生駒山(642m)
大阪平野と奈良盆地を区切って南北に走る生駒金剛山地の北半、生駒山地の主峰であり、古くから河内・大和の人々に朝夕、親しまれてきた。戦中の小学5年生の時から70年代初めまでこの山系の中腹に住んでいた私にとっては、実に思い出深い山である。子供の頃から何度となく登ったが、大阪側からは近鉄枚岡駅より神津嶽、暗峠コース、石切駅から辻子谷コース、額田駅から枚岡公園を経て登るコースなど。奈良側では、近鉄南生駒駅より車道を暗峠へ登り、スカイライン沿いに北へ山頂を目指す道。 元山上駅から千光寺、鳴川峠、暗峠経由のコース。生駒駅からは宝山寺への参道を行き、寺からケーブル横の急坂を登るなどいろんな登山道を歩いた。ドライブウェイに駐車して幼かった孫と登ったこともある。
三角点は遊園地のSL軌道内にあるが、登山者は断って無料で入場できる。
以下は2008年3月、何十年振りかで歩いた生駒越えの想い出である。
元山上駅から住宅街を抜けて延喜式の古社・生駒山口神社に参拝、鳥居の前の橋を渡ると次第に山道になる。鳴川の集落に入り清滝から「ゆるぎ地蔵」の前に出る。
高さ約2mの石仏は弘安四年の銘がある鎌倉期の秀作である。不動滝で行場道に入る。沢沿いにしばらく登り、竹林の中を千光寺へ向う。千光寺を元山上というのは、役行者が大峯山を開く前にここで修業したからだという。
行者の石像がずらりと並ぶ長い石段を登ってお参りする。沢沿いの道と合流して水源地を過ぎ石仏の立つT字路にでる。信貴生駒スカイラインの下を潜ると鳴川峠に着く。縦走路を北に20分ほど歩くと大原山で東屋とベンチがいくつかある。新しい三角点はドライブウェイ駐車場の方へ少し下った広場にある。縦走路に引き返し暗峠に寄り道する。
生駒山地を越えて河内と大和を結ぶ道は、北から中垣内越(古堤街道)、暗越(奈良街道)、十三峠越(十三街道)、亀ノ瀬越(北八尾街道)などがあり、さらに何本もの枝道があった。中でも暗峠<くらがりとうげ>(標高455m)を越える八里八町の奈良街道は、奈良時代以前から利用されてきた古道の一つで、江戸時代には重要な通商交通路となった。暗峠には20軒近くの茶店や旅籠があり、伊勢参りの人々で賑わったことが「河内名所図会」などに記されている。「なるかわ園地」に戻り、急坂を下って「神津嶽」入口にでて階段を上る。
ここは神武天皇が東征の時に、アメノコヤネノミコトと姫神を祀った「枚岡神社創祀の地」とされている。反対側に下るとコンクリートの覆屋のついた展望台があり、東大阪から大阪に続く市街地が見晴らせた。
ここから広い道を枚岡梅林に下った。
枚岡神社前の手水鉢の水は鹿が咥えた巻物から落ちていたし、狛犬ならぬ狛シカがうずくまっていた。神社の紋は下がり藤。ここは「元春日社」といわれ、春日大社より古い社という。元山上に元春日。こんなことからも、大阪と奈良は古代から縁が深かったことが知られる。約10キロ、楽しいハイキングだった。