はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

山グミ

2008-04-21 07:54:17 | はがき随筆
 松林でグミの木を見つけて、母が「山グミを食べると腹づまりを起こすよ」と言っていたのを思い出した。食べたら舌がグミの葉裏のように白くなるので、本当だと思っていた。
 小学生のころ、姉たちと「お大師詣り」といって遠くの寺まで歩かされたことがあった。今思うと、白い着物を着せてお遍路体験だったのだろう。腹が減ったので、道端になっていた山グミの小さい実を口にした。味は覚えていないが、腹はどうもなかった。
 今でもおなかをこわしがちで、腹巻きをさせたりお灸をすえたりした母の気持ちがしのばれる。
   鹿屋市 上村 泉(67) 2008/4/20 毎日新聞鹿児島版 特集-1

こんにちは

2008-04-20 16:38:53 | はがき随筆
 澄んだ黒い瞳、オブラートのような肌にかわいいおちょぼ口。だっこした赤ちゃんにほほ笑んでいる母親。ああ良かったとホッとする。母子保健に携わり数年。生も死も様変わりしていく世の中、現代子育て事情を経験者がサポートしようという取り組みだ。訪問しても会えないもどかしさに思い切り心を開いて電話作戦。すると意外と話が弾む。子育て体験や相手の悩みを分かち合うと、受話器の向こうに笑顔が見える。肩の力を抜いて子供と一緒に成長しようと楽しんでほしい。山桜の道でハンドルを握り、今日は会えるかな。こんにちは赤ちゃん。
   薩摩川内市 田中由利子(56) 2008/4/20 毎日新聞鹿児島版掲載

春を喜ぶ

2008-04-19 07:21:07 | はがき随筆
 太陽の光が、きらきらと明るい。また春が巡ってきた。
 庭のジンチョウゲが散り始めると、コブシが真っ白い花を咲かせ始めた。
 近所の方からタケノコを頂いた。さっそく湯がいて煮しめにしたり、みそ汁の具に入れたりした。母がツワを採ってきて、手を真っ黒にしながら湯がいた。ツワとタケノコを炒めて料理を作る。 
 その日、食卓に並んだ山菜料理。春を喜び、自然の恵みと人情に感謝しながら、おいしくいただいた。
 穏やかな春よ。喜びをいっぱい運んできてね。
   出水市 山岡淳子(49) 2008/4/19 毎日新聞鹿児島版掲載

遂にダウン・・・・

2008-04-18 12:43:02 | アカショウビンのつぶやき
 4年11ヶ月間、酷使に耐えたデスクトップパソコンが遂にダウンした。
 今年初めから、時々おかしな現象が現れるので、いざという場合に備えて、外付けHDにデータを移し、更に一大決心をして、ラジオ番組取材用の大古ノートパソコンも買い替えた。デスクトップが壊れたら、しばらくノートでしのごうと・・・。一昨日から、「ピーッ」と変な音がすると思っていたら、昨日、作業途中でダウン、今朝はうんともすんとも言わず、遂に「ただのはこ」になってしまった。

 一応ノートでネットに接続はできるものの、印刷ができない、外付けHDに重要なファイルを保存してるので、HDを付け替えないと家計簿もつけられない。もう少しノートに慣れておけばよかったが、ビスタでは、エクセルも自由に使えない。

 随筆の原稿をいつもの2倍の時間をかけてやっとアップする始末。
 パソコンの先生・O氏は日曜でないと時間がない、参ったなあ。

 ということで、ブログのアップも滞りそう・・・。
 ビスタに慣れるまでごめんなさい。


7段のひな飾り

2008-04-18 11:42:23 | はがき随筆
 みやびな人形が飾られると、幼子の娘はひな人形をいじりながら遊んでいた。共働きと子育ての煩雑さを隠れみのに、ひな壇を飾らなくなって15~16年が過ぎた。今年成人した娘に亡母が買ってくれたものだ。貧しさ故に、ひな飾りもこいのぼりが空を泳ぐこともなかった私の子供時代。だからせめて孫にだけは7段のひな飾りを持たせたいとの思いがあったのだろう。
 五十の歳月を重ね「親が子を思い、子は親を思う」というごく当たり前のことの大切さを感じる。亡母と過ごした少年時代の甘酸っぱい思い出がふとよみがぇった3月の終わりである。
   鹿児島市 吉松幸夫(50) 2008/4/18 毎日新聞鹿児島版掲載

