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どんどん漢字を書く力が落ちる理由
2024-09-03掲載 2024-06-06記述
46歳の時に公立の中学1年生を担当した。
現在勤務している公立中学校の生徒と同じように、授業が始まるときには、全員漢字ワーク・プリントが開いてあった。
その漢字ワークには、「なぞり書き」の部分がなかった。それで、手本の小さな漢字をなぞらせた。そして、コンビで採点させた。
学年に一人、重い障害を持つ男子がいた。上手に歩けなかった。字を書くのも苦手で、漢字をなぞるのは、とても難しい。
しかも、彼は翌日になると、担任の先生の名前を忘れてしまう。僕の名前も明日になると忘れてしまう。
僕は4月に、心に決めた。
「今年1年間で、一度でいいから、漢字ドリルで満点を取らせよう」
満点と言っても、10点か12点だ。だが、その満点は彼にとっては、1000点、2000点の価値があるはずだ。
彼は毎日、休み時間のうちから、その日の漢字を「指書き」で練習していた。そして、僕が教室に行くと、ヒマワリのような笑顔で
「練習しました」
と言った。
彼は書くのがゆっくりで、文字も読みにくい。だから、毎時間僕が採点した。コンビの生徒には、自分で採点するよう頼んだ。
4月が過ぎ、5月のある日、彼は10点満点を取った。
僕は丸をつけながら、見まちがいがないかよく見てから、
「○○くん。満点だよ」
と言った。胸がいっぱいになって、それ以上何も言えなかった。彼の手を両手で握りしめた。
50歳の時に、私立の中学1年生を担当した。
同じように、指書き・なぞり書き・写し書きを毎回やった。
ある日、小柄な男子が質問に来た。
「どうして、先生の授業は、早く終わるんですか?」
どういう意味だろう。僕はそのとき、うまく説明できなかった。
夏が過ぎ、秋になって、その男子のお母さんが、僕に手紙を渡しに来た。わざわざ学校に来て休み時間の教室に来てくれたのだ。
手紙にはこんなことが書いてあった。
【息子は、小学校の時、漢字テストはいつも0点でした。
まったく漢字が書けませんでした。
国語以外のどの授業でも、時々頭痛が起きて、帰宅することがありました。
ところが、先生の授業になって、漢字がだんだん書けるようになりました。
最近はいつも満点です。
家に帰ると、「カエルの授業はああだ、こうだ」と色々話します。
失礼ですが、先生のことを息子はカエルと呼んでいます。
「授業を全部カエルがやってくれたらいいのになあ」
と言っています。
母親の私には、漢字などがなかなか覚えられない特徴があり、息子も同じ状態らしいです。
この学校に入学させるとき
「息子は勉強が苦手なタイプだが、きちんと見てもらえるか」
と質問しました。校長先生は
「うちの学校には専門家がいるから、大丈夫だ」
と言いました。
けれども、先生の中に専門家は誰もいませんでした。
先生のように知識のあるかたに授業が当たって、ありがたいです】
漢字が全くできない生徒と保護者にとって、漢字を書けるようになることは、大きな喜びだ。
僕は40歳過ぎてやっとまともな漢字指導ができるようになった。
小学校・中学校で、授業の中で毎回5分ずつ漢字指導をする。
それだけで、漢字は宿題の悪習の、何倍も生徒の力がつく。
そうでなければ、上の二人のような生徒は決して生まれない。
どんどん漢字を書く力が落ちる理由
2024-09-03掲載 2024-06-06記述
46歳の時に公立の中学1年生を担当した。
現在勤務している公立中学校の生徒と同じように、授業が始まるときには、全員漢字ワーク・プリントが開いてあった。
その漢字ワークには、「なぞり書き」の部分がなかった。それで、手本の小さな漢字をなぞらせた。そして、コンビで採点させた。
学年に一人、重い障害を持つ男子がいた。上手に歩けなかった。字を書くのも苦手で、漢字をなぞるのは、とても難しい。
しかも、彼は翌日になると、担任の先生の名前を忘れてしまう。僕の名前も明日になると忘れてしまう。
僕は4月に、心に決めた。
「今年1年間で、一度でいいから、漢字ドリルで満点を取らせよう」
満点と言っても、10点か12点だ。だが、その満点は彼にとっては、1000点、2000点の価値があるはずだ。
彼は毎日、休み時間のうちから、その日の漢字を「指書き」で練習していた。そして、僕が教室に行くと、ヒマワリのような笑顔で
「練習しました」
と言った。
彼は書くのがゆっくりで、文字も読みにくい。だから、毎時間僕が採点した。コンビの生徒には、自分で採点するよう頼んだ。
4月が過ぎ、5月のある日、彼は10点満点を取った。
僕は丸をつけながら、見まちがいがないかよく見てから、
「○○くん。満点だよ」
と言った。胸がいっぱいになって、それ以上何も言えなかった。彼の手を両手で握りしめた。
50歳の時に、私立の中学1年生を担当した。
同じように、指書き・なぞり書き・写し書きを毎回やった。
ある日、小柄な男子が質問に来た。
「どうして、先生の授業は、早く終わるんですか?」
どういう意味だろう。僕はそのとき、うまく説明できなかった。
夏が過ぎ、秋になって、その男子のお母さんが、僕に手紙を渡しに来た。わざわざ学校に来て休み時間の教室に来てくれたのだ。
手紙にはこんなことが書いてあった。
【息子は、小学校の時、漢字テストはいつも0点でした。
まったく漢字が書けませんでした。
国語以外のどの授業でも、時々頭痛が起きて、帰宅することがありました。
ところが、先生の授業になって、漢字がだんだん書けるようになりました。
最近はいつも満点です。
家に帰ると、「カエルの授業はああだ、こうだ」と色々話します。
失礼ですが、先生のことを息子はカエルと呼んでいます。
「授業を全部カエルがやってくれたらいいのになあ」
と言っています。
母親の私には、漢字などがなかなか覚えられない特徴があり、息子も同じ状態らしいです。
この学校に入学させるとき
「息子は勉強が苦手なタイプだが、きちんと見てもらえるか」
と質問しました。校長先生は
「うちの学校には専門家がいるから、大丈夫だ」
と言いました。
けれども、先生の中に専門家は誰もいませんでした。
先生のように知識のあるかたに授業が当たって、ありがたいです】
漢字が全くできない生徒と保護者にとって、漢字を書けるようになることは、大きな喜びだ。
僕は40歳過ぎてやっとまともな漢字指導ができるようになった。
小学校・中学校で、授業の中で毎回5分ずつ漢字指導をする。
それだけで、漢字は宿題の悪習の、何倍も生徒の力がつく。
そうでなければ、上の二人のような生徒は決して生まれない。