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総合計画、分かりやすさ模索 帯広市が次期素案 施策半減、キャッチフレーズ付記 議会「簡素化しすぎ」

2019-09-30 | アイヌ民族関連
北海道新聞 09/30 05:00
 【帯広】帯広市が2020年度にスタートする第7期総合計画(29年度まで)の策定に向け、模索を続けている。地方自治法の改正で計画の軸となる基本構想の策定義務が撤廃され、各自治体が主体的に計画づくりを進める中で、市は市民に分かりやすい内容にして、市政への住民参加を促したい考えだ。7月に公表した素案では盛り込む施策数を減らして施策ごとにキャッチフレーズも付けたが、市議会からは「内容が抽象的で分かりづらくなった」と批判も出ている。
 「読んで分かりやすく、市民に関心を持ってもらえる内容にしたい」。米沢則寿市長は9月の定例記者会見で、次期総合計画の策定に強い意欲を示した。
 総合計画は一般的に、行政運営の基本理念などを示す「基本構想」、施策の概要を示す「基本計画」、具体的な実施事業を示す「実施計画(帯広市は推進計画)」で構成される。地方自治法で市町村に基本構想の策定が義務付けられていたが、11年の改正で自治体の裁量に任されることになった。
 総合計画はまちづくりの最上位計画に位置づけられてきたため、全国のほとんどの市町村は法改正後も基本構想を軸に総合計画を策定している。自治体の裁量が拡大し、住民参加に重点を置いた計画づくりを進める市町村もある。十勝管内では清水町が、21年度からの次期総合計画を策定するため、無作為抽出で選ばれた町民約50人による協議会を9月に立ち上げた。
 帯広市は法改正前の07年にまちづくり基本条例で計画の策定を定めている。ただ、人口減少や地方分権が進む実情を踏まえ、「右肩上がりではない時代に、市民と共にまちづくりを進める重要性は増している」(企画課)として、「分かりやすい」計画づくりを掲げた。
■市民の共感を重視
 市は7月に基本構想と基本計画の素案を公表。基本計画の施策数は現計画の50から集約を図って23に半減し、基本構想などの記述も整理しコンパクト化した。企画課は「変化する時代に10年先を見定めるのは難しい。基本構想や基本計画は、大まかな指針を示すものに整理した」と説明する。
 また市民の共感を得ようと各施策に、「障害者福祉の充実」には「バリア(障害)をバリュー(価値)に変える」、「地域産業の活性化」には「『とかちのかち』を創り続ける」などキャッチフレーズも付けた。
 しかし、市議会の総合計画特別委では素案に対し、「簡素化を図るあまり、分かりづらくなった」などの声が相次いだ。現在の計画にある「アイヌの人たちの誇りの尊重」「青少年の健全育成」といった施策が消えたことや、農村地域に関する記述が一部省略されたことなど、多くは説明が足りない部分への批判だ。
■「やるなら書いて」
 市は素案に盛り込んだ施策「多様な主体が活躍する地域社会の形成」に触れ、「アイヌ民族を含む誰もが活躍できる地域を目指すという意味」と説明。それ以外の指摘にも「今後示す推進計画で取り上げる」などとするが、市議からは「書いてないけどやります、ではなく、やるなら書いてほしい」と不満が漏れる。
 市企画課は「簡略化することが目的ではない。市民に分かりやすい計画にするためにどうすれば良いか、検討を重ねたい」と話す。
 地方自治に詳しい札幌大の浅野一弘教授は「分かりやすくという新たな発想は評価できるが、結果的に抽象的になっていないか」と指摘した上で、「施策を詳しく書き込む従来型の計画に加え、住民向けの概要版をつくってはどうか」と提案している。(東野純也)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/349673

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北海道)見て聞いて踊ってアイヌ文化を理解 きょうまで

2019-09-30 | アイヌ民族関連
朝日新聞 2019年9月29日03時00分
トークショーで語る秋辺デボさん=2019年9月28日、札幌市のさっぽろ創世スクエア
 朝日新聞社とHTB北海道テレビ放送による「創世まなびひろば」が28日、さっぽろ創世スクエア(札幌市中央区北1条西1丁目)で開幕した。初日は阿寒在住の舞台演出家、秋辺デボさんによるトークショーや古式舞踊を通してアイヌ民族の歴史や文化への理解を深め合った。胆振東部地震から防災や減災を考えるトークセッションもあった。29日まで。
 白老町に来春、「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が完成することについて、秋辺さんは「アイヌと和人が互いに理解し合おうという施設。アイヌを理解してもらうことで次の社会の発展につながるスタートになる」と語った。開会式への出演が検討されている東京五輪に向けては「千人で踊る準備をしている」と意欲を語った。
 古式舞踊では札幌ウポポ保存会が登場。民族楽器のムックリやトンコリの演奏とともに民族衣装に身を包んだ女性たちが受け継がれてきた踊りや歌を披露。最後は会場に詰めかけた観客と一緒になってにぎやかに輪踊りを楽しんだ。
 「今、私たちができること」と題したトークセッションには報道や行政関係者らが登壇。被災地取材を続けてきたHTBの菊地友弘アナウンサーは「放送を通して復旧、復興の後押しや手助け、力になれれば」、朝日新聞北海道報道センターの遠藤美波記者は「課題だけでなく明るい話題も含め被災地に寄り添いながら息長く報じていきたい」と話した。
 29日は午前11時から、HTBの人気番組「水曜どうでしょう」のディレクターらが出演するトークショー(座席エリアの申し込みは締め切っている)、午後1時からは、北海道コンサドーレ札幌の元選手で主将だった河合竜二さんらによる「サッカークラブが拓く地域の未来」と題した催しが予定されている。
 「創世まなびひろば」は、HTBの番組出演者やスタッフらが視聴者と交流する「HTBまつり2019」(さっぽろ創世スクエアなどで29日まで)にあわせて開かれている。(志田修二)
https://digital.asahi.com/articles/ASM9X46HRM9XIIPE00B.html?_requesturl=articles%2FASM9X46HRM9XIIPE00B.html&rm=419

