雨がふっています。糸のような春の雨です。
木槿(むくげ)がうすみどりの葉っぱをたくさん、つけはじめました。
『木槿の咲く庭 スンヒィとヨテルの物語』(リンダ・スー・パーク・新潮社)という作品があります。日本軍が朝鮮総督府で朝鮮を支配していたころの朝鮮人の暮らしを描いた感動的な作品です。韓国系アメリカ人二世の作家が、祖母たちから話を聞き、丹念に調べ上げ、書いたものです。
その作品に惹かれ、昨年、この木槿の木を買ってきました。
木槿は、韓国の国花だそうです。
秋には、そんなあでやかな木槿の花も散り落ち、葉も落ち、すっかり丸坊主になってしまいました。丸はだかになった細い枝は、植木鉢のなかで踏ん張り、ひと冬を越しました。
春。
気がつくと、うすみどりの新しい葉っぱがたくさんついています。
木槿の細い木は、つめたい雪も、厳しい北風も、なにもかもを乗り切って、春をむかえてくれたのです。
暖かくなるにつれ、固い幹が、だんだんとうすみどり色に染まっていく様子を、祈るような気持ちでみていたので、なんだかとてもうれしいです。