京のおさんぽ

京の宿、石長松菊園・お宿いしちょうに働く個性豊かなスタッフが、四季おりおりに京の街を歩いて綴る徒然草。

世に言う、京の三名閣?

2013-08-09 | インポート

 

 東京、銀座に近い築地には、日本が誇る大市場、東京中央卸売市場がある。

 中でも魚介を扱う、いわゆる魚河岸は、今や観光スポットとして良く知られている。

 この目と鼻の先に、築地本願寺という寺院がある。

 これがなかなか風変わりな寺院である。

 まず、インドか東南アジアの寺院を思わせる外観に驚かされる。

 そして、建物のそこかしこに、動物のレリーフが施されているのが、楽しい。

 その上、なぜかパイプオルガンまである。

 行って損のない寺である。

 

 さて、歴史の授業で、法隆寺の柱はギリシャ神殿のエンタシスに由来する、という説を習ったことはないだろうか。

 実は、学術的に何も証明されていない説なのだが、一般に流布している。

 この説を唱えたのは、伊東忠太という、とても偉い建築の先生だ。

 この伊東忠太こそ、築地本願寺の設計者である。

 

 この伊東忠太と関わりの深い建物が、京都にもたくさんある。

 その第一は、何といっても、平安神宮である。

 共同設計ではあるが、平安京の朝堂院を縮小して、これを復元したものである。

 

 第二に、西本願寺の伝道院。

 モスクを思わせる円形ドームを頂く、赤レンガ造りの建物は、とても仏教寺院の付属施設とは思えない。

 築地本願寺に先んじて建てられていて、西本願寺の直轄寺院である築地本願寺の設計も、この縁で話があったのではないだろうか。

 伊東忠太は動物のレリーフを好んでおり、伝道院にも、様々なレリーフが施されている。

 といっても、伝道院の動物は、実在の動物ではなく、架空の動物であるが。

 

 そして、第三に、祇園閣。

 その名は高いとは言い難いが、しかし、京都へ来る観光客の、その多くが、実は目にしている建物である。

 東山連山の麓、四条通の突き当たる辺りにある。

 そう、そこは京都の観光名所、八坂神社のあるところ。

 西楼門を表と見れば、その裏に出ると、そこは円山公園。

 その円山公園を南に出たところに、それはある。

 円山公園で、不意にそちらのほうへ顔を上げると、目に入る、祇園祭の鉾を模した、コンクリートの建物。

 いや、それは建物なのか、モニュメントなのかと、見ただけでは悩む。

 しかし、これは立派な建物で、中にも入れる。

 大雲院という寺院の伽藍の一部。

 ところが実は、大雲院は、後からここへやってきたというのだから、話は複雑だ。

 もともとは大倉喜八郎という大財閥の創始者の別邸が、ここにあり、祇園閣も、その中の建物だったのである。

 つまり、元は私物。

 エラいものを造ったものである。

 やがて時を経て、大雲院が移ってきて、その建物も譲り受けたというわけである。

 普段は非公開であるが、夏の特別公開で、見ることが出来る。

 なかなか稀有な建物で、伊東忠太らしさの詰まった祇園閣を、見ていってはいかがだろうか。

”あいらんど”