JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
奈良交通 八木営業所発行 110円片道乗車券
昭和62年8月に奈良交通八木営業所で発行された、大和八木駅前から110円の片道乗車券です。
緑色奈良交通自社地紋の千切り金額式半硬券となっています。
発停留場欄は記入式となっており、「八木営業所」という日付印によって表記されていますが、厳密には「大和八木駅から」ではありませんが、大和八木駅前の案内所で購入していますので、実態として「大和八木駅から」ということになろうかと思います。
金額についても記入式となっていてゴム印で捺印されていますが、仔細に見ると右端部分も点線で切り取られたようになっており、発売金額を計上するための報告片があったものと推測されます。
ですので、この券は常備券ではなく、金額式補充券のような位置づけの券であったものと思われます。
裏面です。
何も印刷されていませんが、料金機対策として、表面と同じ金額印が捺印されています。
伊豆急行 伊豆急下田駅発行 おくいず1号急行券・指定席券
昭和48年3月に伊豆急行線伊豆急下田駅で発行された、急行おくいず1号の急行券・指定席券です。
緑色こくてつ特種用地紋の縦型共通指定券用紙で発券されており、発券された時期からマルス104が使用されたものと思われます。
御紹介の券は「急行券・指定席券」で料金券のみでの発券となっていますが、この頃のマルス端末は乗車券のみの発券は出来ず、基本的には料金券を発券するもので、料金券と同区間の乗車券に限り、同一発売をすることが可能でした。その際、料金部分の頭に、合算(和)を示すものと思われますが「ワ」という表記が印字されます。
発券には活字棒と呼ばれる発着駅名および列車名のゴム印の付いた棒を端末に差し込み、発着区間および列車名は活字棒のゴム印が直接捺印されていました。
乗車日は日付しか印字されず、発時刻は出札掛員が端末の表示を手書きで写し取っていました。また、急行券などの券種名が自動的に印字される機能は無く、ゴム印を捺印のうえ発券します。
この券はグリーン車用として発券されていますので、種別欄に「A」と印字されています。
裏面です。ご案内文の下には券片の番号が印刷されており、この番号で用紙を管理していたようです。
おくいず号は東京駅から熱海・伊東を経由して伊豆急下田に至る連絡急行列車で、昭和40年あまぎ号に統合される形で一旦廃止されていますが、昭和43年に全車指定席の急行伊豆号に対し、一部自由席を連結した列車として復活しています。しかし、昭和51年には急行伊豆号にも自由席を連結するようになり、再度統合される形で廃止されてしまっています。
この券は伊豆急線の伊豆急下田駅で発券されていますが、同駅には早くから国鉄のマルス端末が設備されており、硬券とマルス券が併用されていたようです。
(伊豆急の検札痕)
乗車時には伊豆急線内を走行しているうちに検札が回って来ており、伊豆急の車掌による旧社章をかたどった検札痕が確認できます。
銚子電気鉄道 犬吠から銚子ゆき 片道乗車券
平成9年3月に銚子電気鉄道犬吠駅で発行された、銚子駅ゆきの片道乗車券です。
桃色JPRてつどう地紋のB型一般式大人・小児用券で、山口証券印刷で調製されたものです。
同社では平成になっても改札鋏が使用されていましたが、この頃には改札スタンパーが使用されています。
着駅である銚子駅はJR東日本が管理する共同使用駅で現在では自動改札が導入されておりますが、当時はまだ自動改札は導入されておらず、列車が到着するとJRの改札掛員が改札口に立っていましたが、それが「必ず」ということは無かったようで、この時は改札口に掛員の姿はなく、フリーパスで使用済券を入手することができましたし、改札口には他の旅客が置いて行ったと思われる数枚の着札が放置されていました。
犬飼駅発行 普通入場券
今年の干支に因んで、今回も「犬」のつく駅の券を御紹介致しましょう。
昭和59年3月に豊肥本線犬飼駅で発行された普通入場券です。
白色無地紋のB型大人・小児用券で、門司印刷場で調製されたものです。
同駅は山の中にある豊肥本線の駅で、島式ホーム1面2線の交換可能駅です。当初は快速列車からはじまり、後に準急の時代を経て運転されていた急行「火の山」号の停車駅となっていましたが、同列車はJR民営化後には特急「あそ」号に格上げされ、現在では特急「九州横断特急」になり、現在では同駅は通過駅となっています。
急行停車駅時代の木造駅舎は撤去され、現在は鉄骨造の駅舎に改築され、駅員無配置の無人駅となっています。
名古屋鉄道 犬山駅発行 入場券
正月干支シリーズ第2弾は、平成7年8月に名古屋鉄道犬山駅で発行された硬券の入場券です。
白色無地紋のB型大人・小児用券で、愛知印刷で調製されたものと思われます。
同社には犬山駅の他に犬山口駅と犬山遊園駅がありますが、今回は一番オーソドックスな犬山駅です。
