ご恵贈いただいたまま、文学賞の怒濤の本読みに入ってしまったため、ご紹介の遅れていたご本を随時、ご紹介させていただきます。
まず今日は、この新刊4冊のご紹介を。
『けむり馬に乗って』(小川英子・業文社)
なんとも大胆不敵な構想の作品です。
おまけに、小川英子という作家はじつに博学な人です。
この作品でも、なんとシェークスピアと信長を、時空を越え、コラボレートさせてしまったのですから。
前半はシェイクスピアの少年時代が語られます。
また、凝っているのが章立ての下のキャプション。
「伊勢物語」だったり、ローマ教皇の言葉であったり、小川英子さんという人は実に衒学者・・・いえ、けっしてひけらかしていらっしゃるわけではありません。ただ凡人にはわかりにくいとも思える言葉が記されているところなど、彼女の美意識満載のご本です。
エリザベス女王と共に信長の世界へタイムスリップするあたりから、舞台は日本へ。
いやはや壮大なスケールのファンタジーです。
彼女の知識を楽しむことも、物語を楽しむ以外のもうひとつの方法です。
『チャンスの神さま』(藤田千津・文研出版)
大好きな桜田かおりちゃんと、おしゃべり出来るようになることを春休みの目標にしていたぼくは・・・。
そんなかおりちゃんとぼく。そして親友の純ちゃんとの関係を縦軸に、横軸には、おじいちゃんが死んじゃって一人暮らしですっかり元気をなくしていた、おばあちゃんが「シルバータレント」を目指すべく、がんばっている姿を。
そのおばあちゃんに教えてもらった「チャンスの神さまの前髪」をつかまえようと「ぼく」はがんばろうと思うのですが、どうもうまくいきません。
おばあちゃんは、黒く染めていた髪を、染めるのをやめて真っ白にして次々とチャンスの神さまの前髪をつかんでいます。
親友の「純ちゃん」のお肉屋さんの家族や、そんなおばあちゃんと、おもしろいキャラクターを配しながら、楽しい物語は進んでいきます。
ところで、かおりちゃんとおしゃべりできるようになったかって?
それは読んでのお楽しみ・・・!!
『つのかくし』(高田桂子・文溪堂)
旅人を好きになってしまった『姉さ』が、冬山で「つのかくし」をかぶった姿で凍死した姿で見つかりました。
そばには元気に泣く赤ん坊の姿が。
その赤ん坊「太郎」はぐんぐん大きくなり・・・。
民話風物語を、高田桂子さんのうつくしい叙情性と、確かな筆の力で読まされます。
圧巻なのは、けやきが自分の体をよじり、樹液をしぼって生白い乳を出し、それを赤ん坊に飲ませ、生き延びさせたというシーン。
けやきは、それを決して犠牲的精神などという安易な言葉で自らを括りません。
「おもしろかったから」と。
そして雄々しかったけやきは、やせ細り・・・。
ある意味、うつくしくも、切なく、おそろしい物語世界です。
杉浦範茂さんの絵が、さらに、それを際立たせています。
『UFOはまだこない』(石川宏千花・講談社)
同学年の生徒や、また先生たちからも一目おかれる土屋亮太と、宮城公平。いわば無敵のコンビです。
その公平が中学に入ると同時に、すっかり変わってしまいました。
授業中、「宇宙からの交信が入ったみたいなんで、ちょっと屋上にいってきていいですか」なんて、悪ふざけかと思うような突飛な行動をするようになったのです。
しかしそれは突飛でもなんでもなく、取り残された亮太は焦るばかり・・・。
なぜ公平はそんなふうにとつぜん、変わったのか。
それをおいながら中学生たちの姿が、語られていきます。
読みながら、どこかデジャヴみたいな感覚が・・・。
そう石田衣良の『4TEEN』(新潮社)が脳裏を過ぎったのです。
石川さんが、必死に「今」の中学生たちをつかまえようとしている喘ぎが、ここからは伝わってきます。
