はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

卒園おめでとう!

2009-03-20 17:00:33 | アカショウビンのつぶやき










 少し関わりを持っている、信愛幼稚園の卒園式に招かれた。
34名の元気な卒園児たちは立派な卒園のセレモニーを見せてくれた。
園長先生の暖かなお祝いのことば、PTA会長さんの励ましとお礼の言葉、それぞれに深い愛がこめられ、神様に祝福されて園を巣立っていく子どもたちに愛のシャワーをいただいたようだった。

 小さな在園生も参加して、お兄さんお姉さんに送る言葉や送る歌を元気よく歌ってくれた。去年の入園式の騒々しさを想い出し、一年間でめざましく成長した子どもたちの姿に先生方の忍耐強いご指導を思い頭が下がる。

 信愛幼稚園で学んだ神様の愛をいつも思いだしてほしい。いつも神様が一緒にいてくださることを信じて強く明るい一年生になってほしい。
こんなに可愛い子たちを待つ環境が暖かいものでありますようにと心から祈りたい。

思いは巡る

2009-03-20 06:13:23 | はがき随筆
 15日で満88才。はるかな思い。小学低学年のころ下校中、橋が流された通学路の激流で二つの岩にまたがり4、5人の友達と一緒に渡してくれた裸の父のたくましさ。また小学1年か2年生の時、授業が終わり有馬先生から全部の答えに大きな赤丸と、100に2条の横線を荒々しく引いた答案用紙5、6枚。風呂敷包みの教科書と一緒に内土間にいた山草履、野良着の母に見せた。その喜び、その輝き。かねては仕事、暮らしに余裕などなく余り表情の無い母。この時の喜びの姿は鮮やかに残り、今では尊ささえ感ずる。思いは巡る人生88年、ありがとう。
   鹿屋市 森園愛吉(88) 2009/3/20 毎日新聞鹿児島版掲載


実家に帰ろう

2009-03-20 05:33:59 | 女の気持ち/男の気持ち
 実家で91歳の母と暮らしている。目下の悩みは排せつだ。ベッドのわきに徘徊用のセンサーマットを置いている。母が乗ったらブザ-が鳴るので、走っていく。
細心の注意をしていても漏らすことがある。
 「赤ちゃんじゃあるまいし……」
 言ってはいけないと思いつつも、□に出る。
 母は悲しそうな顔をして、他人行儀に言う。
 「実家に帰らせていただきます。もう、来ないかもしれません」と。
 母の実家は車で15分くらいの所にある。叔母がI人で住んでいる。母がデイサ
ービスの日には、私の方が出かけて行ってその叔母に愚痴をこぼす。
 叔母は40年前、寝たきりだった祖母を9年間介護した経験を持っている。
  「由井ちゃん、今はいいよね。オムツは洗わなくていいし、福祉は充実してい
るし、お金はあるしね。親をみる人は心配をするのだから、家も土地も、金銀財
宝も、全部もらえばいいのよ。デイサービスの日はゆっくりしなさいね。いつで
も遊びにいらっしゃい」
 お茶を勧めながら、話し相手をしてくれる。
 心が落ち着いてくると、東シナ海の荒波を見ながら鼻歌交じりで家に戻り、母
を待つ。
 母は私の顔を見ると安心するのだろうか、最高の笑顔を浮かべる。
   鹿児島県阿久根市 別枝由井(67歳)
   2009/3/19 毎日新聞「の気持ち」掲載






父の味、甘酒

2009-03-19 18:20:28 | はがき随筆
 幼いころ、いろり端で今は亡き父がすりこぎで釜の中を黙々と混ぜていたのを覚えている。その濃厚な味とともに。
 大人になって祭りなどで振る舞われる甘酒の物足りなさ。いつか本物を作ろうとレシピを見るが、作る過程の温度調節が難しそうで実行できずにいた。
 思い立って3年前、挑戦した。もち米を柔らかく炊き、こうじを少しずつ加え、温度を測りながら熟成を待った。数時間後、ほんのり甘い香りが漂ってくる。そして1日置くと「父の味」がよみがえった。
 今では四季を通して作り、母と私の滋養源となっている。
薩摩川内市 馬場園征子(68) 2009/3/19 毎日新聞鹿児島版掲載


