はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ホームホスピス

2007-06-01 13:18:19 | アカショウビンのつぶやき

終末期を見つめて かあさんの家から 2007/6/1毎日新聞掲載
ホームホスピス「かあさんの家」



 庭の白紫陽花が咲き始めました。
この花が咲くと夫の最期のときを思い出します。
彼が最期を過ごした「リスニングルーム」には、いつも白紫陽花を活けていました。
 13年前、夫はベッドから起きられなくなっても、病人らしくなりたくないと、おしゃれに身繕いし、リスニングルームにベッドを入れ、好きなモーツアルトやブラームスを聴きながら過ごしました。病院嫌いを貫き通した彼は、最期の三ヶ月、病院の訪問看護、ヘルパーさんの援助、親族や友人の助けを頂きながら自宅で過ごし、安らかに我が家で看取りました。これもホームホスピスだったのでしょうか。
 
 3人に1人が癌にかかると言われる今、医師に余命を告げられた場合、本人はもとより、家族にとっても辛い時期を過ごさなければなりません。その悲しみは当事者でなければ分からない深いものです。

 今日の毎日新聞に、宮崎のホームホスピス「かあさんの家」の記事がありました。

「人は死の瞬間まで、その時間がたとえわずかであっても、その人なりの生活が尊重される事を願っています。そして、誰もがいずれ迎える死の悲しみを、癒し慰めたい」

との思いから立ち上げた「かあさんの家」は、大きな施設でなく住み慣れた我が家のような雰囲気です。ここが多くの人々の真の慰めを与える場となりますよう切に祈ります。

ブログに書くには余りにも重いテーマでしたが、多くの方々に知って頂きたいと願い、あえて書いている アカショウビンです。
  

ブルーカナリア

2007-06-01 12:29:56 | はがき随筆
 日曜日が待ち遠しい若かった頃、私は一人の女性を好きになった。近くの銀行に勤める人で、ときどき帰りにすれちがい挨拶をしていた。ある夏、退社時に私達男3人は彼女達3人とばったり会い、日曜日に海水浴に行こうと切り出した。彼女は「いいわね、行きましょう」と応じてくれた。海水浴では一日中大いにはしゃいだが、どうしても2人きりにはなれなかった。その後、皆でお茶飲みにも行ったが、私は騒いでばかりだった。それから2年後、私は彼女が結婚した事を知って打ちひしがれた。70歳を過ぎた今でも好きな女性には冗談しか言えない私である。
   鹿児島市 高野幸祐(74) 2007/6/1 毎日新聞鹿児島版掲載