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高校国語指導案・実習生のこと1「実習生が相談に来た」
2013-02-14reup
作成日2011年06月
教育実習生の研究授業が、翌週の月曜日から始まるという土曜。
ある事情から土曜補習が中止になった。
ぼくは知らずに出勤した。
仕方ないので期末試験問題を作っていた。
すると、実習生C女さんが、とことこ歩いてぼくの席にやってきた。
職員室にはほとんど誰もいない。
実習生は研究授業に備えて、4人で「模擬授業」をしに来ていたらしい。
「模擬授業」というものも、これだけ普通のことになった。
素晴らしいことだ。
4人の中でたった一人、C女さんが近づいてきて、ああ、相談だなとすぐわかった。
C女さんは完成した指導案を一部持っていて、
「指導案ができました。見てください」
というように言った。
座ってもらって、三十分ほどアドバイスした。
一つは、
「どの部分が授業の中心なのか。これだけはしたいというのはどこなのか」
ということだった。
もう一つは
「言葉を確定しろ」
ということだった。
指導案には例によって「考えさせる」「着目させる」など意味不明の言葉が並んでいる。
「発問は、作業指示とセットにならなければならない」
「研究授業だから仕方ないが、本当は台詞を別に作るべきだ」
「この、着目させる、ところで何というのか?」
C女さんは答えられない。
別に持ってきた準備ノートにはびっしりと「板書計画」が書いてある。
実習生の準備というのは「板書指導」中心になされるのだろうか?
ぼくは実習生にそうしたことがない。
とにかく、研究授業は「あさっての月曜日」の「一時間目」だ。
色々する時間はない。
赤えんぴつで、指導案にどんどん線を引いたあと、まとめを冒頭に書きなおした。
①中心発問までたどりつくこと。
②何を言うのか台詞を決めて書く。
③中心発問に届かないようならその前を削る。
なぐり書きだ。
C女さんは難しい顔をして立って、実習生が集まっているだろう教室へ戻った。
ぼくは背筋が寒くなるほど感激していた。
一人で行動できる人間をぼくは尊敬する。
ぼくはただの非常勤講師で、実習生には塵ほどの責任も求められていない。
普通、実習生は非常勤講師の授業を見に来たりしないし、相談に来るなどあり得ない。
だが、彼女は来た。
一人で来た。
勇気のいることだ。
それで、帰ってすぐ手紙を書き、資料をCDにコピーした。
土曜日と日曜日ずっと、心がザワザワしていた。
(このことが、結果的に、月曜日の中学1年『さつき』クライマックス討論の授業を生んだ。
やらねばと思ってしまったようだ。背中を押されたのだ、きっと)
以下の文章は「私信」である。
だが、まあ、これを公開する日は実習は終わっているし、
いわば著作権は僕・傭兵にあるのだからいいだろう。
とても価値のある記録なのだから。
高校国語指導案・実習生のこと
1「実習生が相談に来た」
2「国語科実習生Cさんへの手紙」
3「実習生への授業批評1」C女さん
4「実習生への授業批評2」D男さん
5「実習生への授業批評3」E女さん
高校国語指導案・実習生のこと1「実習生が相談に来た」
2013-02-14reup
作成日2011年06月
教育実習生の研究授業が、翌週の月曜日から始まるという土曜。
ある事情から土曜補習が中止になった。
ぼくは知らずに出勤した。
仕方ないので期末試験問題を作っていた。
すると、実習生C女さんが、とことこ歩いてぼくの席にやってきた。
職員室にはほとんど誰もいない。
実習生は研究授業に備えて、4人で「模擬授業」をしに来ていたらしい。
「模擬授業」というものも、これだけ普通のことになった。
素晴らしいことだ。
4人の中でたった一人、C女さんが近づいてきて、ああ、相談だなとすぐわかった。
C女さんは完成した指導案を一部持っていて、
「指導案ができました。見てください」
というように言った。
座ってもらって、三十分ほどアドバイスした。
一つは、
「どの部分が授業の中心なのか。これだけはしたいというのはどこなのか」
ということだった。
もう一つは
「言葉を確定しろ」
ということだった。
指導案には例によって「考えさせる」「着目させる」など意味不明の言葉が並んでいる。
「発問は、作業指示とセットにならなければならない」
「研究授業だから仕方ないが、本当は台詞を別に作るべきだ」
「この、着目させる、ところで何というのか?」
C女さんは答えられない。
別に持ってきた準備ノートにはびっしりと「板書計画」が書いてある。
実習生の準備というのは「板書指導」中心になされるのだろうか?
ぼくは実習生にそうしたことがない。
とにかく、研究授業は「あさっての月曜日」の「一時間目」だ。
色々する時間はない。
赤えんぴつで、指導案にどんどん線を引いたあと、まとめを冒頭に書きなおした。
①中心発問までたどりつくこと。
②何を言うのか台詞を決めて書く。
③中心発問に届かないようならその前を削る。
なぐり書きだ。
C女さんは難しい顔をして立って、実習生が集まっているだろう教室へ戻った。
ぼくは背筋が寒くなるほど感激していた。
一人で行動できる人間をぼくは尊敬する。
ぼくはただの非常勤講師で、実習生には塵ほどの責任も求められていない。
普通、実習生は非常勤講師の授業を見に来たりしないし、相談に来るなどあり得ない。
だが、彼女は来た。
一人で来た。
勇気のいることだ。
それで、帰ってすぐ手紙を書き、資料をCDにコピーした。
土曜日と日曜日ずっと、心がザワザワしていた。
(このことが、結果的に、月曜日の中学1年『さつき』クライマックス討論の授業を生んだ。
やらねばと思ってしまったようだ。背中を押されたのだ、きっと)
以下の文章は「私信」である。
だが、まあ、これを公開する日は実習は終わっているし、
いわば著作権は僕・傭兵にあるのだからいいだろう。
とても価値のある記録なのだから。
高校国語指導案・実習生のこと
1「実習生が相談に来た」
2「国語科実習生Cさんへの手紙」
3「実習生への授業批評1」C女さん
4「実習生への授業批評2」D男さん
5「実習生への授業批評3」E女さん