はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

冬の落日

2007-12-18 19:16:24 | はがき随筆
 妻が入院して3週間がすぎ、季節は秋から冬に変わった。南でも櫨紅葉の赤が美しい。
 一人の生活は不自由なものだ。傘寿をすぎ、まだ現役の開業医なので、仕事を終え暗い我が家に帰ると何ともわびしい気持ちになる。
 秋の夕日は美しいが冬の落日は寂しい。しかし頑張るしかない。冬来たりなば、という言葉もある。果たしてその先に再び春が来るかどうか分からないが、負けずに冬に耐えて生きたい。
 静かな夜を一人、こたつのぬくもりに癒されながら……。生きるということは誰にとっても切ないことだから。
   志布志市 小村豊一郎(81) 2007/12/18 毎日新聞鹿児島版掲載