はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

母の遺影が笑った

2007-06-19 07:31:58 | はがき随筆
 このほど母の一年祭を営みました。あまりにも急な他界でしたので、母も何か言い残したことがあったのではないかと、そればかりを思う1年でした。養子の身でありながら、言いたいことを言わせてもらいました。そんなとき母は「ヨーシ、よくぞいいました。これで本当の親子になれました」と諭してくれましたが、顔は怒っているようにも見えました。今となっては本心を聞くことはできません。
 神主さんの祝詞に母の名前が出たとき、母の遺影が笑ったように見えました。「怒ってなんかいませんよ」と言ってくれたのでしょうか……。
   西之表市 武田静瞭(70) 2007/6/19 毎日新聞鹿児島版掲載