ベシサール~バグルンパニ
10月3日。
夜半より時々激しい雨がテントを叩き、その度に目を覚ましました。
明け方雨が止み、安心して少し眠った5時、上のゴンパの拡声器から
単調な祈祷のメロディーが流れ、ニワトリやツグミに似た鳥が騒ぎ出
しました。
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8時前、出発。20分の急登で町を見下ろすゴンパ(僧院)まできました。
ゴンパの前で休憩。村々をつなぐ街道の所々にはこのような石で囲んだ
休憩場所が作ってあり、大きな菩提樹などの木が涼しい日陰を作ってい
ます。こんな場所をチョータラといいます。
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二度目はゴンパから一時間歩いたビンタビレの村で休みました。
この男の子はダワ君。左のカーボーイハットを被ったサーダー(シェルパ
のチーフ)マイケルさんの子供です。(他はこの村の人達)
マイケルの本名はテンジン・ドルジェ・シェルパ。エベレスト、ダウラギリ
などの登頂経験を持つ優秀な高所シェルパでしたが、足を痛め、家族の
将来も考えて、安全なトレッキングガイドに転向したようです。
非常に日本語が上手で、何かと細かい心配りをしてくれました。ちょうど
私たちの日程がダサインの学校休みと重なるので、9歳のダワ君も一緒に
きました。将来、お父さんのような立派なシェルパになるべく、テントの
中でも英語や日本語の勉強に余念がありません。
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このような村々をいくつか過ぎて行きます。石垣の横にはタキギの束、
家の前にはトウモロコシを干しています。昔の日本の農村を思いださせる
光景です。
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右手の谷間越しに白い峰が姿を現しました。P(ピーク)29です。
P29はK2(ケイツー)と同じく測量番号で、現地名はNgadichuli。
マイケルから聞くと「ナティチュリ」と聞こえました。
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日が昇るにつれ次第に暑くなりましたが、水場でゆっくり昼食をすませ、
午後になると雲が出て少し涼しくなりました。最後は急な石段の登り。
羊の群れと行き違いながら登ります。
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まだもう少し登りが続きます。最後の休憩でパラパラと来たので傘を
出して歩くと、間もなく車も通れるような広い道にでました。
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13時過ぎ、標高1,620mのバグルンパニテント場着。標高差800mの登り
でした。靴を脱ぐと、右足に血を吸って丸々太ったヒルが付いていました。
テントの中にも2匹。雨が降って出てきたらしいです。テント場は何段か
になった草の平地で、下の道はパグルンバニの村に続いています。
道の向こうは水溜まりのような大きな池で、ガンの群れ、水牛、ヤギなど
が次々に訪れます。その横にブランコ(ピンという)があり村の子が遊んで
います。
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私たちのテントは隊長の重廣恒夫氏(日本山岳会関西支部長)の隣でした。
左下はバグルンパニ村。左端に突き出したピンの竹竿が見えます。