はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

椿油

2007-12-21 17:15:04 | アカショウビンのつぶやき






 久しぶりにクリスマスプレゼントを持ってMさん宅に伺うと、庭に椿の実が散乱し踏みつぶされていた。
 そのとき、椿を愛し、花の時期には花を愛で、秋は実を集めては楽しんでいるKさんを思い出し、戴きたいとお願いすると「どうぞどうぞ…」。早速Kさんと拾いに行く。広い庭には枝を広げた大きな椿の木が3本、根元には実がゴロゴロ、すでに虫に食われた物もある。
 腰が痛くなって時計を見ると2時間も経っていた。Kさんは「何㌔あるかなあ、一度にこれほど集めたのは初めて…」と大喜び。私は生まれて初めて椿の実をしみじみと見たが、つややかで美しい。実は6㌔集めると精油所で絞ってくれるのだと言う。Kさんは殆ど食用に使うと言うが、贅沢な椿油、美味しい料理ができるだろうなあ。

 椿油は酸化しにくい、オレイン酸を多く含み、高価だがオリーブオイル以上に健康的な油だと言う。鹿児島では「カタシの油」と言い、昔からヘアケア用品として使われていたが、化学製品に押され、今ではあまり見かけなくなった。
 
「来年は9月にお邪魔します」と、来る年の約束までしてMさん宅を辞した。集めた実は3㌔400㌘。
 Mさんからの「素晴らしいクリスマスプレゼント」だった。

剣道少年

2007-12-21 17:01:52 | はがき随筆
 阿久根市のKさん宅を訪問。応対に出た男子中学生は玄関の板敷きに正座して両手をももの上に置き、私の目を真っすぐに見て「両親は留守です」と答える。礼儀正しさにピンと来て「スポーツは?」と尋ねた。「剣道に熱中してます」とさわやかな返事。勘がずばり的中。私も3段で、剣道談義に花が咲く。
 県下でただ1人勝てない相手がいるという。重心をつま先に載せて誘い、相手の面打ちより一瞬早く出、小手を打つ。この手は危険性が高く窮余の一策と念を押す。君のにおい立つようなすがすがしさに、まだ語りたくも私の時間が許さなかった。
   出水市 道田道範(58) 2007/12/21 毎日新聞鹿児島版掲載