FRONTROW 2019-09-03
ジョニー・デップが出演するディオールの香水ソヴァージュの新CMが「文化の盗用」や「人種差別」と批判を受けてブランド側が取り下げた件で、CMに出演した女優がジョニーに対して関連団体への寄付を呼びかけている。(フロントロウ編集部)
ジョニデ出演のディオールCMが炎上
問題となっているのは、ディオール(Dior)の香水ソヴァージュ(Sauvage)の新CM。約1万6,000円で販売されている男性用香水のCMでは、広告塔であるジョニー・デップがユタ州の荒野を歩くなか、ネイティブ・アメリカンであるCanku One Starが踊り、カナダの先住民の血をひく女優のタナヤ・ビーティーがジョニーの後を追う。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=40&v=V6lFedrgbdI
この映像が公開されると、SNSを中心に「文化の盗用」「人種差別」といった批判が殺到。
最も問題視されているのは、フランス語で「野性的」「野蛮」という意味がある「Sauvage(ソヴァージュ)」という名前の香水にネイティブ・アメリカンや彼らの文化が使用されたこと。この言葉は英語では、ネイティブ・アメリカンに対して使われていた差別用語「Savage(サヴェージ)」にあたる。
また、タナヤは「官能的」「挑発的」といった言葉で表現され、これがネイティブ・アメリカンの女性のステレオタイプを助長しているといった批判も聞かれた。
ディオール側は今回のCMがネイティブ・アメリカンのコンサルタントや団体の協力を得て作られたものであることを明かしているが、ネイティブ・アメリカンのアクティビスト、エイドリアン・キーンをはじめ多くの人が、結果的に作られたCMが人種差別的であることに変わりはないと批判している。
CM出演女優がコメント、女優としてのジレンマとは
ディオールのCMへの批判が高まり、CMが取り下げられた後、CMでジョニーと共演した女優のタナヤがインスタグラムでコメントをした。
カナダの先住民であるファースト・ネーションの血をひき、映画『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1』のレイチェル・ブラック役で知られるタナヤはまず、先住民族の血をひく女優としての葛藤をこう告白。
「先住民の女優として、キャリアの選択を迫られるたびに妥協していると感じます。私はカナダの小さな村に暮らしていた幼い頃から映画を愛し、この世界に属したいと願っていました。一方で、この世界に属すということは、人種差別的であり、搾取的であり、入植者の構造を具現化するストーリーを伝えることに加担するということでもあるのです」
「映画史において、ネイティブは見世物として使われてきました。社会的に無視され、奇妙な形で崇拝され、背景として使われてきました。2019年である今でも、女優としての私のキャリアの大部分がそうなのです」
「キャリアが進むにつれて、私は映画的なインディアンになっていきました。“羽や革”をまとった静かで神話的な存在。過去か主演を務める白人のストーリーに影響を与える存在として。自分自身がステレオタイプと化すのを、そして先住民の同胞がステレオタイプを演じるのを見てきました。先住民の人間が自分の人生を謳歌する姿も見せられる日がいつかくることを願って。自分が愛することを仕事にできることは素晴らしい贈り物であるだけに、いらだたしいことでもあります」
先住民族の女優としてのジレンマと映画化や社会が抱える問題を提起したタナヤは、「今回の議論が、私たちのコミュニティから生まれているストーリーや、才能、知性、クリエイティビティに機会を与える方向へと進むことを願います」と、自身の立場を表明。
またタナヤは、ジョニーとディオールに対してこうコメントした。
「誤ってしまったとはいえ、ディオールは先住民の文化に美しい形でスポットライトを当てようとしていたと信じています。またその過程で、インディアンに仕事も与えました」
「どこかの香水会社と、みんなに愛されているどこかの海賊が寄付してくれたらと思います」
そう語り、香水を販売するディオールと、代表作『パイレーツ・オブ・カリビアン』で海賊を演じるジョニーに、ネイティブ・アメリカンの支援活動に寄付することを呼びかけた。
タナヤは今回の投稿で、スタンディング・ロックやベアーズ・イヤーズといった先住民にとって神聖な土地が石油会社に脅かされそうになっている件や、先住民の女性や女児が行方不明になったり殺害されている件といった先住民にまつわる社会問題に対する情報収集をしてほしいと頼み、ベアーズ・イヤーズを守るための活動をしている団体Bears Ears Coalitionへの寄付も呼びかけた。(フロントロウ編集部)
https://front-row.jp/_ct/17299763