20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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ソウルの夏

2011年07月22日 | Weblog
           

 白い木槿の花をみるたびに思い出すのが、もう二十数年前に、夏のソウルで見た光景です。

 息子が高校生、娘が中学生だった夏休み、私たち家族はソウルに遊びに行きました。
 いまのような韓流ブームがまだ起きる前でしたので、なぜソウルだったのかよく覚えていませんが、その頃はまだ「遠くて近い国」だった韓国に行ってみたいと思ったのかも知れません。

 ソウルの町の真ん中にある王宮・景福宮をさえぎるように建っていたのが、朝鮮民族の屈辱の歴史の象徴である朝鮮総督府でした。
 そこで私たちはひとりのおじいさんに声をかけられました。そのおじいさんは韓流時代劇ドラマに出てくるような帽子をかぶり、白い正装をしている人でした。
「日本人ですか?」
 流暢な日本語で、そのおじいさんは、日韓併合でいかにたいへんな思いをしたか、語り始めました。
 日本人として、つらく胸をひきちぎられるような話を聞いていた私たちのそばに咲いていたのが、この白い木槿の花でした。

 日本軍が朝鮮に侵攻し統治するための拠点であった朝鮮総督府は、その当時、国立中央博物館として建物内部も開放されていました。ですから私たち家族はそのなかもすべて見てきました。

 その朝鮮総督府も、いまから五~六年前、仕事仲間である「水質調査隊」で、K社の編集者のKさんのご案内で(彼はハングルがぺらぺらで、すごい韓国通なのです)ソウルに行った時は、影も形もなくなっていて、ソウルは東京のような近代都市になっていました。
 屈辱の歴史の象徴である朝鮮総督府の建物は、1996年までに完全撤去されたそうです。

 韓流時代劇ドラマを見るたび私は、あのときのおじいさんの姿と、この白い木槿の花を思いだし、日韓の歴史について、少しだけ考えます。
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