(1)8月31日、小池百合子・東京都知事は、
安全性への懸念
巨額かつ不透明な費用の増加
情報公開の不足
の三つの疑問点をあげ、築地市場の11月に予定していた豊洲移転の延期を発表した。そして「市場問題プロジェクトチーム」を設置し、2014年11月に2年間に9回の予定で開始した地下水モニタリングの残る2回(2016年10月と17年1月)の結果で安全性を確認し、新たな移転時期を決めると述べた。
(2)土壌汚染対策法は、
「地下水汚染が生じていない状態が2年間継続すること」
で「汚染区域」(形質変更時要届出区域)の指定が解除できるとする。
都環境局はしかし、「2年間のモニタリングに法的な意味はまったくない」と言い切った。それは、都中央卸市場が汚染を東京ガスの操業由来と元々あったヒ素など自然由来に分け、操業由来は掘削・除去するが、自然由来は除去せず、盛り土【注1】【注2】などで封じ込めただけで残っているため、これまで7回のモニタリング結果は環境基準を下回っているが、残る2回が下回っても、土壌汚染対策法により、「汚染区域」は解除できないからだ。市場は、地下水で環境基準の10倍以上は操業由来、環境基準を超えるが10倍以下は自然由来と区別している。
(3)だが、ならば一体何のためのモニタリングなのか。
環境局は、「土壌汚染対策法上の汚染区域の台帳を作る事務手続きのため」と答えた。
8月16日に小池知事が築地・豊洲両市場を視察した後のぶら下がり取材で、
Q(永尾俊彦):豊洲は土壌汚染対策法上の「汚染区域」になっていて、安全宣言をするには「汚染区域」を解除しなければならないが、どう考えるか。
A(小池知事):モニタリングで都民も私自身も納得できることが必要。さらに様々な調査を確認し、総合的に判断したい。
「汚染区域」は残る2回のモニタリングで環境基準を下回っても解除できないという重要な事実が知事に報告されていないのではないか。
(4)問題点。
自然由来・操業由来の区別について「東京ガスはヒ素を触媒として使っていたし、ヒ素の汚染は局所的に表層から地下7メートルまで連続しているので操業由来もあります」【畑明郎・元日本環境学会会長/元大阪市立大学教授】」と指摘した。
「都は、操業由来の汚染は全部除去するので操業由来の汚染は区域指定を解除すると議会答弁をしています。今になって2年間モニタリングに法的意味はないと言うのは汚染の除去は目指していないと宣言したのも同然で、都民との約束の重大な違反です」【豊洲の汚染問題を追及している水谷和子・一級建築士】
(5)8月31日、都の新市場整備部は、豊洲市場施設内の空気のベンゼンなどの臨時測定結果を発表した。
今回・・・・最高0.0013mg/立米(環境基準0.003/立米の4割)
前回(6月発表)・・・・最高0.0019mg/立米(同6割)
「都の測定が信頼できるのか疑問です。私が調査を続けているイタイイタイ病では加害企業と被害者団体がデータのクロスチェックをやっているが、豊洲でも第三者のクロスチェックを認めるべきです」【畑氏】
(6)都は、「環境基準とは70年間毎日15立米の空気を吸い続けても健康に影響がない基準」と説明する。
だが、有害化学物質対策に詳しい田坂興亜・元国際基督教大学教授は、批判する。「環境基準とは、有害物質の毒性について絶対超えてはダメという基準で、下回っているから安全とは言えません。環境基準の4割、6割とはとんでもない値です。百歩譲ってどうしても豊洲に市場を開設するなら、有害物質濃度はゼロが望ましいわけですから、恒常的に環境基準のせいぜい1%以下にすべきです。その努力をしないで『健康に影響がない』などというのは詭弁です」
「汚染区域」は解除できず、環境基準からも疑問符がつく。小池知事は豊洲では「安全宣言」を出せない。
【注1】<土壌汚染対策の「盛り土」がなされていなかったことが分かり、小池百合子・東京都知事が10日、経緯や安全性を検証する考えを示した>【「小池知事、安全性検証へ 豊洲市場の施設、盛り土せず」(朝日新聞デジタル 2016年9月11日)】
【注2】<都が有識者の専門家会議が盛り土による対策を提言した直後の2008年の時点で、市場施設の地下を活用する案を検討していたことが分かった>【「「盛り土」提言受けた直後に地下活用案を検討 豊洲市場」(朝日新聞デジタル 2016年9月13日)
□永尾俊彦(ルポライター)「豊洲では「安全宣言」出せない 「汚染区域」は解除できず、環境基準からも疑問符」(「週刊金曜日」 2016年9月9日)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【豊洲】市場移転:宇都宮健児が小池百合子・都知事の決断を分析」
「【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク」
「【五輪】が都民の生活を圧迫する ~汚染市場・アパート立ち退き~」
「【食】移転先の土壌、ヒ素汚染残して開場 ~築地市場~」
「【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~」
