はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

いちょう

2007-12-02 23:57:28 | アカショウビンのつぶやき
 お隣の銀杏は小さい木だけれど、毎年見事な黄葉を楽しませてくれる。
朝から、ガーガー音がしていると思っていたが、外出から帰るとばっさり切り倒されていた。ブロック塀の小さなすき間に生えた銀杏なので、切らざるを得なかったのだろうが、去年は裏のお宅の銀杏が、大きくなりすぎたとかで伐られてしまい、このあたりには一本も銀杏がなくなってしまった。
 数年前には、私の通うキリスト教会の付属幼稚園の大きな銀杏も伐られちゃった。とても勢いがよく、切り株からは次々とヒコバエが伸びてきて驚いたけれど、伸びるたびに伐られ、とうとう切り株の赤ちゃんもなくなってしまった。
 きれいに手入れされた庭に、伸びすぎた木は邪魔なのだろうなあ。
「屋根より高い木だけが、ホントに大きい木と言うんだよ」と誰かが言っていた。
 箱庭のようにきれいに手入れされた庭よりも、一見荒れた庭のように見えるかもしれないが、自然に伸びた木々に囲まれている方が私は落ち着く。
 お正月が近づくとどこのお宅でも木々の剪定が始まるけれど…どうしようかなあ。

写真はcozyさんからお借りしました。

三十三回忌

2007-12-02 22:27:34 | はがき随筆
 父の三十三回忌の法事を行った。
 脳いっ血で倒れた父は、誰にもみとられることなく、この世とお別れした。温泉から帰った母の驚き、そして嘆き、悲しみは、まさに狂乱であった。
 知らせを受け、信じられないまま、安らかな父の姿と対面した。その時ほど、人の命のはかなさを痛切に感じたことはなかった。
 お坊様が「誰にも迷惑をかけずに逝かれたことは、ありがたいことですよ」と話されたのをふと思い出し、父らしい最期だったと思うようにして、合掌した。
   鹿児島市 竹之内美知子(73) 2007/12/12 毎日新聞鹿児島版掲載