ペンギン夫婦の山と旅

住み慣れた大和「氷」山の日常から、時には海外まで飛び出すペンギン夫婦の山と旅の日記です

今年も秋の富士へ(3)

2012-09-19 15:28:06 | 山日記

 

実際の日本最高地点(3776m)は碑の右手の二等三角点(3775.63m)から10メートルほど離れた絶壁の上にある。赤いペンキのマークがあり、なぜか溶岩の上や隙間に硬貨が散らばっている。前後して登ってきた若い夫婦も5円玉を置いていた。
 その前の旧測候所横で腰を下す。富士での昼食は日持ちがいい「柿の葉寿司」に決めている。身体をずらして二人分のスペースを作ってくれた人はJAC埼玉支部の方で、東チベットの山へいくための高度順化で来たと話された。関西の山の話などして、お鉢巡りに行かれるこの人とお別れする。 
 
 
 
 次々と登ってくる人と行き交いながら山頂を後にする。埼玉支部の人の姿が、はるか遠くに小さく見える。凄いスピードだ。私たちは今年はお鉢巡りも御殿場道下りもせず、まっすぐ同じ富士宮道を下る。再び浅間神社に拝礼して、ちょうど正午に鳥居を潜り下山にかかる。
 

左目を悪くしてから遠近感が悪くなり段差が気になる。要らぬ力が入って浮石に足を滑らせたりする。さらに次々と登ってくる人に道を譲るために立ち止まることが多く、なかなか捗らない。♀ペンに介護して貰うように下り、九合目でしばらく休む。ここでM夫妻から無事に宝永山荘に帰着していると連絡があり、ひと安心する。
 

下りでも何人もの人に追い抜かれたが、もう当然のことと道を譲るようになった。八合目では、小屋の石垣に沿ってイワツメグサがいくつも群落を作って咲いていて、目を慰めてくれた。
 傾斜の緩いブル道に入るグループもいたが、一度その長さに懲りているので、溶岩が転がるガラガラだが短い登山道を下る。七合目の下で本日二度目の登頂を目指す実川さんが登ってきた。確かに真似のできぬ凄い人だ。
 

赤い溶岩とオンタデの緑の間にヒバリのような鳥が歩いている。Mさんの話によると、富士山ガイドの人からカヤクグリという名と聞いたそうだ。
 宝永山荘に帰り着いたのは午後4時。この夜は外国人も含め十数人の宿泊客に加えて、星を見に上がってきた地元の若い学生グループもあり、山荘は大忙しだった。そのなかで弘子オカミや娘のタマ(環)ちゃんが何かと気を配ってくれて、生ビールで乾杯していると鴨肉のローストまでサービスしてくれた。M夫妻もすっかり元気回復して、楽しく語り合いながら山の夜を過ごした。
 

9月16日 快晴で明けた。5時45分、宝永山の肩から太陽が昇る。山荘の前を続々と人が通る。山荘とバイオトイレの間にある登山禁止標識の付いた柵に戸惑う人が多い。柵を攀じ登って越えようとする人も多く、炊事場の窓からオカミが声を枯らして迂回するように伝えている。朝食までしばらくの間、前のベンチに座って交通整理の真似事をして迂回路を教える。睨みつける人もいたが殆どの人が感謝してくれた。小屋の人と間違えてトイレ代200円を渡す女性もいた。
 

殆どの人が山荘を出たあと、いつまでも手を振る山荘の人達に来年も来ることを約束して下山する。
 五合目標識の上でもう一度山頂部を振り返って、駐車場に帰る。広い駐車場はびっしりと車で埋まり、私たちが車を出すのをじっと待っている車がある。「靴を履きかえたり時間がかかりますよ」というと「いつまででも待ってます」という返事が返ってきた。それもその筈、駐車スペースはずっと下まで車で埋まり、その先、「駐車場まで1キロ」の標識まで路側に車の列ができている。こんな光景は初めて見たので驚いたが、一番ひどい時は9キロ先まで並んだことがあるそうだ。スカイラインを下る間にも次々と車が上がってくる。
 
 
フジアザミ
 
 
メイゲツソウ 高山性のイタドリ。
 
 
ノコンギク
 
 
ミヤマアキノキリンソウ。低地のアキノキリンソウの高山種
 
 
テンニンソウ
 
今日は見事に晴れ渡り、車窓からは遠くの山並みまでがくっきりと見通せる。スカイラインの両側にはオミナエシやアキノキリンソウを始め、秋の花々が咲き誇っている。車を止めて貰って、しばらくは可憐な花の姿をカメラに収めた。
 

高鉢の駐車場でもう一度車を降りて、真っ青な空を背にした富士をふり仰ぐ。六合目から頂上に向けて点在する小屋の屋根が光っている。あんなに高い所にいたとは信じられぬほどの高さである。
 

スカイラインを下りて市街地に入っても、富士は何時までも見送ってくれていた。「富士登山口」交差点に近い温泉施設「花の湯」へ寄る。ところが着いたのが、一日23時間営業が終わり掃除タイムの始まる9時だったので、待つ間に浅間大社へ参拝する。下界は焼けるような暑さで、参道脇のハギの花が冷たい堀の水に体を冷やしているように思えた。

「花の湯」で山の汗を流し、帰りは新清水から新東名道を走る。先週、御殿場へ来ておられるMさんお勧めの静岡SAで名物の「桜エビ」を賞味して、三ヶ日からは往路と同じ経路でMさん宅へ帰った。
 Mさんには長時間の運転をお願いして、さぞ疲れられたことでしょう。四人揃って登頂できなかったのは残念でしたが、お二人には富士山の雰囲気をゆっくり味わって頂けたと思います。お嫌でなければ、また来年ご一緒しますのでリベンジしましょう。