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異文化共存願う舞踏劇、札幌 ポーランド劇団とアイヌ民族女性

2019-09-30 | アイヌ民族関連
沖縄タイムス 2019年9月28日 17:54
 日本とポーランドの国交樹立100周年を記念して、ポーランドの劇団「アマレヤシアター」とアイヌ民族の女性が28日、札幌市内の劇場で舞踏劇「(残)響 ポーランドと日本に架ける橋」を公演した。10月5、6日に東京でも公演する。
 舞踏劇は、樺太(現サハリン)でアイヌの女性と結婚したポーランドの文化人類学者ブロニスワフ・ピウスツキ(1866~1918)に着想を得て制作された。舞台にはアイヌの伝統弦楽器トンコリやポーランドの伝統発声法を用いた歌唱の音色が響き合い、民族の記憶や異文化共存への願いが表現された。(共同通信)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/477091

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写真で見る、アマゾンの大規模火災に苦しむ先住民たちの暮らし

2019-09-30 | 先住民族関連

Business Insider Japan 2019年9月29日 

ブラジルでは、アマゾンの熱帯雨林で燃えさかる火災をめぐり、先住民と農民の対立が起きている。
多くの先住民にとって、この土地は神聖な場所だ。
しかし、農民は作物や家畜を育てるために森林を焼き払っていて、ボルソナロ大統領も先住民の意向を優先していない。
アマゾンの大規模火災が、ブラジルの先住民たちの暮らしを脅かしている。
2019年の森林破壊は前の年に比べて77%増加しており、これまでに約8万3000件の火災が確認されている。ある部族の首長が独紙「ビルト(BILD)」に語ったところによると、この土地は先住民にとって教会のように神聖な場所であり、そこが今まさに焼かれているのだという。
火災の多くを引き起こしているのは農民たちだ。作物や家畜を育てる土地を確保するために、森を焼き払っている。2019年に入って火災が急増している背景には、ブラジルのボルソナロ大統領の方針もある。大統領は、先住民よりも農民を支援しており、先住民の土地をこれ以上、保護が強化される先住民族保護区に新たに指定しない意向を示している。大統領は先住民を動物園に閉じ込められた動物にたとえる発言さえしている。
ジャーナリストのシャノン・シムズ(Shannon Sims)氏は、アトランティック誌に寄せた記事の中で、先住民にとって火災は単なる危機でなく、自治を求める彼らの苦闘を示すものだと述べている。
ビルト紙の8人のジャーナリストたちは、先住民の暮らしぶりを探るべく、ブラジルとボリビアのアマゾンに赴いた。以下、彼らがそこで出会った人々や彼らの生活を一変させている火災の光景をとらえた、驚くべき写真の数々を紹介しよう。
(以下、敬称略)
この先は保護区であることを伝える政府の看板。しかし、多くの先住民にとって、このような看板はもはや頼りにならない。
16世紀、ポルトガルの入植者がブラジルにやってきたときには、約300万人の先住民が暮らしていた。現在ではわずか100万人ほどに減り、先住民はブラジルの人口の1%を占めるにすぎない。写真は、焼け焦げた木の枝に座る先住民の男性だ。
手前に座っているのが首長のエクトル(53歳)だ。彼らが属するシャバンテ族は、100人前後の部族単位で生活しており、ブラジル全土に2万人ほど存在する。
シャバンテ族は200年前からこの土地で暮らしている。
ビルト紙のパウル・ロンツァイマー(Paul Ronzheimer)が、首長のエクトルら部族のメンバーに話を聞いた。彼らによると、アマゾンでは何十年も前から毎年のように火災が発生しているが、2019年は例年に比べてはるかにひどいという。ボルソナロ大統領がそれを気にしていないと、彼らは感じている。だが、それでも土地にこれ以上の被害が及ばないようできる限りのことをするつもりだという。
シャバンテ族は、弓矢を使って狩りをする。彼らは火災の頻発に警戒を強めており、自分たちの土地に予告なく入ってきた者には攻撃すると話している。
首長のエクトルは、農民が火を放っている土地は自分たちにとって神聖な場所だという。「教会のようなものだ。彼らは我々の聖地に火を放っている。我々に対する敬意がない」
「我々はこの土地を保護している。煙が見えたら、土地を守るために駆けつける。だから、火を放っている白人たちが誰なのかも、彼らがなぜそのような行為をするのかも知っている」とエクトルは語った。
火災が発生している土地のほとんどは私有地だ。しかし、ブラジル国立宇宙研究所によると、8月には148カ所の先住民居住地で3500件の火災が発生している。
一部の農民たちは、火災は牛肉や大豆を生産するのに必要で、実際の火災は報じられているほどひどいものではないと主張している。
ある地域の農業団体のトップはローリング・ストーン誌に対し、人々が農地を求めて熱帯雨林に向かうのは、1970年代に政府から指示されたためだと話している。だが、それが今では批判の的になっている。「サンパウロやリオデジャネイロのような大都会の人々は、我々にブラジルナッツでも採って生活してほしいと思っている」
「しかし、それでは子どもを大学にやれない」と彼は言う。
火災の増加に苦しんでいるのは、先住民だけではない。動物もまた危機に瀕している。この女性は動物たちを救おうとしている活動家だ。中でも、爬虫類と両生類は低温多湿の環境を必要とするためリスクが高い。ナマケモノなど動きの遅い動物も危険だ。ジャガーといった比較的からだの大きな動物は、多くの場合、炎に追いつかれる前に逃げることができる。
アマゾンで火災が発生しているのは、ブラジルだけではない。写真のビルト紙のジャーナリスト3人は、ボリビアの現状を取材しに行った。ブラジルほど大々的には報じられていないが、ボリビアでも約4万件の火災が発生し、約3700平方マイル(約9600平方キロメートル)の土地が焼けた。
ブラジル先住民連合(Articulation of Indigenous People of Brazil)を率いるソニア・グアジャジャラ(Sonia Guajajara)は、火災の増加の背景には政府による保護が弱まり、新しい道路が建設されたため、森林が分断され、火災にさらされやすくなったことが影響していると、アトランティック誌に語っている。
男性が懸命に火に水をかけている。しかし、何万件もの火災が確認されている状況では、いかにも分が悪い戦いだ。
8月末になって、ブラジルのボルソナロ大統領は国際的な圧力に屈し、消火活動のために兵士を派遣した。また、これ以上土地に火を放ち、焼き払うことを禁じた。
しかし、この写真が示すように、すでに多くの場所が火災によって焼けてしまった。
シャバンテ族の人々は今のところ、狩りをし、木の実を集める日々の暮らしを続けていくつもりだ。しかし、火災が自分たち部族にとって危険なものであることは認識している。火災が村の近くに迫ったら、家が焼けてしまうかもしれないと、首長のエクトルは話している。
そして、彼らの未来の世代の暮らしが脅かされている。
[原文:Stunning photos show the reality for indigenous people living in the Amazon as fires burn]
(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:山口佳美)
https://www.businessinsider.jp/post-197909