安全性への懸念
巨額かつ不透明な費用の増加
情報公開の不足
の三つの疑問点をあげ、築地市場の11月に予定していた豊洲移転の延期を発表した。そして「市場問題プロジェクトチーム」を設置し、2014年11月に2年間に9回の予定で開始した地下水モニタリングの残る2回(2016年10月と17年1月)の結果で安全性を確認し、新たな移転時期を決めると述べた。
(2)土壌汚染対策法は、
「地下水汚染が生じていない状態が2年間継続すること」
で「汚染区域」(形質変更時要届出区域)の指定が解除できるとする。
都環境局はしかし、「2年間のモニタリングに法的な意味はまったくない」と言い切った。それは、都中央卸市場が汚染を東京ガスの操業由来と元々あったヒ素など自然由来に分け、操業由来は掘削・除去するが、自然由来は除去せず、盛り土【注1】【注2】などで封じ込めただけで残っているため、これまで7回のモニタリング結果は環境基準を下回っているが、残る2回が下回っても、土壌汚染対策法により、「汚染区域」は解除できないからだ。市場は、地下水で環境基準の10倍以上は操業由来、環境基準を超えるが10倍以下は自然由来と区別している。
(3)だが、ならば一体何のためのモニタリングなのか。
環境局は、「土壌汚染対策法上の汚染区域の台帳を作る事務手続きのため」と答えた。
8月16日に小池知事が築地・豊洲両市場を視察した後のぶら下がり取材で、
Q(永尾俊彦):豊洲は土壌汚染対策法上の「汚染区域」になっていて、安全宣言をするには「汚染区域」を解除しなければならないが、どう考えるか。
A(小池知事):モニタリングで都民も私自身も納得できることが必要。さらに様々な調査を確認し、総合的に判断したい。
「汚染区域」は残る2回のモニタリングで環境基準を下回っても解除できないという重要な事実が知事に報告されていないのではないか。
(4)問題点。
自然由来・操業由来の区別について「東京ガスはヒ素を触媒として使っていたし、ヒ素の汚染は局所的に表層から地下7メートルまで連続しているので操業由来もあります」【畑明郎・元日本環境学会会長/元大阪市立大学教授】」と指摘した。
「都は、操業由来の汚染は全部除去するので操業由来の汚染は区域指定を解除すると議会答弁をしています。今になって2年間モニタリングに法的意味はないと言うのは汚染の除去は目指していないと宣言したのも同然で、都民との約束の重大な違反です」【豊洲の汚染問題を追及している水谷和子・一級建築士】
(5)8月31日、都の新市場整備部は、豊洲市場施設内の空気のベンゼンなどの臨時測定結果を発表した。
今回・・・・最高0.0013mg/立米(環境基準0.003/立米の4割)
前回(6月発表)・・・・最高0.0019mg/立米(同6割)
「都の測定が信頼できるのか疑問です。私が調査を続けているイタイイタイ病では加害企業と被害者団体がデータのクロスチェックをやっているが、豊洲でも第三者のクロスチェックを認めるべきです」【畑氏】
(6)都は、「環境基準とは70年間毎日15立米の空気を吸い続けても健康に影響がない基準」と説明する。
だが、有害化学物質対策に詳しい田坂興亜・元国際基督教大学教授は、批判する。「環境基準とは、有害物質の毒性について絶対超えてはダメという基準で、下回っているから安全とは言えません。環境基準の4割、6割とはとんでもない値です。百歩譲ってどうしても豊洲に市場を開設するなら、有害物質濃度はゼロが望ましいわけですから、恒常的に環境基準のせいぜい1%以下にすべきです。その努力をしないで『健康に影響がない』などというのは詭弁です」
「汚染区域」は解除できず、環境基準からも疑問符がつく。小池知事は豊洲では「安全宣言」を出せない。
【注1】<土壌汚染対策の「盛り土」がなされていなかったことが分かり、小池百合子・東京都知事が10日、経緯や安全性を検証する考えを示した>【「小池知事、安全性検証へ 豊洲市場の施設、盛り土せず」(朝日新聞デジタル 2016年9月11日)】
【注2】<都が有識者の専門家会議が盛り土による対策を提言した直後の2008年の時点で、市場施設の地下を活用する案を検討していたことが分かった>【「「盛り土」提言受けた直後に地下活用案を検討 豊洲市場」(朝日新聞デジタル 2016年9月13日)
□永尾俊彦(ルポライター)「豊洲では「安全宣言」出せない 「汚染区域」は解除できず、環境基準からも疑問符」(「週刊金曜日」 2016年9月9日)
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【参考】
「【豊洲】市場移転:宇都宮健児が小池百合子・都知事の決断を分析」
「【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク」
「【五輪】が都民の生活を圧迫する ~汚染市場・アパート立ち退き~」
「【食】移転先の土壌、ヒ素汚染残して開場 ~築地市場~」
「【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~」