AFPBB News / 2019年9月16日 14時44分
【AFP=時事】アマゾン(Amazon)に日が落ちる頃、狩猟を生活手段としている先住民ウルエウワウワウ(Uru-eu-wau-wau)がイノシシの脇腹から竹の矢を引き抜き、肉をあぶり始めた。
繊細で神聖な暮らしが繰り広げられるこの地の反対側の境界線から数キロ離れたところでは、馬に乗ったカウボーイが広大な牧場で牛を集めている。
ブラジル・ロンドニア(Rondonia)州中部の住民19人が暮らす集落を率いる若き指導者ウルエウワウワウのアワピーさん(38)は、「彼らとは何の問題も起こっていない」と話す。
この地域では、世界最大の熱帯雨林の行く末をめぐり裕福な土地所有者と先住民が激しく対立しており、このような友好的表現を聞くことはめったにない。
180ヘクタールに及ぶ資源豊かな先住民の居住区は、開発のためなら森林伐採さえもいとわない木材業者や土地所有者、鉱山業者といった脅威に絶えずさらされてきた。
「19~20歳の頃から侵略に直面してきた。彼らは脅威だ。なぜなら私たちは抵抗しているからだ」とアワピーさんは話す。「命を危険にさらすことを恐れてはいない。それしか方法がない」
七つの集落があるこの居住地で暮らす数百人の住民の抵抗の歴史は長い。自然の番人を自負し、森を監視したり脅威から身を守ったりするため、1990年代初頭に定められた土地の境界線上で暮らす人が多い。
アワピーさんの村には、わらぶき屋根の木造家屋やタイル屋根のコンクリート家屋など6軒ほどの小さな家がある。村に住む5家族はほぼ森の外側で暮らしているが、毎日、森で狩りをしたり、必要な時には侵入者を追い払ったりしている。侵入者は組織された集団であることが多く、対立が暴力に発展することもよくあるという。
州都ポルトベーリョ(Porto Velho)の南に位置するこの地域では、森林破壊が進んでいることを示す新たな開拓地や草地が上空から確認できる。火災による森林破壊も多く、最近も世界的なニュースとなった。
■「動物園の動物」
複数のNGOによると、こうした土地には国の目が行き届いておらず、ギャングの温床となったり、土地の占拠が行われたりしている。最終的にそのような土地は畜産農場の一部に組み込まれることも多い。
ウルエウワウワウの人々は、1月にジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)氏が大統領に就任して以降、侵入者らは自分たちが守られているように感じているようだと話す。ボルソナロ氏は先住民の保護区を農業や鉱業のため開放するという考えを支持しており、就任演説では、先住民は社会に統合される必要があり、「動物園の動物のように」保護区で暮らすべきではないと述べた。
「以前はこんなことはなかった。だが今、彼らはすべてを切り払おうとしている」とアワピーさんは話す。
■牛肉、聖書、銃弾
森林に沿って車で1時間半ほど走ったところにある小さな町モンテネグロ(Monte Negro)では、農業関連業者がロデオを開催しており、約20人のカウボーイが技を競い合っていた。
カウボーイハットにジーンズ、ブーツ姿の参加者は、数十年間にわたり切り開いた森に整備した広大な畜産農場で働いている。
この地域は保守的な田舎町で、ボルソナロ氏の地盤となっている。住民は「牛肉、聖書、銃弾」の頭文字を示す「BBB」と呼ばれる層に属している。農業関連産業、キリスト教福音派、銃支持ロビー団体というこれら三つの強力な利益団体が、ボルソナロ氏を権力の座に押し上げるのに一役買ってきた。
環境保護団体らは、よそ者に対し横柄で用心深い土地所有者が公有地や先住民居住区に損害を与えており、アマゾンで進む破壊の責任の一端を担っていると非難している。
だが、土地所有者らは、先住民の土地との境界線は守っており、自分たちには土地を開発する権利があり、農業の発展がブラジル経済にとって重要だと主張している。
■「アマゾンはわれわれのもの」
自分が育てた牛を売り込むためにロデオに来ていたある農場主は、個人的な意見だとしながら、森の木を伐採し、木や土地を売っているのは先住民自身だと語った。
また、メディアは森林火災の拡大を大げさに伝えていると主張する土地所有者もいる。彼らはエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領が先月、アマゾン熱帯雨林の保護を「国際化しよう」と呼び掛けたことをあざ笑っている。
ある土地所有者はこう言った。「アマゾンはわれわれのものだ。マクロンにそう伝えろ!」
【翻訳編集】AFPBB News
https://news.infoseek.co.jp/article/afpbb_3243306/