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ロヒンギャ支援に日本の知恵 板橋育ち 米国人女性奮闘

2019-09-30 | 先住民族関連
東京新聞 2019年9月28日 夕刊

バングラデシュ南東部コックスバザールで今年1月、ロヒンギャ難民の子どもたちに話し掛けるレイチェル・ウルフさん=ワールド・ビジョン提供
 故郷を追われたイスラム教徒の少数民族ロヒンギャが住むバングラデシュ南東部コックスバザールで、日本育ちの米国人女性が難民支援を引っ張っている。国際NGO「ワールド・ビジョン」(WV、本部・英国)の現地責任者レイチェル・ウルフさん(44)。保守的な宗教の価値観のもとで閉じこもりがちな女性たちを支援する。 (コックスバザールで、北川成史)
 二〇〇三年にWVに入り、ソマリアなどで開発援助や人道支援を経験。昨年八月からコックスバザールでWVの難民支援を監督する。
 「難民で一番苦しんでいるのは女性」と指摘するレイチェルさん。一七年以降、七十万人以上のロヒンギャがミャンマーでの迫害から逃れてきたが、出身地とは関係なく、ばらばらに難民キャンプに住んでいる。
 コミュニティーが分断された上、女性が出歩くのは宗教的に好まれないため、孤独に陥り、家庭内暴力などを抱え込む恐れがある。
 力を注いでいるのが日本風の「ご近所付き合い」を後押しすること。女性が家族向けの料理を作りながら交流するセンター作りだ。現在、キャンプ内に約四十カ所設置。友人を増やし、井戸端会議で悩みを明かしてもらおうと考えている。
 計約十カ国出身のスタッフ五百人を束ねるレイチェルさんは、流暢(りゅうちょう)な日本語で取材に受け答えする。宣教師の両親の仕事のため一歳で来日し、東京都板橋区に居住。「近所の日本人の子たちと遊んだ幸せな思い出でいっぱい」とほほ笑む。四~十三歳まで地縁関係の濃い鹿児島県阿久根市や愛知県豊田市で暮らした。
 難民支援の仕事は厳しい環境で長時間に及ぶため、家族を帯同させる援助関係者は少ないが、レイチェルさんはコックスバザールで、支援機関のコンサルタントをする夫(47)や一~十七歳の三人の子と同居する。
 コックスバザールは世界最長と言われる砂浜を持つベンガル湾沿いの町。「自分が育った海沿いの阿久根市を思い出すんです」と幼少期と重ね合わせる。
 ロヒンギャ難民の帰還は進まず、問題解決の先行きは見えない。レイチェルさんは「日本の人たちは支援の継続を」と第二の祖国に願った。
<ロヒンギャ> 仏教徒が9割のミャンマーで、西部ラカイン州に住むイスラム教徒少数民族。人口は州全体の3分の1の約100万人とされる。同国の法律上、先住民族とされず、多くはバングラデシュなどからの不法移民扱いで国籍を持たない。2017年8月25日に同州でロヒンギャ武装勢力と治安部隊が衝突後、殺人やレイプなど深刻な迫害を受け、70万人以上がバングラデシュに逃れた。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201909/CK2019092802000260.html