ネックレス

2009-03-18 15:07:53 | はがき随筆
 3月半ばの西鹿児島駅。たまたま急行「霧島」の真向かいの席に乗り合わせた女の子だった。その母親から、一人旅なので話相手になってと懇願された。
 これから就職のため姫路へ行くと言う。混雑した車内の道中、当時大学生の私は寡黙な彼女に何かと話しかけ世話をした。
 深夜2時デッキで別れる際、女の子は突然ネックレスを外すと私に差し出した。そしてがらんとしたホームに降り立ち、姿の消えるまで手を振り続けた。
 私たちは名も聞かず、また聞かれもせずに別れた。あれから40年余、あの子はその後、どんな人生を送ったのだろう。
伊佐市 山室恒人(62) 2009/3/18 毎日新聞鹿児島版掲載





危ない!

2009-03-18 15:02:05 | かごんま便り
 先日、鹿児島市内を自転車で移動していた時のことだ。目の前の角から中年男性の乗った自転車がいきなり猛スピードで曲がってきた。とっさに急ブレーキをかけたが間に合わず、先方のハンドルがブレーキを握ったままの両手指を直撃した。

 私より年配とおぼしき男性は、割と大きな自転車(ちなみに当方は軽量の折り畳み式)だったおかげ?で無事だったらしく「あ、失礼」とだけ言い残して立ち去った。呼び止めて文句を言いたかったが、情けないことに激痛で声が出なかった。

 別の日、近くの郵便局に出向いた折り、自転車を降りて歩き出した私の目の前に、片手運転で傘を差した中年女性の自転車が飛び込んできた。ぶつかると思ったが文字通り「寸止め」となり辛うじて衝突は避けられた。

 用を済ませて再び走り出すと、信号待ちで偶然にも先ほどの女性に出くわした。「片手運転は危ないでしょう」と話しかけたが、悪いのはそっちだとでも言いたげな表情である。あきれて二の句が継げなかった。

 昨年6月施行の改正道交法で、原則「車道通行」の自転車が、歩道を走っていい例が明文化された。道路標識で指示された場所▽身体障害者と子供、高齢者▽状況から見てやむを得ない場合──などである。この「やむを得ない場合」が実に悩しいことは1日付社会面「はい! 報道部」でも取り上げた。

 交通量の多い車道を走るのは実際、危険だ。そのため歩道を走りがちだが、そこには別の危険がつきまとう。冒頭で紹介した経験談も、いずれも歩道上での出来事だ。

 県警によると、08年に県内で起きた自転車の交通事故は、自転車対車1015件(死者7人、負傷者999人)、自転車対列車1件(死者1人)、自転車対歩行者24件(負傷者7人)、自転車単独163件(同161人)。最後の二つは、実際はもっと多いはずだ。

   鹿児島支局長 平山千里 20093/16 毎日新聞掲載






足腰元気かぁい!

2009-03-17 21:32:32 | アカショウビンのつぶやき
 中年の域にさしかかった頃から、コレステロールがぐんぐん上がり、若い頃は低血圧と言われていたのに血圧までアップ…そのうえ腹囲が90.3㌢(>_<) さらに身長は3㌢縮んで143㌢になってしまった。立派なメタボ症候群である。

広報誌で回覧される、いろんな施設の健康プログラムが目につきだした。やっと重い腰を上げ、県民健康プラザの「足腰元気会(げんきかーい)」に申し込む。ところが予約日が近づくと、足腰に不調が現れるのだ。「足腰元気会」に行って足腰に支障が出たんではドモナラン。数回延期してやっと行ってきた。

「今日は○○さん、お一人なんですよ」係の女性がニコニコと迎えてくださった。
「エエーッ。マンツーマンでやるんですかぁ、これも税金でしょうに、私一人のために申し訳ないですねぇ」やっぱり貧乏性の私だなあ…。

まあ、いろいろやらされました。息は上がって汗びっしょり。そして結果の発表。
5段階評価で総合評価は2(>_<) 予想以上の体力低下。柔軟性・筋力・筋持久力が特に劣っている。「運動を行わないと下肢は年齢と共に筋力が低下していきます。毎日少しずつでも歩くことや全身を使った運動を行いましょう」と。

