伝道院をご存知だろうか。
油小路通正面の東南角に、それはある。
油小路通正面といっても、地元以外の人間には、ちとピンと来ない。
そこで、京都の地図を広げてみよう。
京都駅はすぐに発見できるはずだ。
そこから北へあがれば、東本願寺はわけなく発見できるだろう。
更にそこから西へ向かうと西本願寺があるが、その両寺に挟まれた辺りに、それはある。
伝道院は、西本願寺の付属施設だ。
数珠屋だとか、仏具店だとか、お経を売る店だとか。
その辺りは、これぞ門前町という、古びた和風建築が立ち並ぶ界隈である。
そこに建つ伝道院は、その中で明らかに異彩を放っている。
なぜなら伝道院は、銅板葺きのドーム屋根を持つ、赤レンガ造りの建物だからである。
これがお寺の施設だとは、ちょっと考えられない。
それもそのはず、もともとは信徒さんを対象とした保険会社の社屋だったのである。
それがめぐりめぐって、西本願寺に直接付属する施設となったのだ。
その用途は布教師の養成学校みたいなもので、即ち伝道院というわけだ。
さて、この伝道院、つい最近まで、10年ほどの間、その姿を見ることができなかった。
その期間、工事用のシートに覆われていたのである。
竣工明治45年という古い建物のため、老朽化が著しかったためだ。
といって、すぐに改修工事が行なわれたわけではないようである。
調査だとか、各方面との折衝、調整があり、ようやく工事に取り掛かったのが、数年前。
そして今年になってようやく、再び町中にその姿を現したわけだ。
親鸞聖人750回遠忌というこの年、ちょうど良いタイミングである。
十数年前に見たことのある人も、数年前に見に来て見られなかった人も、今までその存在を知らなかった人も、是非、一度見てみよう。
文化勲章も受章した、名建築家、伊東忠太の作品である。
京都市の指定文化財にもなっている。
建物そのもの、そして、それのある町の風景。
何か、明治、大正の時代に入り込んでしまったかのようである。
”あいらんど”