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白老駅北側ホテル断念 札幌の業者、資金調達困難で

2019-09-30 | アイヌ民族関連
北海道新聞 09/28 05:00
 【白老】札幌の不動産投資業者「パーフェクトパートナー」は、JR白老駅(胆振管内白老町)北側の観光商業ゾーンに計画していたホテルの建設を断念した。来春開業するアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の観光客の受け皿として期待されていたが、同社の断念で同ゾーンへの参入業者はなくなった。
 同社によると、金融機関から事業費約2億円の融資を断られ、資金調達のめどが立たなくなったという。末岡由紀社長は27日、取材に対し「アイヌ文化振興に貢献できればと思っていた。地元の期待に応えられず、大変申し訳ない」と述べた。
 観光商業ゾーンは、ウポポイと白老駅の間にある1・5ヘクタール。地域の観光情報の発信や特産品販売などを目的に白老町がインフォメーションセンターなどの整備を進めている。町は、ゾーン内の0・5ヘクタールを3区画に分けて参入業者を公募したところ、2階建て全20室のホテルを提案したパーフェクト社のみが決定。5月に町と事業協定を結び、10月にも着工予定だった。
 ウポポイ周辺の宿泊施設は民宿が中心で、より幅広い客層を呼び込めるホテルに期待していた観光関係者は多かった。戸田安彦町長は「残念でならない。今後も宿泊施設や飲食施設の事業者の誘致を根気強く続けたい」と述べた。(堀田昭一、金子文太郎)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/349223

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白老活性化の「核」白紙 駅北側ホテル断念へ ウポポイ開業200日前、戸惑いの声

2019-09-30 | アイヌ民族関連
北海道新聞 09/28 05:00
 【白老】アイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の来年4月開業に合わせ、JR白老駅北側の観光商業ゾーンにホテルを建設する予定だった不動産投資会社「パーフェクトパートナー」(札幌)が建設計画を断念する方針を固めたことで、町が地域経済活性化の拠点と位置づける、同ゾーンの民間参入区域の整備はまったく見通せなくなった。町内からは「開業まで約200日しかないこの時期に計画が白紙になるとは」と戸惑いの声が広がっている。
 パーフェクトパートナーは木造2階建て全20室で、地元の食やアイヌ料理を提供するレストランとアイヌ工芸品を展示販売するミュージアムが併設されたホテルの建設を計画。1泊1万円程度の料金で、ウポポイを訪れる研究者やビジネス客向けの宿泊施設として、町内からの期待が高かった。
 町商工会の熊谷威二会長は「ウポポイの経済効果を町内に波及させる駅北の開発の核だっただけに残念でならない」と声を落とす。白老観光協会の福田茂穂会長は「今回のホテルに代わる施設を残された期間で本当に整備できるのか」と驚きを隠さない。
 町は民間参入区域について3区画の事業者を募集。2月に行われた1回目の公募型プロポーザルで、パーフェクトパートナーのみが応募しホテル建設が決定した。町は7月に残る2区画で再募集を行い、町外のドラッグストア1社が手を挙げたが、プロポーザルの審査基準を満たさず選定にいたらなかった。このため、今回のホテル建設断念によって、同区域の整備が全て白紙になった形だ。
 事業者が応募を敬遠する背景には、整備費の負担が大きいことや、ウポポイ施設内の商業施設の概要がいまだ明らかになっていないなど、経営に不安定な要素が多いことがあるとみられる。町は今後について「参入を考えてくれそうな企業を回って要望を聞き取り、募集要件を早急に改善するしかない」として、具体的な対応の検討を急ぐ考えだが、約200日後に迫ったウポポイ開業に間に合わせるのは厳しそうだ。(金子文太郎)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/349188

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上村さん、人権を語る 「文化の集い」来月、品川で

2019-09-30 | アイヌ民族関連
東京新聞 2019年9月28日

 「人権の21世紀をつくる文化の集い2019」が十月十日、東京都品川区の区立総合区民会館「きゅりあん」(JR大井町駅東口)で開催される。集いは、平和と人権の二十一世紀を願って二〇〇一年から始まり今年で十九年目。
 今回は、恵泉女学園大学教授で市民外交センター共同代表の上村英明さん=写真=が、アイヌ民族や琉球民族の声を届け、差別解消と人権を訴えてきた同センターの活動について講演する。活動を始めた意義、成果、運動の展開、日本政府の対応などについて具体的な内容を盛り込む予定。
 同センターは一九八二年の発足以来、アイヌ民族と琉球民族の国連参加を支援し、反差別国際運動(IMADR)とともに国連に人権状況を報告し、国連の日本政府に対する勧告に取り組んできた。四月に、アイヌ民族を日本の先住民族とする「アイヌ新法」が成立するなど新たな動きはあるものの、アイヌ民族や沖縄に対する差別が後を絶たないという。
 午後六時開場で、同六時半開演。全席自由で、参加費千円。手話通訳あり。問い合わせは実行委員会=電03(3762)7176=へ。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/metropolitan/list/201909/CK2019092802000161.html