DNA,DHA

2008-04-18 11:36:10 | はがき随筆
 電話口で話しているのが聞こえたのだろう。「DHAと言っていたけど、あれはDNAのことじゃないか?」と夫の指摘。「お父様のDHA・・・」と確かに言った。ああ恥ずかしい。ぼけたと思われたことだろう。
 先日、薬局で「サンプルを下さい」ときた客に店の人が「アンプルですね」と優しく応対されるのを見ていたく感心した。
 私は間違った言葉の使い方をする人をバカにしたり、言葉尻をとらえて大げさに笑ったり皮肉を言ったり”おちょくり名人”の最たる人間だった。深く深く反省した。どうぞ今までのことはお許しくださいませ。
   鹿児島市 馬渡浩子(60) 2008/4/17 毎日新聞鹿児島版掲載

変則二人三脚

2008-04-16 07:49:23 | はがき随筆
 86歳になる母を誘って春の野に出た。新緑の野山や川面のカモを眺めながら、背を丸めゆっくり歩く母に歩調を合わせる。夢中でツクシや菜の花摘みに興じる母に、私は目を細める。
 私が作った弁当を、芝生の上に広げた。不格好な巻きずしに2人の会話の弾むこと。私のだじゃれに、母が肩を揺すって笑う。その高らかな笑い声が春風に乗り、ヒバリに負けじと大空をかける。春の野を舞台に私が歌い、一差し母が舞う。時折よろめくのも愛きょう。
 蕾の桜に名残を告げ「花」を歌いながら家路についた。母と変則二人三脚の珍道中。
   出水市 道田道範(58) 2008/4/16 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はぐらいんだぁさんより

からくり人形時計

2008-04-15 15:15:43 | アカショウビンのつぶやき









 その昔、進学で上京した息子が、横浜見物に連れて行ってくれたことがあった。超方向音痴の私は、<まだ、彼はおのぼりさんの筈だけど…>と心配しながら彼の後について行った。
 <横浜そごう>でウインドショッピングの最中、息子が「お母さん急いで1階まで降りて」「どうしたの」「いいから、急いで」と。何が起きたのか分からないけれど、ふうふう言いながらエスカレーターを駈け降りると、黒山の人だかり、その人々が同じように見上げているのは、大きな<からくり時計>だった。「もうすぐ、人形が出てくるよ」と言う息子。

 私は幾つになっても人形大好き、作るのも大好きという幼稚な母親。この私に可愛い<からくり人形時計>を見せたいとの、息子の優しさにぐっと来てしまった私だった。今なら携帯でパチリだが、「どこかにカメラがある筈なんだけど…」と、バッグをごそごそやってると「人形が引っ込んじゃうよ…」と注意されてしまった。
 人形たちが、とっても可愛かった(*^o^*)。

 この思い出の時計も、今日午後8時、全国の10店舗で、からくり機能を停止させたと言う。一日11回、時刻の3分前になると文字盤が反転して世界の民族衣装をまとった人形が現れ、「イッツ・ア・スモールワールド」のテーマ曲に合わせユーモラスに動き、子供たちに人気があり、待ち合わせ場所としても親しまれていたという。

 理由は老朽化だそうだが、私も間もなく後期高齢者、同じように老朽化が進み、大好きだった人形作りも出来なくなってしまった。手元に残っているのは古びた<赤毛のアン>の人形一体だけ。

 そうそう、そごうのからくり時計を見た後で彼が連れて行ってくれたのは、<横浜人形の館>だったなあ…と、20年前のあの日を懐かしく思いだした。
 
 写真は、その昔、あちこちへ貰われて行った可愛い子どもたち。現存するのは赤毛のアンだけ…。

大学教授

2008-04-15 08:00:04 | はがき随筆
 33年前を突然思い出した。大学最後の試験も終わり、アルバイトに専念していたある日「卒業保留者に名前が出ている」と級友が知らせてくれた。
 学生課に行くと「ぎりぎりの単位の学生は教授のところへ行きなさい」と。単位は多目に取っていたので不承不承、教授宅を訪ねた。「おれの単位を落としたろう」。和服姿で玄関に現れた先生はそう言った。経済的なこともあり、留年は困ることを話し、卒業はできた。
 後年、叙勲を知り祝電を打ったら、丁寧な礼状が届き恐縮した。往年の名優、中村伸郎に風ぼうの似た先生であった。
   鹿児島市 本山るみ子(55) 2008/4/15 毎日新聞鹿児島版掲載

愛犬との暮らし

2008-04-13 08:28:36 | はがき随筆
 愛犬ベルと暮らし始めて10年の歳月が流れた。
 飼い主だった娘が嫁いだ日から、世話役が母親の私にバトンタッチされ、これまでの「可愛がるだけ」の日常が一変。朝夕2回の散歩、食事、健康管理のすべてを、娘の助言を得て忠実にこなす。日々、動物とのふれあいの心地よさ、再発見のすばらしさを実感しながら、家族で元気をもらっている。
 一人娘を嫁がせた初老夫婦の心情を察して?か、常に寄り添い、まとわりつきながら「癒し」の役割をしっかり担ってくれている「忠犬ベル君」に感謝。ありがとう。
   鹿屋市 神田橋弘子(70) 2008/4/13 毎日新聞鹿児島版掲載

