年の瀬になると思い出すことがある。教師になって社会人としての第一歩を踏み出した昭和33年。高度経済成長の号令が発せられる以前で、世の中はそんなに豊かではなかった。そんな時勢に長年、親のすねをかじって学生生活をしてきた自分が月給をもらい、12月にはボーナスも出て、ひそかに感謝と満足感に浸っていた。その時、ふと新聞で歳末助け合い運動の標語が目に止まった。「北風もまた温かし年の暮れ受けずあたえる幸を思えば」。これまで街頭募金は横目に通り過ぎていたが、募金に協力できた時、大人になった喜びを実感したことを思い出す。
志布志市 一木法明(72) 2007/12/1 毎日新聞鹿児島版掲載
志布志市 一木法明(72) 2007/12/1 毎日新聞鹿児島版掲載