大幅に悪化する・・・・といった現象は起きていない。
(2)フィンテック(金融と技術をを掛け合わせた造語)の普及を背景としたキャッシュレス化が世界最速といわれるほど進んでいる。
少額の支払いでもクレジットカードが嫌がられることはない。逆に、カードかスマートフォンの決済アプリを持っていないと困るケースが出てくる。小売店は法律上、顧客の現金での支払いを拒むことができるようになっているからだ。地下鉄の駅では乗車券を現金で買うことはできない。
スウェーデンの国民的ポップスター、ABBAの博物館には、入場券売り場や土産物売り場に「支払いはカードしか受け付けません」との表示がある。ビョルン・ウルヴァース氏(ABBAのメンバー)は、息子が強盗にあったことをきっかけに現金は犯罪を生むと考えるようになった。
「われわれは紙幣やコインは取り扱いません。なぜなら、訪問者にとってもスタッフにとっても、キャッシュレスはより安全で、より効率的だと信じているからです」【ウルヴァース氏】
金融機関もキャッシュレス化を積極的に進めている。ある大手銀行では300以上の国内店舗のうち、窓口で現金を取り扱っているのは今や数店舗しかない。ATMは稼働しているが、設置数は急減。紙幣が在庫切れになっていることもよくある。
(3)ただし、急速なキャッシュレス化には、フィンテックを使いこなせないお年寄りから激しい批判が湧き起こっている。また、リスクバンクが進めている偽札防止のための新紙幣への切り替えにおいてもトラブルが発生している。
6月末で従来の20、50、1,000クローナ札は無効となった(8月末までは銀行で預金できる)。旧紙幣を持つ市民は銀行に行く必要があったが、(2)のとおり現金を取り扱う店舗は少ない。長蛇の列が発生し、旧20クローナ札の6割は交換されないまま市中流通が停止されてしまった。
(4)スウェーデンの金融機関がキャッシュレス化を進める最大の動機はコスト削減にある。現金管理の費用は無視できない額で、店舗に現金がなくなれば銀行強盗も来ない。警備費も劇的に減らせる。
スウェーデンの銀行はマイナス金利政策で打撃を受けつつも、比較的収益を確保している。それは顧客サービスを大胆に切り捨てることで成り立っている部分がある。
黒田東彦・日本銀行総裁は「日本は欧州に比べてマイナス金利の引き下げ余地がある」とたびたび言及しているが、状況に大きな違いがある。
□加藤出(東短リサーチ代表取締役社長)「「現金お断り」のスウェーデン/背景にマイナス金利の余波も」(「週刊ダイヤモンド」2016年9月3日号)
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