名古屋鉄道の入場券には「普通」の文字が無く、また、「この券で乗車することはできません」と独特な文言となっているところが特徴です。
同社では現在でも主要駅で硬券の入場券の発売がありますが、ダッチングでの日付入れをする駅は多くなく、「ダッチング30年問題」以前に、ほとんどの駅でゴム印による日付の捺印が行われているようです。
銚子電気鉄道 犬吠駅発行 普通入場券
毎年正月恒例となりましたが、今年の干支にちなんだ券を探してみました。
まず、今年の干支である「犬(戌)」のつく駅ですが、身近な動物でありながら、意外と少ないのです。
探してみますと、
山形県・犬川駅(米坂線)
千葉県・犬吠駅(銚子電気鉄道)
愛知県・犬山口駅、犬山駅、犬山遊園駅(名古屋鉄道)
福岡県・羽犬塚駅(鹿児島本線)
福岡県・犬塚駅(西日本鉄道)
福岡県・永犬丸駅(筑豊電気鉄道)
大分県・犬飼駅(豊肥本線)
程度しか思いつかないのです。名古屋鉄道の「犬シリーズ」の駅を3駅と考えても9駅です。
それでは正月2日ですし、今回は初日の出で有名な犬吠埼灯台の最寄駅である、銚子電気鉄道犬吠駅の普通入場券を御紹介いたしましょう。
白色無地紋のA型大人専用券で、山口証券印刷で調製されたものと思われます。同社の普通入場券には小児用券や大人・小児用券は存在せず、御紹介の大人専用券のみとなっています。
同社の普通入場券はJR管理駅である銚子駅を除いた有人駅各駅に設備されています。裏面にイラストが描かれている様式で、各駅、最低でも2種類はあるようです。
同駅一種類目の券の裏面です。
現在は廃車され、近年まで保存(放置?)されていたものの、すでに解体されてしまった車両のイラストです。この車両はデハ301型電車です。
デハ301型電車は、昭和18年7月に戦時買収された鶴見臨港鉄道(現・JR鶴見線)のモハ100型で、昭和5年に製造された105号がそのルーツとなります。国鉄買収後も鶴見臨港鉄道の形式を引き継いだモハ110系モハ115となりましたが、、昭和26年に鶴見線が1500Vに昇圧されたタイミングで銚子電気鉄道に譲渡されています。昭和50年代中頃に旅客営業から外された後も、工事用車輌として平成20年頃まで車籍があったようですが、平成21年に解体されてしまっています。
もう一種類の券の裏面です。
こちらは有名なドイツアルゲマイネ社で大正11年に製造された凸型電気機関車のデキ3です。
同車は宇部の沖ノ山炭坑から昭和13年に譲渡され、仲ノ町駅に隣接するヤマサ醤油の工場へ引き込み線で活躍し、客車も牽引して旅客営業にも使用されていましたが、昭和59年に貨物営業が廃止されると引退していますが、現在でも車籍があり、仲ノ町車庫で動態保存されています。
あけましておめでとうございます
新年あけましておめでとうごさいます。
本年も昨年同様、御贔屓のほど、よろしくお願い申し上げます。
昨年はも隔日ながらなんとか1年間更新を続けることができました。これはひとえに皆様の暖かい御支援の賜物であります。ありがとうございました。本年も変わらぬ御支援のほど、よろしくお願いいたします。
元旦1発目は毎年干支にちなんだ駅名の券を集めて御紹介いたしておりましたが、本年はちょっと趣向を変えてみました。
昨日、平成29年12月31日は、乗車券蒐集家にとってひとつの「節目」となる出来事が起こっています。
天虎式ダッチングの数字環が昨日の大晦日である「29.12.31.」以降に対応していないのです。昭和50年代以降に製造されてから改造を受けていない機器は、年号の十の桁の数字環が1.2.5.6および空白しかありません。名付けて、「ダッチング30年問題」です。
現在、ほとんどの駅で現役として活躍しているダッチングマシーンは天虎式であり、現在でも使用できる機器の数字環が平成30年に対応していないのが事実であり、特別に改造されたものでない限り、本日から使用できないのです。
昭和30年代に作成された菅沼式の機器がまだ使用できればそれを使うというのもアリですが、なかなかそのような物が残されている鉄道会社も少ないでしょうから、本日以降に発行される硬券にダッチングで日付を入れるというのは難しいのが現状です。
いっそのこと、かつて近江鉄道が行っていたように年号十の桁を空白にし、「 0.-1.-1.」とするのならば対応できないこともありませんが、現在でも硬券を発売している各社が、どのような対応をとっていくのか気になるところです。
こちらはダッチングに代わる、「ダッチング字体の日付印」を使用して「捺印」したものです。これならきちんと「30.-1.-1.」と捺印することができますが、やはり、ダッチングを使用しない硬券というのに物足りなさを感じてしまいますね。
なにはともあれ、本年も拙ブログ「古紙蒐集雑記帖」をよろしくお願いいたします。
古紙蒐集雑記帖管理人;isaburou_shinpei
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