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アイヌ語の地を散策 白老・5、14日にアースダイブ

2019-09-30 | アイヌ民族関連
室蘭民報 2019/9/27 10:33 (JST)
 アイヌ語地名が残る白老、登別を散策する「アースダイブ白老・幌別」=写真はポスター=が10月5日と同14日に行われる。主催のウイマム文化芸術実行委員会は参加者を募集している。
 5日は登別市の幌別、富浦周辺を歩く。14日は白老町のアヨロ、虎杖浜周辺を歩く。両日とも午前10時から。参加料は1500円。講師は谷本晃久・北大文学研究院教授。アイヌ民族文化財団の八幡巴絵学芸員らがサポート役を務める。参加申し込み、問い合わせは栗栖さん、電話090・2816・4505へ。
 文化庁の委託事業「2019年度戦略的芸術文化創造推進事業」として行われる。
https://www.oricon.co.jp/article/942583/

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アイヌ民具の取り扱い学ぶ 道内博物館学芸員ら研修-白老

2019-09-30 | アイヌ民族関連
苫小牧民報 2019/9/27配信

薄葉紙を切り裂き、紙ひもを作る方法を学ぶ学芸員ら
 道内各地の博物館学芸員による北海道博物館協会学芸職員部会の研修会が25、26の両日、白老町コミュニティセンターで開かれた。来年4月の民族共生象徴空間(ウポポイ)・国立アイヌ民族博物館の開業を契機に、博物館同士でアイヌ民具の貸し借りが増えると予想される中、学芸員らは民具の取り扱い方について知識を深めた。
 白老町での同協会の研修会開催は2007年以来12年ぶり。今回は「資料の貸借マナーと技術の共有化―カルテ作成から梱包(こんぽう)まで」をテーマとし、各地の博物館や資料館に勤める学芸員約80人が集まった。
 初日の25日は、元道立アイヌ民族研究センター職員の古原敏弘さんと、公益財団法人アイヌ民族文化財団職員の岡田恵介さんが講師を務め、「アイヌ民具の梱包」について解説。古原さんはアイヌ民族の漆器などの調査研究に長く携わってきた経験を踏まえ「貴重な資料を傷めず保管するためには紙で包装することが重要」などと助言した。
 また、岡田さんは、アイヌ民具資料の貸し借り時の梱包作業を具体的に紹介。「薄葉紙」と呼ばれる包装用和紙を切り裂いて梱包時の紙ひもを作る方法や、クッション材の綿の使い方を指導し、参加者は民具のイタ(盆)を保護しながら段ボール箱に詰め込む作業を体験した。
 翌日の26日は、北海道博物館職員の三浦泰之さんが講師となり、資料の記録簿の作成方法や取り扱いの注意点などを説明。参加者は研修を通じて資料貸借の知識と技術を身に付けた。
https://www.tomamin.co.jp/news/area2/17243/

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白老駅北側商業ゾーン ホテル建設断念へ 札幌の業者「資金調達困難」 ウポポイ観光客受け入れに懸念

2019-09-30 | アイヌ民族関連
北海道新聞 09/27 16:00
 【白老】胆振管内白老町のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が来春開業するのに合わせ、JR白老駅北側に整備される観光商業ゾーンにホテルを建設する予定だった不動産投資会社「パーフェクトパートナー」(札幌)が、建設計画を断念する方針を固めた。ホテルはウポポイ観光客の受け皿として期待されていただけに、地元の観光振興にとって痛手となりそうだ。
 同社の末岡由紀社長は27日、北海道新聞の取材に「(事業費2億円の)資金調達が困難と判断した」と説明、「地元の期待に応えられず大変申し訳ない」と述べた。金融機関に事業費の融資を打診したが、ホテル建設への賛同が得られなかったといい、町側には既に口頭で伝えたという。
 観光商業ゾーンはウポポイと白老駅の間の1・5ヘクタール。整備主体の白老町が今年2月、インフォメーションセンター建設予定地を除く0・5ヘクタールの3区画について事業者を公募し、唯一応募した同社が2階建て全21室のホテルを提案。事業協定を締結し、10月にも着工する予定だった。
 建設断念となれば、事業者を再度公募してもウポポイ開業には間に合わない恐れもあるが、同町の担当者は「(建設計画は)現在も協議中で、今後についてコメントする段階にない」としている。(堀田昭一、金子文太郎)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/349016

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日本とポーランド国交100年記念し舞台 異文化の共存願う アイヌの現在・過去・未来表現 札幌であす上演 /北海道

2019-09-30 | アイヌ民族関連
会員限定有料記事 毎日新聞2019年9月27日 地方版
 日本とポーランドの国交樹立100年を記念した舞台「(残)響、ポーランドと日本に架ける橋」が28日、札幌市で上演される。アイヌ民族の女性と結婚したポーランドの文化人類学者、ブロニスワフ・ピウスツキ(1866~1918年)の実話を基に、アイヌの団体とポーランドの劇団がそれぞれの伝統音楽を現代風にアレンジし、アイヌの現在・過去・未来を表現する。【高橋由衣】
 舞台は、ポーランドの劇団「アマレヤ」のメンバーがアイヌの団体「アイヌ女性会議メノコモシモシ」と交流…
この記事は有料記事です。
残り591文字(全文818文字)
https://mainichi.jp/articles/20190927/ddl/k01/040/107000c