はい、そうなんです。孫をだっこ出来ないようでは悲しい…。
運動嫌いの私はいつも「時間がないと言うのは言い訳にすぎん、運動する時間は自分で作るものだ!」と夫に叱られていたが、本当にそうなんです。遂に高輝高齢者、輝く老後を期待して頑張らなくちゃ。

考えながら

2009-03-17 10:59:29 | はがき随筆
 いまさら取り立てて言うまでもなく年々、五感の衰えに情けなくなる今日このごろである。
 私の趣味は夏は布、冬は毛糸で夢中になれる時間を楽しんでいる。見様見まねで半自己流なのだが、完成間近になるとそわそわどきどきしてくる。
 肩こりをほぐしながらベストの仕上げに励んでいた。ところが前後の身ごろのはぎになった時、脇の長さが3㌢違う。
 あぜんとなった。今までしたことのないミス。なぜ? 早い春の訪れに焦った?──などと自問自答する。しっかりしなくちゃと、その夜は気持ちを静めてひたすらほどくだけだった。
   薩摩川内市 田中由利子(67) 2009/3/17 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はイケタ゜ナミオさん

恋・・?

2009-03-16 18:01:58 | はがき随筆
 庭の椿の花陰でメジロの鳴き声がする。望遠鏡でのぞくと片目でこちらを見ている。のど元が鮮やかな黄色でうれしい!
 少年の日、日だまりに道具を持ち寄り、あれこれしゃべりながら竹を割り、削り、メジロかごを作った。はるか矢筈岳山頂近くまでツチトリモチを取りに行き、近くの小川の石橋の上で砕いてトリモチにした。少年たちはメジロの鳴き方に注目した。メジロが「タッカ」を歌うと、もううっとりと我を忘れた。
 タッカは「卓歌」と書くのでは?と気づいたのは最近のことだ。60歳を越えた今でも、メジロの声に胸がトキメクのだ。
   出水市 中島征士(64) 2009/3/16 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真は里人さん



エッセイ仲間と

2009-03-15 17:51:46 | アカショウビンのつぶやき
 久しぶりに晴れ上がった暖かな昼下がり、毎日ペンクラブ鹿児島・大隅ブロックの会員7名が、Iさん宅に集まり、賑やかな親睦交流会をもった。
 休日返上で参加された、H支局長は愛用のバイクを飛ばして鹿児島市から駆けつけてくださり、大いに笑い、いっぱいしゃべり、時間の経つのも忘れるほど…の楽しいひとときだった。会食の後は、Yさん差し入れの新鮮な朝どりイチゴに舌鼓をうち、Iさんがたててくださるお抹茶に心いやされる贅沢な時間…。

 今回は、昨年の交流会で学んだ、旧根占町出身の絵本作家・八島太郎の生涯を、地域のFMラジオで紹介する番組を作る予定だった。
 Yさんがシナリオを作り、演出はKさん、その他の会員が声優となり全員参加の番組を作ろう! と計画したが、今回はそれぞれ用事が重なって役者が揃わず…残念ながら次回にゆずることとなった。

 「毎日ペンクラブ鹿児島」が生まれて今年で9年目、様々な活動をしてきたが、ラジオ番組づくりは初めての構想、いつかこの夢を叶えたいと思う。みんな頑張ろうね!

 ごめんなさい、おしゃべりに夢中で、写真撮るのを忘れました。これ一枚です、ごかんべんを<(_ _)>

疫病砂

2009-03-15 17:15:46 | はがき随筆
 病院から帰った娘が「歩伽(ほのか)は黄砂アレルギーだって」と言う。
 「エッ! そんな病名があるの?」「うん、患者が多いんだってよ」。小学1年生の孫娘のつらそうなせきは続く。
 工藤静香が♪黄砂に吹かれて~と歌ったころの飛び砂は気にならなかった。今は砂が有害物質と合体して、朝鮮半島や日本の自然、人間に悪さをするのが怖い。以前テレビで、屋久島の雪が、ある薬品をかけると黒く変色したのを見てゾッとした。
 もし″万の風″が起こるのなら、大陸からの疫病砂を吹き飛ばしてくれと頼みたい。<中国が西にあるのを恨む春>
   出水市 清田文雄(69) 2009/3/15 毎日新聞鹿児島版掲載

