VOGUE JAPAN 2019年9月9日

マラケシュの街でモロッコ文化に浸った後は、自給自足で暮らす原住民が暮らす山間の村へ。大自然が広がる原風景と、観光旅行では出会える術もない現地の人々の生活を垣間見た。※パート1、パート2はこちらから。
原住民が今も暮らす、自給自足の村へ。
マラケシュの中心地から四駆に乗り換え、モロッコの先住民族であるアマジグ人が暮らす村、オリカへと向かう。2時間ほど車を走らせると周りの景色は一変し、荒々しい山道に。地元の熟練ドライバーだから走れるあまりに細い山道を登り続けると、ほど近くに美しいアトラス山脈が見えてくる。
山の中腹でひとつ集落を通り過ぎ、山頂の村に辿り着いた。ここは約600年ほど続く村で、今住んでいるのは27代目となるアマジグ人たちだ。今回、ホストがこの村のアソシエーションと繋がりがあった関係で、訪問が実現した。参加者たちは、村の入り口にあるゲストハウスに滞在することになっている。
村のガイドに集落の案内をしてもらうと、地元の子どもたちが楽しそうに覗きに来た。2011年までは水道もなく、今もなお自給自足で暮らしているのだという。集落の前は畑になっており、羊を追い立てる少年がいたり、鶏が飼われていたり、原風景が広がる。今は女性たちがラグを作って街に卸したりもしているそうだ。家々の途中にある広場は、結婚式やイベントごとを行う場所だという。大都会であるマラケシュのメディナとはまた異なる、在りし日の人々の暮らしが見える。
山頂を行く、絶景ハイキング。
村の見学を終えた後は、そのまま裏手に広がる、ヤーグルという名の山でハイキング。まさに「アドベンチャー」な体験だ。峠のような平地を楽しく歩くのかと想像していたところ、とんでもなく高低差のある山道を登ったり下ったり、時には沢を越えたりとなかなかハードな道のりをいく。
モロッコ人はこの自然に溶け込むハイキングが大好きだそうだ。マラケシュに住むホストも、休みの日には友人たちと頻繁にハイキングに出かけるのだという。往復約3時間のハイキングは、今まで見学していた村を眼下に見ることもできた。放たれた馬が草を貪っていたり、村の子どもが沢に飛び込んで遊んでいたり、都会やリゾートでは見ることができない風景に癒される。
いざ、モロッカンクッキング!
最近の旅の人気コンテンツのひとつといえば、その国の料理を学ぶことだという。そしてこのアドベンチャーでも、モロッカンタジンを作るチャンスがやってきた。教えてくれるのは、元々シェフだったという、ホストの実の母だ。 プロの手際の良さで、家庭で作れるミートボールタジンに挑戦。
オニオン、オリーブオイル、ガーリックにトマトを刻み、そこに大量のスパイスを加えて火にかける。ターメリック、ブラックペッパー、クミン、ベイリーフ、コリアンダーがタジン料理の秘訣。グリンピースを加え、最後にミートボールを入れて煮込むこと計45分で夕食が完成。自家製のパンと砂糖たっぷりのミントティーとともにお手製の夕食を頬張った。
夜は12室あるゲストハウスでそれぞれ就寝。部屋数に限りがあるため、一人で参加してもここでは相部屋になるかもしれない。そもそもここまで一緒に旅をしていると、まるで修学旅行のような気分にもなってくる。パブリックスペースでミントティーを飲みながら、ツアーに参加している各国の人と語り合うのもまた一興だ。
67歳の女性の暮らしとは? ローカルの家に招かれて。
一晩を過ごした村を離れ、次に向かったのは人口3000人ほどのもう一つの村へ。ホストの友人の親族だという、マハリジャさんの自宅に招かれて、モロッコの典型的な朝食、ミントティーと自家製パンをいただきながらの質問タイムに。世代も人種も異なる人のプライベートな話を聞けるというのは、旅行者にはまたとない機会だ。
67歳の彼女の話は興味深いものだった。1日はお祈りからスタートし、まずはスープとコーヒー、ミントティーで1度目の朝食、3匹の牛に草をあげたらパンを作って2度目の朝食(モロッコでは2度の朝食が一般的なのだとか)、掃除をしたり昼寝をしたり、友人に会ったりして日中を過ごしているという。4人の子供が独立し、夫が亡くなって以来ずっと一人暮らしだが、親密なコミュニティであるこの村での暮らしには何の問題もない。しかし昔は女性は家の外に出るだけでも男性の許可と付き添いが必要だったという。それに比べて今は初めて自分の人生を生きている気がする、と笑っていた。「もし今のままあの頃に戻れるなら、結婚なんてしないでバイクで旅に出るの!」と話していたのも印象的だった。
再会を願ったダンス&ヘナタトゥーでお別れ。
そして最後は、サウスアフリカ音楽のダンスパーティーでお別れを。民族音楽に合わせて踊って歌ってこれまで一緒に過ごしてすっかり仲良くなったホストとアドベンチャーの仲間に別れを告げた。
フナ広場などの露店でも人気のヘナタトゥーは、本来は家に招いた客を見送る際に、両手に施すものだという。自宅から家族や友人までを巻き込んで案内してくれたホストとの別れを惜しんで入れてもらったヘナタトゥーは、帰国してからも10日ほど肌に残り、貴重な出会いと体験を思い出させてくれた。
Airbnb アドベンチャー
「モロッコでメディナ旧市街&山体験」
https://www.airbnb.jp/experiences/334075
・実際のアドベンチャーの内容は異なる場合があります。
Editor: Saori Asaka
https://www.vogue.co.jp/lifestyle/article/2019-09-morocco03