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インドに生きる先住民族〈アディヴァシ〉の今

2019-09-30 | 先住民族関連
VICE 27 September 2019, 2:15pm
インド人口の8.6%を占めながら、メディアや社会からは忘れ去られている先住民族、アディヴァシの姿を収めた写真プロジェクトを公開する写真家にインタビュー。
The Red Aryan Tribe, residents of Ladakh. Photo courtesy of Aman Chotani.
急速な都市化、西洋化のただなかにあるインドだが、いまだに多数の部族や、同族集落が存在し、それらの部族は総称して〈アディヴァシ〉と呼ばれる。〈原初の住民〉といった意味の言葉だ。何世紀にも及ぶ伝統を今でも守りながら暮らすアディヴァシは、インド政府や社会からはほぼ見捨てられている。インドじゅうを旅して、その事実に気づいた写真家のアマン・チョタニ(Aman Chotani)は、彼らを守るために何か方策を考えようと決意した。そして2018年3月、写真プロジェクト〈The Last Avatar〉をローンチする。
「このプロジェクトが未来の世代、研究者、あるいはアディヴァシに関心がある、あらゆるひとのためのアーカイブになれば、と思います」とチョタニはインタビューに語る。「残念なことに、彼らの文化は徐々に消え、忘れ去られようとしています。失うがままにするにはあまりに惜しい」
チョタニは当初、写真集としてアディヴァシの姿をまとめようと考えていたが、最終的にデジタルプロジェクトとして結実。現在はウェブサイトとInstagramのアカウントで展開している。彼は、共同創始者で製作チームとして参加しているヴィシャル・バリ(Vishal Bali)、スタンジン・チョクフェル(Stanzin Chokphel)の両名とともに、このプロジェクト内の、様々なコンテンツを製作。さらにルーハニ・サーニー(Roohani Sawhney)とヴリンダ・ヴァイド(Vrinda Vaid)が、ライターとしてプロジェクトに協力し、アディヴァシのひとびとの物語を発信している。
A womanいっぽう、写真集のプロジェクトも現在進行中だ。また彼らは、アディヴァシの集落でワークショップやアートのレッスンなども開催している。
645にも及ぶとされるインド国内の部族をリサーチしたチョタニと彼のチームは、その中から候補リストを作成。第1段階の候補として選んだ25の部族のうち、これまでにグジャラート州、ラダック州、オリッサ州、ラージャスターン州、ナガランド州、ヒマーチャル・プラデーシュ州、アルナーチャル・プラデーシュ州の計15の部族を撮影した。
ひとびとがカメラの前でどれほど心を開いてくれるかは、それ以前の写真との接触の有無によって違うという。チョタニによると、チームが訪ねた大半の先住民族は温かく迎え入れてくれたが、最初は恥ずかしがる部族もあったそうだ。
「でもそれよりも、自分とひとびととの関係性が重要ですね」と彼は語る。「写真を撮ってもいいか、と相手に訊く前に、彼らと関係性を築き、彼らをよく知ることが大切だ、と僕個人は考えています。そこをちゃんとしていれば、基本的にみんなよろこんで写真を撮らせてくれます」 from the Raikas tribe. チョタニはこの経験から多くを学んだという。特に、部族が選んだ自分たちの生きかたは、インスピレーションを与えてくれるそうだ。
「彼らには、僕らも知らない広範な知識がある」とチョタニ。「それぞれの部族が、唯一無二の存在なんです」
彼の写真は、それぞれの部族の特徴を鮮やかに捉えている。音楽、ダンスのフォーム、彼らが使う道具。彼はそれらすべてを、アディヴァシが私たちに与えてくれる「文化の多様な贈りもの」と呼ぶ。
彼によれば、アディヴァシの生活様式の形成には、各部族が暮らす土地の特徴が影響しているそうだ。
たとえば、ナガランドのコニャック(Konyak)族は、伝統的な〈長〉が率いる、強い絆で結ばれたコミュニティで暮らす。ラダックに暮らし、〈赤いアーリア人〉と呼ばれるドログパ(Drogpa)族は、かつて他の地域との関わりを断ち、外の人間との婚姻を禁じていた。ヒンドゥー教修行者の一団、アグホリ(Aghori)は、シヴァ神などヒンドゥー教の神々に扮し、死者と積極的に関わり合う。
「生と死のあいだを生きる。それがアグホリです」とチョタニ。「彼らは摩訶不思議で、凄まじい人生を生きていると思います」
その他、彼がプロジェクトを進めてきた部族は、アヒール(Ahir)、アパタニ(Apatani)、ビール(Bheel)、バンジャーラ(Banjara)、ガディ(Gaddi)、ライカ(Raika)、コンダ(Kondha)。
彼の写真において核となるテーマは、各部族が有する多様な美意識だ。それは、ドログパ族が頭につける華やかな飾り物、ラージャスターンの部族が身につける堂々たるターバン、コニャック族の顔に施されたタトゥーなどに表れている。
彼の写真は、インド国民の大半が知らない部族に光を当てる。2011年に実施された最新の国勢調査では、先住民族や指定部族は約1億400万人で、インド人口の8.6%を占めるとされている。先住民族の数としては世界最多だ。しかし、これらの部族の権利については、インドの政治においても社会においても、しばしば論争の的となる。国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルは、アディヴァシの権利獲得や彼らの保護を長年訴えてきた。
アムネスティのウェブサイトには、「一連の先住民族保護法はあっても、インドの先住民族は土地の収奪、周辺環境の破壊、ビジネスによる権利の蹂躙などの被害に遭っている」と記載されている。
このプロジェクトは、急速に変化していく部族の今の姿を収めた〈タイムカプセル〉としての役割も果たす。チョタニはインド全土の旅のなかで、伝統が失われている部族もあることに気づいた。たとえばラージャスターン州の部族はいまだに伝統的な衣服をまとっているが、その他の地域の部族の多くが、今は現代的な服装をしている。
先住民族たちの変化は衣服だけでなく、テクノロジー、なりたい職業、食生活にも表れている。チョタニによると、「かなり辺鄙な地域」に暮らす部族でも、テレビや携帯電話が使用されていたそうだ。
「(それらの部族の)若い世代は、都会の文化にかなり影響を受けています。その結果、部族の伝統の多くが滅びることになっています」とチョタニ。「彼らは伝統文化を捨て、都会的な生活様式に急速に染まっていっています」
だからこそ、〈The Last Avatar〉が重要なのだ、と彼は断言する。「このプロジェクトで僕たちは、忘れられゆくものを守ろうとしています。(それぞれの部族の姿を)記録することは、感動的な旅ですね」
This article originally appeared on VICE ASIA.
https://www.vice.com/jp/article/mbmgeq/this-photographer-captures-the-last-living-tribes-of-india

