折にふれて

季節の話題、写真など…。
音楽とともに、折にふれてあれこれ。

ティファニーで朝食を  午前十時の映画祭から

2016-04-14 | 折にふれて

「午前十時の映画祭」

毎日午前10時から、1950年から1970年代の洋画を中心に

週替わりで(時には2週に渡って)上映する企画だ。

数年前に、アメリカン・ニュー・シネマの特集があって、

この時は、(家族に云わせると)憑りつかれたように、毎週末になると出かけたものだが、

土日の朝というとサラリーマンにとっては貴重なくつろぎの時間、

いつのまにかその熱も冷めていった。

ところが、である。

先の週末の朝、なにげなく眺めた新聞の上映案内に、「ティファニーで朝食を」とある。

しかも上映期間はこの週末限り。

オードリー・ヘップバーンの大ファンとしては外せない一作。

出張明けでだらだらと時間を過ごしたい気持ちもあったが、

スクリーンで観る機会を逃すものかと、朝食もそこそこに出かけた次第。

 

Breakfast at Tiffany's Opening Scene - HQ

 

早朝のニューヨーク。

閑散とした街並み、人通りもない道を向かってくるタクシー。

やがてタクシーはティファニーの前で停まり、黒づくめのドレスのオードリー・ヘップバーンが降り立つ。

袋から取り出したパンをかじりながら、ウィンドウをしげしげと覗き込むオードリー。

そのバックに流れるのが、ヘンリー・マンシーニの名曲「ムーンリバー」。

 

50年以上も経ったとは思えないほど、このオープニングシーンは色褪せない。

さらに、このシーンがこれから始まる粋な人間模様と感動的な結末を示唆しているようにも思えて、

何度も観ているにもかかわらず、ワクワクさせてくれるのだ。

 

その内容を一言で表現するならラブ・コメディ。

作家を志す青年ポール(ジョージ・ペパード)は、女性実業家に囲われてニューヨークのとあるアパートに住むことに。

そこで出会ったのが自由奔放に生きるホリー(オードリー・ヘップバーン)。

最初はホリーの破天荒な行動に戸惑うポールも次第に彼女の魅力に惹かれていく。

紆余曲折の末、やがて愛し合うふたりだったが、

犯罪事件に巻き込まれたことをきっかけにホリーは南米へ旅立つ決心をする。

空港へ向かうタクシーの中。

南米行きをめぐり口論となったふたり。錯乱したホリーは可愛がっていた猫を土砂降りの雨の中に放りだしてしまう。

やがて、冷静さを取り戻した二人は猫を探すため雨の街へ。

ようやく猫を見つけ出したことで、ふたりは愛する心を取り戻し、

ずぶ濡れのまま抱きしめあい、口づけを交わす。 

そして、ここで再び流れるのがムーンリバー...という感動の結末。

 

 

さて、原作はトルーマン・カポーティの同名小説。

ただし、この原作は随所で映画と食い違っている。

ポールは「僕」という一人称で語られるし、ジョージ・ペパードのようにかっこよくもない。

さらには、女性実業家の愛人でもない。

また、「僕」とホリーの共通の友人ジョー・ベルは映画には登場しない。

そしてなによりも、ふたりは結ばれず、猫も行方不明のまま、ホリーは去って行ってしまう。

おそらくは、映画を観た後で原作を読んだひとがほとんどで、(自分もそう)

映画で味わったラストシーンの感動を活字でもう一度、と期待するのは当然のことだが、原作の結末はそうではなかった。

その点、むしろ原作と映画は別物と割り切った方が良いのかもしれない。

しかし一方で、原作には映画とは異なる深い味わいもある。

洒脱な会話がふんだんに盛り込まれていることがそうだし、

「またホリーに会いたい」と、読者自身に思わせるような、ちょっと感傷的な結末もそうだ。

映画にはない淡々とした結末(むしろこの結末のほうが現実っぽい)の中に感じるさわやかさ。

そんな読後感は活字の力ならではの醍醐味ではないかと思う。

 


 

例によって、折にふれての選曲。

先日、あるラジオ番組でスティービー・ワンダーの特集をやっていた。

希有のシンガーでありソングライターであることは誰でも承知しているが、

実は彼、ハーモニカの名手でもある。

彼がハーモニカで演奏に加わった、いわば裏ワザ的特集だったが、

その中で流れたのがこの曲。

 Moonriver | Henry Mancini ft. Stevie Wonder & Take 6

TAKE6のハーモニーとの豪華共演。それでいて、原曲のイメージもそのまま残している。

云わば、もうひとつの「ムーンリバー」、傑作だと思う。

 

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Comments (8)    この記事についてブログを書く
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8 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは (bara)
2016-04-15 20:59:55
オードリーヘップバーン、凄く魅力のある大人可愛い~。

若い頃は勿論、年を重ねても自然体で素敵ですね!

ムーンリバー・・映画音楽は名曲だらけです。
ハーモニカのムーンリバー、お酒は飲めませんが、一人でカウンターでウィスキーを飲みたくなる雰囲気になります。
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Unknown (lunaya)
2016-04-16 15:03:16
juraku-5th さま

juraku-5thさんは音楽と同じように、
たくさんの名画とも、これまでの人生を
共に過ごされてきたのでしょうね!
くすみがちになる自分の感性を呼び覚まして
くれる音楽、映画、素晴らしいです。
それらの感動はいくつになっても色褪せませんね。

個人的には、3拍子で少し物悲しいキレイ目な
メロディーラインに弱いので、“Moon River”大好きです♪
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Unknown (サイモン)
2016-04-16 23:04:13
こんばんは☆

文章とBGMだけの構成、文章にグッと重みが出て良いですね。

ムーン・リバー、30年以上(笑)時間が戻ったような気分です。

私はBGMをlinkにして居るので、その時限りになって仕舞う曲も多く時々残念に思って仕舞います。
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Unknown (pico)
2016-04-17 09:31:58
おはようございます。
日曜日の朝、
Moonriver | Henry Mancini ft. Stevie Wonder & Take 6

聞いています。

いいですね~。
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baraさん (juraku-5th)
2016-04-17 21:29:09
こんばんは

アカデミー賞のプレゼンターだったか、晩年の彼女を覚えているのですが(たぶん60歳を超えていたかと思います)、baraさんのおっしゃるとおり自然体、違和感なく年を重ねていました。
この映画祭で、マイフェアレディも上演予定なので、楽しみにしています。


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lunayaさん (juraku-5th)
2016-04-17 21:34:47
こんばんは。

最近はテレビで映画を観ることがほとんどですが、やはりスクリーンは違いますね。
学生時代はピア片手に毎週のように古い映画を上映する劇場に通っていましたが、最近はそんな劇場も無くなってしまいましたね。
さみしい限りです。
さて、今年の午前十時の映画祭のお目当ては、マイフェアレディ、アラバマ物語、砂の器です。
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サイモンさん (juraku-5th)
2016-04-17 21:38:30
こんばんは。

そんなにたくさん名画と呼ばれる映画を見ているわけではありませんが、この映画は心に刻まれたうちの一つです。
ムーンリバーはオープニングとラスト、それに劇中、オードリー・ヘップバーンがギターを弾きながら歌うシーンもありますね。
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picoさん (juraku-5th)
2016-04-17 21:41:06
こんばんは。

日曜日の朝、地震のニュースなど重い気持ちで始まりましたが、少しでも気晴らしになっていただけたのなら幸いです。

これからもよろしくお願いいたします。

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