ミニコンサート

2008-04-12 20:54:10 | アカショウビンのつぶやき








 



 鹿児島オペラ協会会員で、鹿屋市出身のソプラノ歌手・福山衣里さん。2人のお子さんの出産育児のため舞台を離れておられたが、今年3月、鹿児島市で開催された、鹿児島オペラ協会定期公演「メリーウイドウ」で6年ぶりに舞台に復帰し、ツェータ男爵の妻ヴァランシエンヌ役で美しい声を披露された。

 今日は「メリーウイドウ」公演に、はるばる鹿屋から応援にきてくださった方々を「陶芸の里・あすか」に招待し、感謝をこめたミニコンサートが開催された。
オペラのアリア、童謡、日本の歌曲の他に、ヴィオラ演奏やピアノ独奏と続き、音楽とおしゃべりの、楽しいひとときだった。コンサートの後は美味しいコーヒーとケーキで心もおなかも満たされたときを過ごし、最後までお喋りしてた方々と記念撮影をしてお別れしました。
ママのお膝、よく我慢できたね、ささちゃん。

衣里さん、次の舞台をたのしみにしていますね。


ときめき

2008-04-12 10:26:01 | はがき随筆
 桜通を車で走る。もうじき満開の桜を思いながら。空まで敷きつめたような白いモザイク、木洩れ日があふれ、妖精たちが舞う情景……。この華やぐ季節を前に、何と私の文章がラジオから流れた。我が家のネットワークは子供たち。早速知らせると「よかったねー」と言ってはくれたものの、放送後は「忘れてた」との返事。夫も笑っているだけ。私は1人、少女のように心ときめかせた出来事だった。読んでくださった方の心が伝わり、大満足である。さて車は通りを抜け、川岸は菜の花のじゅうたんだ。水面(みなも)光り、私の心もひた走る。爛漫の春へ!
   出水市 井尻清子(58) 2008/4/12 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はdive21blueさん

一通の手紙に

2008-04-11 17:39:39 | 女の気持ち/男の気持ち
 朝7時、体調が安定しているのを確かめ、半身浴をする。ペースメーカーの位置にタオルをかけ、シャワーで他の部分を洗い流す。1週間ぶりだ。入浴中に倒れた時のことを考え、お風呂は朝にしている。玄関の鍵は預け、緊急連絡表と電話の子機を扉近くへ置く。
 1級の障害に加え、夫の急死のショックで歩行困難や視力の低下に見舞われ、介護が必要になった。遠くの姉妹は毎週安否確認の電話くれ、友人知人は食べ切れぬほど惣菜や野菜を持参し、病院通いの便宜まで図ってくれる。近隣の方も毎日の声かけとリサイクル、ゴミ運びをしてくれる。
 少しずつつえを持たないで歩く努力をしているが、「右手だけでは何もできない」と自暴自棄に陥ることもある。なにもかも忘却できれば、どんなに楽になれるだろう。いや、自分の心は自分で強くするしかないと自問自答する。
 突然、一通の手紙と香料が届いた。亡夫を知る方だが、私は面識がない。私と同様に子供もなく、ただ1人で涙を流した3年余りの体験と励ましの言葉がつづられていた。「一人だからと落ち込まないで、趣味を続けて、たくましく生き抜いて下さい」と結んであった。夜明けまで幼子のように枕をぬらした。
 ありがとう。今日から外へ出て、季節の移り行く様子を見ようと思う。
   薩摩川内市 上野昭子(79)2008/4/11 の気持ち掲載

いら立ち

2008-04-11 17:16:42 | はがき随筆
 「静まれ、落ち着け」と自分をなだめる。頂き物のクロダイを不慣れな包丁さばきで刺身にし、急ぎ帰る娘に持たせようとするが、いつになく不出来だ。
 夕食後、翌朝のゴミ出しのため台所の片付け洗浄を入念に。これまた時間がかかる。コーナー袋が残り少ない。就寝前、日誌をしたため、狂句を一ひねり。全く要領を得ない。
 翌朝BSニュースを見ながらパンと妻の好物の餅を焼き味噌汁を作る。少々焦げてしまう。8時過ぎ、ゴミを指定の網に出す。つまずきそうになった。
 家事の一こまだが、年甲斐もないいら立ちを恥じた。
   薩摩川内市 下市良幸(78) 2004/4/11 毎日新聞鹿児島版掲載