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ボルネオ島 最後の遊牧民プナン族と暮らしたスイス人写真家

2019-09-30 | 先住民族関連
SWI 2019-09-27 08:30
Luigi Jorio (文) & Tomas Wüthrich (写真)
写真家トーマス・ヴュートリヒさんは、ボルネオ島北部のマレーシア・サラワク州の熱帯雨林で先住民族のプナン族(ペナン族)と生活し、彼らの暮らしぶりをカメラに収めた。吹き矢を使った狩猟から熱帯雨林の伐採まで、存亡の危機にあるプナン族の日常を写真で伝える一方、「自分は第二のブルーノ・マンサーではない」と語る。
「やあ、トーマス。一緒にボルネオ島のプナン族のところに行かないか?」
「ブルーノ・マンサー
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が消息を絶ったところ?」
「そう、そこだ」
この会話を機に、フリブール州出身で実家が農家のヴュートリヒさんはボルネオ島サラワク州のジャングルに赴くことになった。ジャーナリストの友人から電話があったのは、2014年のある夏の日のことだった。
「危険であるかどうかは分からなかった。けれど妻と話し合う前に『行く』と言ってしまった」。ベルン州とフリブール州の間に位置する小さな村リエビストルフの自宅の居間で、ヴュートリヒさんはスイスインフォにそう語った。
農場の「死」
家具職人の職業訓練を受け、障害者支援に従事してきたヴュートリヒさんが写真家の道を歩むことになったのは「ほとんど偶然」だった。ケルツェルスで農場を家族経営していた両親が農場の売却を決めた。そこでヴュートリヒさんはカメラを手に、幼少時代を刻んだ農家暮らしの最後の数日を写真で綴ることにした。「農家の世界に強く興味を引かれた。一つの農場の『死』を記録したかった」
その後、ルツェルン州のジャーナリスト専門学校MAZで報道写真家の専門課程を終え、写真記者としてベルナー・ツァイトゥング紙に勤務した。2007年からフリーの写真家として活動。国内紙や外国の雑誌からルポルタージュやポートレートの依頼を受けながら、何とか生計を立てている。「だが、こうした仕事がいつも自分の希望にかなっているわけではない。前々から自分で何かやりたいとは思っていた」と、現在47歳のヴュートリヒさんは言う。
プナン族に出会う
ヴュートリヒさんがサラワク州の土地を初めて踏んだのは14年11月のこと。プナン族に医療サービスを提供するため、3カ月かけて村々を巡回するスイスの救急医に同行した
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約1万人いるプナン族は熱帯雨林に暮らす伝統的な遊牧民族だ。元々は狩猟採集民だったが、現在はその多くが村に定住している。だが民族としてのよりどころは今も森林にある。
この先住民族の実際の暮らしぶりを初めて目の当たりにしたときの衝撃は今でもはっきり覚えている。「故郷を失ったプナン族が、灼熱の太陽に照らされた小屋で定住暮らしをしていた。私はそれを見て、いたたまれない気持ちになった」
前年までジャングルで暮らしていたプナン族のグループに会えたときは嬉しかった。「矢に塗るための毒が取れる木を紹介してくれたり、吹き矢の筒を作るところを見せてくれたりした。素晴らしい体験だった」
ヴュートリヒさんの写真は、9月6日から10月12日までベルンのコルンハウスフォールムで展示される。ヴュートリヒさんは著書「Doomed Paradise(仮訳:絶望的な楽園)」で、ジャングルでの暮らし、森林破壊、現代文明と進歩の影響を紹介している。
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15年に再びボルネオ島に向かったヴュートリヒさんには明確な目的があった。それは、原始林の中でいまだ完全、または部分的に遊牧生活を送るプナン族の暮らしを記録に残すことだった。
プナン族のある村では、原住民のペン・メグトさんが案内人を務めた。ヴュートリヒさんはメグトさんを見て「信じられないほどのカリスマがある」と直感した。ジャングルで育ったメグトさんは技術の進歩を認識し、現代文明の一部を重んじる。それでもプナン族の伝統的な生活様式と今も結びついていることに、ヴュートリヒさんは驚かされた。「心の中では、彼は今も遊牧民なのだ」
木材1トンが21円
ヴュートリヒさんは14年から19年の間で約6カ月間、プナン族と共に暮らし、彼らの言葉を学んだ。客人を温かくもてなす姿勢を尊敬している。「プナン族は控えめな民族だが、とても温かい。客を手厚くもてなし、偏見を持たない。分け合うことが彼らの文化に深く根差しているのには感銘を受けた」
楽しかった思い出の一つが、何日間も歩いた後にようやく未開の森に到達したときのことだ。「みんなで小屋を建て、火を囲んでサゴ(ヤシのでんぷん)と肉を食べた。あたりはセミや森の生き物の鳴き声に包まれていた。あの時のことは忘れられない」

