「9」のつく日は空倶楽部の日。
金沢の夏、長い梅雨が明けたとたん思わぬ猛暑となった。
それは数字の上でも明らかで、8月7日、金沢での最高気温は38℃、
さらに、となりのかほく市では39℃と地点観測史上もっとも高い気温を記録したというから、
この日に限るなら、金沢近郊は日本でいちばん暑い地域となったようだ。
ところが、その猛暑も盆に入った途端、急になりを潜めた感がある。
「山の日」、陽が傾き始めた頃に立ち寄った日本海。
ときおり大きな波が打ちつけてくる。
いわゆる土用波だ。
「土用波が立つとクラゲがやってくる」
私が子供の頃、この時期になっても夏休みの宿題に手もつけず、
海水浴へ連れて行け、とせがむと親にこう諭されたものだ。
宿題やクラゲのせいだけではない。
高くなった波に水難事故を心配してのことだったと思うが、
現に北陸の「海の家」は盆が終わると店じまいを始める。
さて、毎年この時期になると持ちだすお気に入りの話題がある。
数年前にある新聞のコラム欄で知った、
太宰治の創作ノート「ア、秋」の一節、”秋ハ夏ト同時ニヤッテ来ル”のことである。
いわく、
「夏の中に、秋がこっそり隠れて、もはや来ているのであるが、
人は、炎熱にだまされて、それを見破ることが出来ぬ。」
夏から秋へと移り変わる季節のあいまいさを太宰なりのユーモアでもって表現したものだが、
この文章を知って以来、この時期、夏の風景の中に秋を探すようになった。
そして今年。
北陸の秋はこの土用波にこっそり隠れてやってきたようだ。
夏から秋へと移ろうとする海をながめていると思いだす和製ポップス。
平山みき - 真夏の出来事
アンニュイ...というか
やる気なさげな歌い方に当時はずいぶんと魅力的なお姉さんを感じたものだった。