隣の芝生は青い

2009-03-14 12:24:21 | はがき随筆
 私にも、大切な心に残る言葉がある。
 17歳の夏、経済的理由で泣く泣く通学を断念した。担任のS先生が説得に来られたものの就職への意志は変わらなかった。
 その時くださった手紙の中に「隣の芝生は青い」という言葉があった。
 人の物は何でも良く見えるものだ、うらやむ気持ちを戒めなさいということだったのか。折々に思い出していた気がする。
 真っすぐな気持ちの先生だったが、若くして亡くなられたと聞いた。
 桜の花便りに、青春の日々がよみがえる私である。
   霧島市 □町円子(69) 2009/3/14 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はドナさん



卒業34年目

2009-03-13 08:15:40 | はがき随筆
 夫の介護をしながらでも、この季節になると、母校・上智大学の入口までのぼってりとしたピンク色の桜並木や、「恋人の小径」と呼ばれる、ホテルニューオータニまで続く黄色いレンギョウの花が夢のように咲くあの土手を歩いてみたいと思う。
 その願いを知っている東京の同級生が、そのころになったら、ビデオで四ツ谷の上智大学や、隣りのイグナチオ教会女子寮のある信濃町かいわいを撮って送るから、と言ってきた。
 楽しみができた私は、夫を介護しながら、友の春の便りを待っている。
 卒業して34年目の春。
   鹿児島市 荻原裕子(56) 2009/3/13 毎日新聞鹿児島版掲載




暖かいひだまりで

2009-03-12 21:44:39 | アカショウビンのつぶやき








 暖かい日差しに誘われて久しぶりに庭仕事をやりたくなった。
見回せば辺りは草ボウボウ…。
でも今日は、そっちは見ないフリ(>_<) チロリアンランプの移植と遅すぎた剪定、ゴーヤの種まきだけにしよう。
でもこうやって草取りを後回しにしては、あとで大きなツケが…と、ようく分かってはいるのだけれど。

 去年挿し芽をした、チロリアンランプは身の丈5㌢そこそこ、でもよく見たら可愛い花を二つも付けていた。
「えらいねえ」と声をかけながら、大きなプランターに移す。
このチロリアンランプは、今年大きな使命を担うのだ。
毎夜、煌々と夜更けまで電気がついているパソコンルームの窓の目隠になって貰う予定。でも夏までにどのくらい伸びるのかなあ。

 一方、収穫を楽しみに初めて植えたブロッコリーは見るも無惨。
とうとう葉柄だけになってしまった。
これでもまだ食べ残しがあったらしく、ヒヨドリが細い葉柄に器用に止まり、散々つついてゆっくり水浴びをしてからお帰りになった。
まあ食べ尽くすまでこのまま置いといてやろうと諦めて抜くのを止めた。

 遅すぎたけれど、伸び放題のルリマツリを切り詰め、花が終わったユキヤナギも枝を切り詰める。次はクリスマスーズの花をいつ切るか…株を大きくするためには適当に伐らないといけないようだが、これが悩ましいところ。
今年は紫と黄色と赤が仲間入りしたので、全部咲いたら綺麗だろうなあ。そしたら益々切れなくなっちゃう…どうしよう。

 ちょっと早いけれど、去年採取したゴーヤーの種を蒔いてみた。ゴーヤーは南側の強い日差しを遮るグリーンカーテンになる予定。もちろん食用も期待したいところだけど。去年は12本も苗を植えたのに収穫は僅かだったし、果たしてあっちもこっちもうまくいくかな。

ミス・サイゴン

2009-03-12 12:23:51 | はがき随筆
 このミュージカルの日本初演は17年前。1年半のロングランを記録し、帝国劇場の天井を壊して本物のヘリコプタ-を入れたことも大きな話題となった。しかし、私はささいなこだわりから見に行かなかった。
 5年前の再演時、チケットの購入は困難で、4ヵ月の公演で1枚しか入手できなかった。一言も聞き逃すまいと初演時のCDで予習し、数百回も聴いた。
 そして今、博多座で開場10周年記念と銘打って上演中である。当初から、この作品を上演できる構造にしたという。
 車の中で今も聴くCDは、亡き本田美奈子の歌声である。
   鹿児島市 本山るみ子(56) 2009/3/12 毎日新聞鹿児島版掲載