北海道新聞 09/30 05:00
【帯広】帯広市が2020年度にスタートする第7期総合計画(29年度まで)の策定に向け、模索を続けている。地方自治法の改正で計画の軸となる基本構想の策定義務が撤廃され、各自治体が主体的に計画づくりを進める中で、市は市民に分かりやすい内容にして、市政への住民参加を促したい考えだ。7月に公表した素案では盛り込む施策数を減らして施策ごとにキャッチフレーズも付けたが、市議会からは「内容が抽象的で分かりづらくなった」と批判も出ている。
「読んで分かりやすく、市民に関心を持ってもらえる内容にしたい」。米沢則寿市長は9月の定例記者会見で、次期総合計画の策定に強い意欲を示した。
総合計画は一般的に、行政運営の基本理念などを示す「基本構想」、施策の概要を示す「基本計画」、具体的な実施事業を示す「実施計画(帯広市は推進計画)」で構成される。地方自治法で市町村に基本構想の策定が義務付けられていたが、11年の改正で自治体の裁量に任されることになった。
総合計画はまちづくりの最上位計画に位置づけられてきたため、全国のほとんどの市町村は法改正後も基本構想を軸に総合計画を策定している。自治体の裁量が拡大し、住民参加に重点を置いた計画づくりを進める市町村もある。十勝管内では清水町が、21年度からの次期総合計画を策定するため、無作為抽出で選ばれた町民約50人による協議会を9月に立ち上げた。
帯広市は法改正前の07年にまちづくり基本条例で計画の策定を定めている。ただ、人口減少や地方分権が進む実情を踏まえ、「右肩上がりではない時代に、市民と共にまちづくりを進める重要性は増している」(企画課)として、「分かりやすい」計画づくりを掲げた。
■市民の共感を重視
市は7月に基本構想と基本計画の素案を公表。基本計画の施策数は現計画の50から集約を図って23に半減し、基本構想などの記述も整理しコンパクト化した。企画課は「変化する時代に10年先を見定めるのは難しい。基本構想や基本計画は、大まかな指針を示すものに整理した」と説明する。
また市民の共感を得ようと各施策に、「障害者福祉の充実」には「バリア(障害)をバリュー(価値)に変える」、「地域産業の活性化」には「『とかちのかち』を創り続ける」などキャッチフレーズも付けた。
しかし、市議会の総合計画特別委では素案に対し、「簡素化を図るあまり、分かりづらくなった」などの声が相次いだ。現在の計画にある「アイヌの人たちの誇りの尊重」「青少年の健全育成」といった施策が消えたことや、農村地域に関する記述が一部省略されたことなど、多くは説明が足りない部分への批判だ。
■「やるなら書いて」
市は素案に盛り込んだ施策「多様な主体が活躍する地域社会の形成」に触れ、「アイヌ民族を含む誰もが活躍できる地域を目指すという意味」と説明。それ以外の指摘にも「今後示す推進計画で取り上げる」などとするが、市議からは「書いてないけどやります、ではなく、やるなら書いてほしい」と不満が漏れる。
市企画課は「簡略化することが目的ではない。市民に分かりやすい計画にするためにどうすれば良いか、検討を重ねたい」と話す。
地方自治に詳しい札幌大の浅野一弘教授は「分かりやすくという新たな発想は評価できるが、結果的に抽象的になっていないか」と指摘した上で、「施策を詳しく書き込む従来型の計画に加え、住民向けの概要版をつくってはどうか」と提案している。(東野純也)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/349673
【帯広】帯広市が2020年度にスタートする第7期総合計画(29年度まで)の策定に向け、模索を続けている。地方自治法の改正で計画の軸となる基本構想の策定義務が撤廃され、各自治体が主体的に計画づくりを進める中で、市は市民に分かりやすい内容にして、市政への住民参加を促したい考えだ。7月に公表した素案では盛り込む施策数を減らして施策ごとにキャッチフレーズも付けたが、市議会からは「内容が抽象的で分かりづらくなった」と批判も出ている。
「読んで分かりやすく、市民に関心を持ってもらえる内容にしたい」。米沢則寿市長は9月の定例記者会見で、次期総合計画の策定に強い意欲を示した。
総合計画は一般的に、行政運営の基本理念などを示す「基本構想」、施策の概要を示す「基本計画」、具体的な実施事業を示す「実施計画(帯広市は推進計画)」で構成される。地方自治法で市町村に基本構想の策定が義務付けられていたが、11年の改正で自治体の裁量に任されることになった。
総合計画はまちづくりの最上位計画に位置づけられてきたため、全国のほとんどの市町村は法改正後も基本構想を軸に総合計画を策定している。自治体の裁量が拡大し、住民参加に重点を置いた計画づくりを進める市町村もある。十勝管内では清水町が、21年度からの次期総合計画を策定するため、無作為抽出で選ばれた町民約50人による協議会を9月に立ち上げた。
帯広市は法改正前の07年にまちづくり基本条例で計画の策定を定めている。ただ、人口減少や地方分権が進む実情を踏まえ、「右肩上がりではない時代に、市民と共にまちづくりを進める重要性は増している」(企画課)として、「分かりやすい」計画づくりを掲げた。
■市民の共感を重視
市は7月に基本構想と基本計画の素案を公表。基本計画の施策数は現計画の50から集約を図って23に半減し、基本構想などの記述も整理しコンパクト化した。企画課は「変化する時代に10年先を見定めるのは難しい。基本構想や基本計画は、大まかな指針を示すものに整理した」と説明する。
また市民の共感を得ようと各施策に、「障害者福祉の充実」には「バリア(障害)をバリュー(価値)に変える」、「地域産業の活性化」には「『とかちのかち』を創り続ける」などキャッチフレーズも付けた。
しかし、市議会の総合計画特別委では素案に対し、「簡素化を図るあまり、分かりづらくなった」などの声が相次いだ。現在の計画にある「アイヌの人たちの誇りの尊重」「青少年の健全育成」といった施策が消えたことや、農村地域に関する記述が一部省略されたことなど、多くは説明が足りない部分への批判だ。
■「やるなら書いて」
市は素案に盛り込んだ施策「多様な主体が活躍する地域社会の形成」に触れ、「アイヌ民族を含む誰もが活躍できる地域を目指すという意味」と説明。それ以外の指摘にも「今後示す推進計画で取り上げる」などとするが、市議からは「書いてないけどやります、ではなく、やるなら書いてほしい」と不満が漏れる。
市企画課は「簡略化することが目的ではない。市民に分かりやすい計画にするためにどうすれば良いか、検討を重ねたい」と話す。
地方自治に詳しい札幌大の浅野一弘教授は「分かりやすくという新たな発想は評価できるが、結果的に抽象的になっていないか」と指摘した上で、「施策を詳しく書き込む従来型の計画に加え、住民向けの概要版をつくってはどうか」と提案している。(東野純也)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/349673