20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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『ぴっつんつん』(もろかおり絵・武鹿悦子文・後路好章構成・くもん出版)

2010年05月15日 | Weblog
 色鉛筆で描かれた赤いかっぱ、赤い傘、赤いながぐつの女の子が、31色の色鉛筆の線の散らされた雨のなかを、ぽつんとひとり佇んでいます。
 
 ページを繰ると、ぴょこっと女の子が動き出します。
 同時に擬音語も、跳びはねます。
 さらにページを繰ると、水たまりをちゃぷちゃぷ踏みしめた女の子が4人。
 そして擬音語も、そのあとを追いかけていきます。
 ページを繰るごとに女の子たちの数は増え、雨ふりなのに、あたりはカラフルで賑やかになります。
 と、そのうち、さしていた傘がくるくると渦巻きのように・・・。
 追いかけてくる擬音語も、雨の音から傘がくるくる回る音に。
 
 圧巻なのは、絵と言葉の追いかけっこがわーっと高まっていくところ。
 そんな物語の臨場感にドキドキしていると、とつぜん場面がかわります。
 いつのまにかみんな、どろんこ、まっくろけ。
 でも、笑っています。みんな、みんな。
 ページを繰る手がとまり、ドキドキしてきます。心のどこかをゆさぶられます。
 ひとりぼっちの雨の日が、こんなにもアグレッシブで、そして楽しくひろがっていくなんて!

 そしてこの絵本がすごいのは、ラストの余韻。
 楽しく遊んだあとひとりぼっちになった女の子の、満たされた表情と、傘の先っぽ遊び。
 
 いやはや、見事な構成の絵本です。
 すごい絵本が、生まれました。
コメント (6)
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