皆さまどうぞ、この4冊、お読みになって下さい。
まず今日は、この新刊4冊のご紹介を。
『けむり馬に乗って』(小川英子・業文社)
なんとも大胆不敵な構想の作品です。
おまけに、小川英子という作家はじつに博学な人です。
この作品でも、なんとシェークスピアと信長を、時空を越え、コラボレートさせてしまったのですから。
前半はシェイクスピアの少年時代が語られます。
また、凝っているのが章立ての下のキャプション。
「伊勢物語」だったり、ローマ教皇の言葉であったり、小川英子さんという人は実に衒学者・・・いえ、けっしてひけらかしていらっしゃるわけではありません。ただ凡人にはわかりにくいとも思える言葉が記されているところなど、彼女の美意識満載のご本です。
エリザベス女王と共に信長の世界へタイムスリップするあたりから、舞台は日本へ。
いやはや壮大なスケールのファンタジーです。
彼女の知識を楽しむことも、物語を楽しむ以外のもうひとつの方法です。
『チャンスの神さま』(藤田千津・文研出版)
大好きな桜田かおりちゃんと、おしゃべり出来るようになることを春休みの目標にしていたぼくは・・・。
そんなかおりちゃんとぼく。そして親友の純ちゃんとの関係を縦軸に、横軸には、おじいちゃんが死んじゃって一人暮らしですっかり元気をなくしていた、おばあちゃんが「シルバータレント」を目指すべく、がんばっている姿を。
そのおばあちゃんに教えてもらった「チャンスの神さまの前髪」をつかまえようと「ぼく」はがんばろうと思うのですが、どうもうまくいきません。
おばあちゃんは、黒く染めていた髪を、染めるのをやめて真っ白にして次々とチャンスの神さまの前髪をつかんでいます。
親友の「純ちゃん」のお肉屋さんの家族や、そんなおばあちゃんと、おもしろいキャラクターを配しながら、楽しい物語は進んでいきます。
ところで、かおりちゃんとおしゃべりできるようになったかって?
それは読んでのお楽しみ・・・!!
『つのかくし』(高田桂子・文溪堂)
旅人を好きになってしまった『姉さ』が、冬山で「つのかくし」をかぶった姿で凍死した姿で見つかりました。
そばには元気に泣く赤ん坊の姿が。
その赤ん坊「太郎」はぐんぐん大きくなり・・・。
民話風物語を、高田桂子さんのうつくしい叙情性と、確かな筆の力で読まされます。
圧巻なのは、けやきが自分の体をよじり、樹液をしぼって生白い乳を出し、それを赤ん坊に飲ませ、生き延びさせたというシーン。
けやきは、それを決して犠牲的精神などという安易な言葉で自らを括りません。
「おもしろかったから」と。
そして雄々しかったけやきは、やせ細り・・・。
ある意味、うつくしくも、切なく、おそろしい物語世界です。
杉浦範茂さんの絵が、さらに、それを際立たせています。
『UFOはまだこない』(石川宏千花・講談社)
同学年の生徒や、また先生たちからも一目おかれる土屋亮太と、宮城公平。いわば無敵のコンビです。
その公平が中学に入ると同時に、すっかり変わってしまいました。
授業中、「宇宙からの交信が入ったみたいなんで、ちょっと屋上にいってきていいですか」なんて、悪ふざけかと思うような突飛な行動をするようになったのです。
しかしそれは突飛でもなんでもなく、取り残された亮太は焦るばかり・・・。
なぜ公平はそんなふうにとつぜん、変わったのか。
それをおいながら中学生たちの姿が、語られていきます。
読みながら、どこかデジャヴみたいな感覚が・・・。
そう石田衣良の『4TEEN』(新潮社)が脳裏を過ぎったのです。
石川さんが、必死に「今」の中学生たちをつかまえようとしている喘ぎが、ここからは伝わってきます。
皆さまどうぞ、この4冊、お読みになって下さい。