まだ拝読し終えていないご本もあります。もうしばらくお待ち下さい。
本日は4冊の新刊をご紹介いたします。
『木工少女』(濱野京子・講談社)
1年間限定で山奥の学校に引っ越してた小六の美楽が、その村の人たちと触れ合う中で、また木工職人の「デン」さんとの出会いにより、そこでの暮らしを愛おしく思う過程を描いています。
おもしろいのは、登場人物たちのキャラクター。それぞれが実にキャラが立っています。
特に「デン」さんと食べるスナック菓子(例えばじゃがりこ)のあれこれは、ふたりをつなぐための小道具として、見事に精細を放っています。
こういうところが、濱野さんの上手さです。
また「美楽」のキャラにも惹かれますし、「デン」さんのキャラや、ふたりが木工をしているその様子や、木の匂いまで伝わってきます。
軽妙なタッチで描いている作品ですが、そのなかにキュンとさせられる描写もこめられていたりして・・・。
また、その村を牛耳っている家の同級生のおじょうさまにも少女マンガ的リアリティがあったり。
とにかく、まだ拝読し終えていない(ごめんなさい)、壮大なファンタジー作品である『白い月の丘で』(濱野京子・角川書店)などリアリズムでもファンタジーでも、確かな筆致で縦横無尽に書き上げる濱野京子さんの底なしの才能には、驚嘆するばかりです。
『手のひらにザクロ』(田部智子・くもん出版)
「ものの声」の聞こえる体質を持った少女、「花」と、仏像マニアのお寺の息子の耕太郎。
ある日、そのお寺の墓地の奥地から国宝級の仏像が発見されました。
それをおばさんと取材にいった「花」は、期せずして「ここにいたい・・・」という仏像の声を聞いてしまいます。
その声を手がかりに、花と耕太郎の仏像を守る作戦が・・・。
そのとき、その仏像の手からザクロの粒が落ち・・・・。
物語の背景には、かつての戦争のときの空襲で亡くなった人たちのことがあります。
防空壕のなかで、赤ちゃんを抱いていた女の人が、その赤ちゃんと引き離され空襲にあったこと。
国宝級の秘仏である、詞梨帝母(かりていも)さまがみつかったとき、そのそばに赤ちゃんとおぼしき子どもの骨があったということ・・・・。
ファンタジーからリアリズムまで幅広く手がけていらっしゃる田部さんの、不思議でステキなお話です。
『お笑い一番星』(牧野節子・くもん出版)
お笑い好きの牧野さんの面目躍如ともいえる一冊です。
お笑いが好きなのに、引っ込み思案のトシオは、「すべり芸人」といわれている「昼間正午」通称「ヒルショウ」の大ファン。
ある日トシオは、同じく「ヒルショウ」好きの、イケメンで芸人を目指してしるという「トビ太」に出会います。
そしてふたりでお笑い芸人の養成所に入ることに・・・・。
早くに父親を亡くし母親とトシオは二人暮らしです。
そんなわけで、母親がふたつの仕事を掛け持ちして、月謝を工面してくれているのですが、その母親が過労で倒れ・・・。
払えなくなった月謝を払ってくれたのは、なんと「ヒルショウ」
そこから、トシオは亡くなった父親のことを知ることになります。
失敗しながらも楽しく、芸人になる道を進む、トシオとトビ太のひたむきさに惹かれます。
間にでてくる、関西弁のしゃべりには、思わず感心してしまいました。
牧野さんはもう音感として、お笑いのしゃべりが、体に染みついているようです。帯には、お笑い芸人「はんにゃ」の顔写真と推薦文も。
元気になる一冊です。
『男子弁当部』(イノウエミホコ・ポプラ社)
『男子弁当部』シリーズ第二弾です。
家庭科男女共修の時代、男の子たちが夢中になってお弁当を作るというシチュエーションが新しいです。
今回は、自ら農業をやっている「ジュキ」に影響されながら、野菜のもつ本来の味を引き出すお弁当作りに挑んでいくまでの、ユウタさちの葛藤が描かれています。
イノウエミホコさんの元気さと豪快さが、ご本のすみずみからぴちぴちと音をたてるように響いてくるようです。
とうもろこし(味甘)を生でかぶりつくシーンは、こちらにも甘さが伝わってくるようでした。
ラスト、ユウタたちが生み出したお弁当は「ほくほくかぼちゃごはん」と、トマトをくりぬき、カップした中にいれたラタトゥイユ。
はじめに夕やたちが作ったラタトゥイユを見たときは、「ジュキ」のように「なんじゃこれは?」と思いましたが、ラストは納得。
ちなみに、私のお気に入りのラタトゥイユは、オリーブオイルにニンニクをみじん切りにしたものをいれ、そこに鶏肉を切ったものを炒め、そこにタマネギ、セロリ、茄子、人参、ズッキーニ、パプリカの乱切りにしたもの、皮むきの細かく刻んだトマトをいれます。隠し味はシーチキンの缶詰(こくがでます)そこにコンソメと、軽く塩・胡椒をふり、あとはコトコト煮るだけ。
と、そんな風に思わず触発されこんなことを書いてしまう、男子弁当部の奮闘ぶりの物語でした。
皆さま、この4冊、ぜひお読みになってください。