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新潟中野山小1・土足で机の上を |
歴史の変わり目の、
最初の日に出会った。
日本教育技術学会主催/新潟市立中野山小学校
2006年9月30日
大森修氏が中野山小の校長である。
新潟、中野山小の体育館に、沖縄、北海道、全国から400人の教員が集まった。
なぜ、新潟なのか?
なぜ、中野山小なのか?
おそらく、400人が同じことを思ったはずだ。
「自分は、歴史の変わり目に出会った。」
おおげさな、と思われるだろう。
けれども、ぼくにとって例えれば、
23年前に向山洋一氏に出会ったとき以来人生二度目の衝撃であった。
何が?
なぜ?
伝わるかどうかはわからないが、説明に挑む。
中野山小学校は、二年前荒れていた。
小学一年生が、土足で、教室の机の上を走り回っていたという。
小学一年生の授業が成立していなかった。
クラスの中のボスのような男子が、
授業中手を挙げたクラスの子を脅してこう言ったそうだ。
「おい、おまえ、てをあげるな。」
間違いないよう繰り返すが、小学一年生である。
ぼくは、三年生の授業を参観した。
三年二組の児童は34人いた。
授業前の十分間、担任の○先生が漢字ビンゴで遊んだ。
児童にます目プリントを配った。
児童は○先生の出すフラッシュカードの読みを次々とます目に書いた。
二十ほどのます目がいっぱいになると、
もう一度見せられたカードの読みを丸で囲んだ。
書くときは音もなかった。
丸がそろえば、
「リーチー!」
「ビンゴー!」
と声が上がった。
十分間、机を囲んだ五十人を超す大人に気を取られる子どもは一人もいなかった。
それが言いすぎなら、
窓から三列目の女の子が、ときどき珍しそうに大人の顔を見回した。
それだけだった。
午前9時45分のチャイムが鳴り、
当然あいさつの号令などなく○先生が言った。
「教科書を出しなさい。」
児童は机の中から、ドンドンあっという間に教科書を出す。
「教科書が出た人は、姿勢で合図ちょうだい」
ドンドンあっという間に教科書を出した小学三年生は、
深く腰かけなおし背筋を伸ばして先生を見る。
『ちいちゃんのかげおくり』の音読が始まる。
児童は、34人間違いなく全員が教科書を両手で持ち、教科書はピンと立った。
「追い読み」とは、教師が読んだ文をそのまま子どもが追って読む音読の方法だ。
○先生は一文ずつ読んだ。
「一文ずつ」の追い読み
にどれほど指導力が必要か、国語教師にはわかる。
子どもは大変なスピードで読んだ。
続く児童の声はピッタリそろった。
響き渡る声が出た。
声には迫力さえこもっていた。
○先生が、
「○○さん、口がとってもよくあいてる。」
ひと言でかすかに落ちかけた声の力が元に戻る。
「うしろの子の声もよーくひびいてきます。」
激励で、追い読みの声が瞬間的に変わる。
音読は七分間続いた。
二年前、土足で机の上を走った一年生が、
「背筋を伸ばし」
「一文ずつ」
「大変なスピードで」
「声をそろえて」
教科書を読んだのである。