プナン族の危機にさらされた楽園
ボルネオ島では熱帯雨林の伐採により、この島に暮らす遊牧民族プナン族の伝統的な生活様式が危機にさらされている。スイス人写真家トーマス・ヴュートリヒさんは著書「Doomed Paradise(仮訳:絶望的な楽園)」で、ジャングルでの暮らし、森林破壊、現代文明と進歩の影響を紹介している。
滞在を通し、プナン族が抱える問題も認識できた。それは原始林の破壊だ。多くの地域では当局や民間企業による伐採が行われていた。また、資金獲得のためにプナン族が土地を売ることもあった。「木材1トンがたった0.2フラン(約21円)で売られることもある」と、ヴュートリヒさんは悲しげに語る。
広大なアブラヤシ農園が熱帯雨林を犠牲にして作られたことは、サラワク州の暮らしにおいて「最も悲しい」面の一つだと、ヴュートリヒさんは考える。「ブルドーザーの走る速度には恐ろしさを感じる。ものの数分で森に1本の道を切り開いてしまうのだ」
原始林に暮らす先住民と林業大手は不均衡な戦いをしてきた。それでも吹き矢を持った狩猟者たちは勝利を勝ち取った。森林伐採業者は18年、警察に付き添われながらプナン族のバリケードの前に表れ、ブルドーザーのエンジンを切ったのだ。
警察は、ペン・メグトさんの許可がなければこの土地では木は一切伐採できないと語った。メグトさんはスイスの支援で作成された正規地図の所有者だ。「森林伐採者は手ぶらで引き揚げていった」とヴュートリヒさんは言う。
ブルーノ・マンサーの謎多き失踪
ヴュートリヒさんと同様に、ボルネオ島でプナン族を見つめてきたスイス人が過去にいた。バーゼル出身のブルーノ・マンサー
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だ。マンサーは1984年から90年にかけてボルネオ島に暮らし、プナン族の言語、風習、伝統を学び、それらを記録に残した。スイスに帰るとサラワク州の熱帯雨林の保護をテーマに数多くの講演を行った。
不法にブルネオ島に戻ったマンサーは2000年に消息を絶った。05年にはバーゼル民事裁判所から法律上の死亡が宣言された。裁判所は「マレーシア政府および林業の多国籍企業は明らかにブルーノ・マンサーの口をふさごうとしていた」とした。
ブルーノ・マンサー基金
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(BMF)はマンサーの取り組みを今日も続け、熱帯雨林の保護や、森林破壊で危機にさらされる先住民の権利保護を推進している。
マンサーとの共通点もあるが、ヴュートリヒさんは自分が第二のマンサーとは思わない。「今の社会から逃げているわけでも、マンサーのように森に引きこもりたいわけでもない。私の家族も生活基盤もスイスにある」と強調する。
ヴュートリヒさんは、森林地図作成プロジェクトなどBMFの類まれな活動を高く評価する一方、マンサーが時折誤って伝えられているのは残念だと考える。例えばマンサーはバリケードの前に立っていたとされるが、実際はそうではなかった。マンサーについての新作映画
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が今月26日にチューリヒ映画祭でワールドプレミアとして上映されたが、同作品中にもそのような演出はない。
「マンサーの功績は、プナン族のさまざまなグループを統一し、協働して反対運動を繰り広げたことだ。しかしマンサーはあえて表に出ないようにしていた」とヴュートリヒさんは言う。
絶望的な楽園
ヴュートリヒさんはプナン族との交流を単なる思い出にとどめなかった。ジャングルや村々で撮影した写真の一部を著書「Doomed Paradise
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(仮訳:絶望的な楽園)」に掲載したほか、同じ題名の展示会を9月初旬にベルンのコルンハウスフォールム
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で開催し、同著を紹介した。
「ペン・メグトとは友人になった」とヴュートリヒさん。「プナン族の暮らしを世界に向けて語ってほしいと頼まれた。美化した写真でジャングルの生活を伝えたくはない。現代文明の影響も紹介しようと思っている」
ヴュートリヒさんは理想主義者ではない。森林や、自然に密着した暮らしが危機にさらされている一方、自分の写真で世界が変わるとは考えない。「それでもすべてがつながっていることを人々に知ってもらいたい。私たちがパーム油を使用すればプナン族に影響が及び、森林を伐採すれば気候に影響が及ぶ」
ボルネオ島の古き遊牧民と同様に、ヴュートリヒさん自身も変わった。ジャングルでの経験を通し、未来への不安は薄れたという。「今は以前よりも心穏やかに暮らしている。自分が持っているものは人と分け合っている。見知らぬ人に自宅を開放し、難民申請者を受け入れている」
(独語からの翻訳・鹿島田芙美)
https://www.swissinfo.ch/jpn/ボルネオ島_最後の遊牧民プナン族と暮らしたスイス人写真家/45258030

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